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私とあなたの敵はきっと長時間労働

「早く帰れていいね。俺も今すぐ帰りたいわ。」
隣に座って仕事をしている男性からそう声をかけられたのは、育児休業から復帰して3ヵ月ほど経った頃だった。

「うわー、本当にこんなセリフを言う人がいるんだな。」
その時はそんな風に思った。

時短勤務を使って復職した私は、定時が17時45分のところ16時15分までに勤務時間を変更していた働いていた。
通勤時間は往復2時間。
16時半までに業務を終えて、16時48分の電車に乗り、家に着くのは17時半。
そこから20分で夕食の支度をして18時に間に合うように息子を迎えに行っていた。(保育園まで走って7分!!)
帰宅してご飯を食べさせてお風呂に入って寝かしつける。
この頃夫はシフト出勤で23時過ぎの帰宅。
保育園の送りや洗濯・皿洗いなどは相変わらず夫の担当だったけれど、時短で帰っても21時半頃までは慌ただしくていっぱいいっぱいだった。

私は正社員として育休明けにその部署に復職した第一号で、時短勤務を使うのも初めてだった。
だいたい出産して育休を取得した女性は、現場の営業部署か出向元のバックオフィス系の業務に配属される。
平成29年に育休取得後の復職先は原則育休前と同じポジションという指針を厚生労働省が決めたことと、当時の女性マネージャーが出向元に掛け合ってくれたおかげで私は元のポジションに戻ってくることができた。
業務内容も好きだったし、人間関係も良い部署だったし、何より初めての育児時短復職だったので、働くだけでチャレンジという状況が自分でも気に入っていて、不安はあったものの前向きに復職した。

その男性は私が産休に入るタイミングで入れ替わりで着任したので、復職後初めて一緒に仕事をする相手だ。
ちょっとシニカルなモノの言い方をするキャラだけど、仕事ができる人だったので部署内で頼られていることが雰囲気から察知できた。

その人はきっとそこまで深く考えて発言していなかったと思う。
ただただ早く帰れることが羨ましかったのだろう。
思った以上に息子の発熱で休まなければならないこと、時短勤務なのに全然時間に余裕がない生活なこと、復職前とは違う業務内容でうまく結果が出せなかったこと、全部全部自分が選んだことだけど思ったより大変で思ったよりうまくいっていなかった。

「早く帰れていいね。」
そういう精神状態の私にその人の言葉は返しのついた針のように刺さってしまってなかなか抜けない。

「そうだよね。みんな21時くらいまで働いているけど、本当は早く帰りたいよね。」
そもそも時短勤務とか関係なく早く帰りたい人は早く帰りたいと思っている。産休前は21時とか22時まで働いていたけど、そんなに遅くまで働きたい人ってどのくらいいるんだろうな。
育児という免罪符がないと定時で帰れない。
自分で働く時間を決めることができないと、自分で働く時間を決めて短縮できる権利のある人が羨ましくなるんだろうか。
結局その人も私も長時間労働とか残業があるから羨ましく思ったり、後ろめたく思ったりするのかもしれない。
でもそこで出てくる言葉って「早く帰れていいね。」なのかな?
それって時短勤務の私に対して言うことなんだろうか?

その人にも残業をせずに定時で帰る権利があるのだけど、残業することが当たり前で自分で働く時間を決めることができない状況だと思っているから出た言葉なのかもしれない。

私も妊娠・出産する前は「育休で仕事休めていいな。」「時短で早く帰れていいな。」と思う側の人間だった。
だからその人の考えていることがわかる。
そして、実際に妊娠・出産を経験して子育てをしながら働くのが大変なことも経験して、その経験のある人とない人の間に深い溝があるのも理解できてしまった。

私だけが特別に与えられてしまった時短勤務という権利。
でも本当はその人にも定時で帰る権利がある。
残業しない権利があるはずなのだ。

深い溝はあるのだけど、「早く帰れていいね。」と口にしてしまうあなたと私の共通の敵はたぶん長時間労働なはず。

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