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ギフティッド教育3 ギフティッド児の多様性

ギフティッド学級は、学校として独立しているわけではなく、一般の公立小中高校の中の一つのコースです。通常コースのみの学校が割合的には多いですが、複数のstream(コース)を抱える学校もあります。フルコース揃っている娘達の学校の一学年を例に挙げると、

【A組, B組・・・  】
通常コース。全教科を英語で学ぶ学級。
【E組  】           
Extended French (エクステンディッド・フレンチ)コース。理科と数学は英語、その他の教科をフランス語で学ぶ学級。
【IA組, IB組・・・   】
French Immersion(フレンチ・イマージョン)コース。
原則、全教科をフランス語で学ぶ学級。
【GA組, GB組  】     
Gifted (ギフティッド)コース。全教科英語、通常コースよりも深掘りする学級。

となっています。学習カリキュラムはどのコースに属していても同じ同一内容を異なる言語媒体で学習しています。ギフティッドコースに関してもカリキュラムは一緒。ギフティッドコースだからと言って、acceleration (先取り学習)は行われません。その他のコースでは練習問題をやって単元が終わるところを、応用問題を宿題にするなど、若干難易度を上げチャレンジさせるコースです。

さらに、以前は可能だった飛び級ですが、現在オンタリオ州においては原則禁止されています。
新学期は9月1週目ですが、学年の切りは1月1日。2010年生まれは全員4年生、2011年生まれは全員3年生と、同学年の児童は全員、同い年生まれです。1月1日生まれで情緒的にも早熟、アカデミックも圧倒的に強いとしても、その児童を上の学年に移す特例は現行認めません。非常にお役所的な教育委員会です。

息子さんが小4でギフティッド学級に振り分けられたママ友との会話。新しい環境での息子の様子見と思い、行事ボランティアに名乗りをあげて教室へ行ったとのこと。その時の衝撃を振り返り、
「コエドだったのよ!」
と私に表現したママ友。「えっ、小江戸?粋な感じのクラス?」一瞬意味が分かりませんでした。「もしかして、今Co-edって言った?」と訊き返すと、「そうなの、小学校ではまだクラスが分かれていなかったのよ!」と。
「Co-ed(コエド)」とは通常、男子校、女子校に対し、「男女共学」という意味で用いられる単語です。私の知る範囲では、カナダの公立学校はみんな共学。何を今更そんなことに驚いているんだろうと思いつつ、しばらく彼女の話を聞いて見ると。。。

個人の発達ペースに差があるように、ギフテッド児にも色々なタイプ、ケースが存在します。以下、 Wikipediaの部分抜粋になりますが、
「授業に興味がわかない。興味のある事以外はやりたがらない。本人にとり意味の見出せない暗唱や機械的な丸暗記を嫌がったり苦手であったりする。クラスや課題に集中できなかったり、白昼夢していたり、周りとうまく合わせることができない。一般的な学校の勉強に興味を示さず、成績は芳しくない。」
「ギフテッドの人間には異常なほどの熱情、並外れた集中力、一般人とは一風変わったふるまいが見られる。これは多動性障害、双極性障害、自閉症スペクトラムやその他の心理的障害の兆候によく似ていたり、場合によっては同じである可能性も否定できない。」

つまり、こうした学校生活に適さない特徴を併せ持つギフティッド児も少なからずいます。さらにここは、ギフティッド学級だからと言って進度が速い訳でも、個人の興味関心に則ったプロジェクトに没頭させてくれる訳でもない、カリキュラム準拠の公立学校という環境下。その結果、ママ友が目撃した教室は完全に荒れ模様、授業どころではなかったそうです。

かたや、彼女の息子さんは、教育熱心なインド人のご両親に祖国標準で育てられた、大人しい優等生タイプのギフティッド児。つまり彼女は性別の話ではなく、「小学校におけるギフティッド学級では、様々なタイプのギフティッド児が同じ教室に混在している、コエドしている。」ということを意味していたのでした。

私達の地域では少なくともこのコエド状態は小学校までの様子、中学以降は授業を静かに座って聞いていられるタイプのギフティッド児と、学校生活において問題行動が顕著なギフティッド児で、クラスが分けられています。
「GA組はほとんどインドか中国系の男子で、じっとできる人達。GB組の子達は授業中座っていられなくて、他の教室に突然乱入してきたり、テスト中に大声で歌を歌い出したりするよ。」と、在校生ならば周知の事実とばかりに娘達が言っていたことを思い出しました。

こうしたギフティッド児の多様性については、学校側からもかなり直接的に伝えられます。「ギフティッド学級にいる生徒達に唯一共通しているのは、WISC-Vにより高知能が認められたという点のみ。その中には自閉症や学習障害などによりspecial needs(特別なサポート)が必要な児童もいるし、学校での生活態度に著しく問題のある児童も多くいます。通常学級とはかなり異なる環境ですので、その点を承知の上でギフティッドへ編入するか判断して下さい。」と。

先述のインド人ママ友、お子さんは3人ともギフティッド認定を受け、全員違う小中学校へ振り分けられています。長男の小学校生活には驚いたそうですが、長女や次女の通う小学校の、彼女達の学年においては、比較的落ち着いた生徒が多いとのこと。「ギフティッド学級」と一口に言っても、学校や学年によって教室の雰囲気に違いがあるため、自分の目でちゃんと確認してから編入するようにと促される所以です。

最後に、この編入先ですが、児童の現住所と受け入れ候補校側の空き状況に応じ、教育委員会が決定します。編入予定校を見学してみて「ここのギフティッド学級はちょっと我が子には違うな」と感じても、他校のギフティッド学級は提案してもらえません。つまり、提示された編入案を受けるか断るかの二択です。仮に指定先が学級崩壊風に見えたとしても、そこに何か別の価値を見出して果敢に乗り込んでいくか、通常学級に残留してアカデミックに浮きこぼれ続けるか、究極の選択が迫られることになるのです。
→ ギフティッド教育4 その受け止められ方

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