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見逃すべきではない傑作『怪物』

『怪物』監督 是枝裕和/脚本 坂元裕二

本当に素晴らしい映画でした。重いテーマを扱っているので最初の一章は帰りたくて仕方がないんですが、二章、三章と進むに連れてそんな自分を恥じるような優れた映画でした。

三部構成で視点が変わることについて「技巧が鼻につく」といった感想や、いじめやハラスメント、LGBTについて「物語のために利用している」といった批判をたまに目にしますがぼくは全くそう思いませんでした。

この映画は基本的に観客巻き込み型だと思います。「安全な場所でエンタメを楽しむ存在」という立場は観客に保証されていない。むしろ、怪物とは誰なんだろうと興味本位に思っていたぼくに対して、「あ…」と何度も思わせるような映画で。観終わった後に映画のタイトルとコピーの意味が実体をもって感じられるようになる。映画を観る前はなかった “何か” があなたの中に結像する。この映画はそのために機能する。

居心地が悪いのも不快な気持ちも憤りも構成も脚本も演技も役者も映画のためですらない。いじめやハラスメントやLGBTも物語のためですらない。それらは全てあなたの胸の中で像を結ぶために機能する。そういう映画だと思っています。しばらくしたら上映が終わってしまうかもしれないので未観の方はぜひ。傑作だと思います。

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