第3話 ハラハラショッピング
彼と約束をした次の日。
10時にバス停で待ち合わせだったので、日本人らしく10分前にはバス停に着いた。
彼はまだ来ていない。まあ、時間前だしね。そういいながらじっと待っていた。
時間は10時ちょうどになった。まだ来ない。
時間は10時10分になった。まだ…来ない。
そして時間は10時20分………
あれ、もしかしてこれって…からかわれた?
急に自分たちが、旅行先で浮かれてだまされてる軽い女に思えた。
なにやってんだ、私たち。あほらし。もう行こ行こ!
ちょっと間のアバンチュールはこれで終わりかと思って、次のバスでショッピングに向かおうと思ってたその時!
はるか向こうから急ぐわけでもなく、なんなら音楽を聴きながらノリノリで歩いてきている人物が見えた。
「まさか、あの人…彼ではないよね…」
「まさか!彼だったらもっと急ぐでしょう」
そんな会話をしていると、徐々に姿がはっきり見えてきた。
あ…間違いない…彼だ…。
彼は、その時点で25分遅れているのにも関わらず、急ぐそぶりは全く見せずに現れた。
しかも、遅れたことを詫びるわけでもなく「ハァーイ」とさわやかな挨拶をかました。
なんだこの人!すっげぇ南国タイム!
私たちがさんざん遅れたことを文句言って、やっと笑いながらごめんごめんと謝った。
これが噂に聞いていた南国タイムか…初体験だ。
気をとりなおして、バスに乗ってショッピングに向かう。
行先は街で一番大きいショッピングモールだ。
まずはご飯を食べよう!と連れて行ってもらった先は、まさかのケンタッキーフライドチキン・通称KFCだ。
え、ケンタッキーなら日本でも食べられるけど…と思いながらも誘導されて注文。
出てきたケンタッキーをほおばる。
!!
なにこれウマ!!
日本のケンタッキーとは違い、衣サクサク、中身ジューシーの激うまだった。
後から知ったのだが、マレーシアではケンタッキーはマクドナルド以上の人気なのだ。石を蹴ったらケンタッキーに当たると言っても言い過ぎでないくらい至るところにケンタッキーがある。
ちなみにチキンの種類はスパイシーとオリジナルがあるが、断然スパイシーをおすすめする。オリジナルは日本のケンタッキーに似ていて、すこしべチャッとした印象だ。スパイシーは前述のとおり衣サクサク、中身ジューシー。私はこれにチキンのだしで炊いたご飯、コールスローサラダ、マッシュポテトをつけて、飲み物はミロを頼む。私流ケンタッキーフルコースだ。
…話がそれてしまった。
ケンタッキーを食べながら会話をした。…いやしようとした。会話がなかなか弾まないのだ。そう、彼は英語があまり得意ではない。ついでにシャイな性格も相まって、ほぼ喋らない。
グループで唯一英語得意の夏子が頑張ってくれたが、彼がそんな感じだから盛り上がりに欠ける。
こんな感じでどうするんだ?と思っていたら、彼がおもむろに携帯を取り出し、真剣な顔で誰かと話し出した。言語は聞いたこともない言語・ミャンマー語だ。
ここで私たちはまたふと我に返った。もしかして…私たちどこかへ連れてかれて、監禁とかされるんじゃ…マレーシアは東南アジアで比較的治安がいいにしても、油断しすぎたかも…
そんな感じでみんなでどうしようっと目で相談してると、彼の電話が終わった。
「友達来るから待ってて。友達も一緒にショッピングしよう。」
そう言う彼にまた疑惑が沸く。その友達って…ちゃんとした人でしょうね?人身売買的なブローカーじゃないよね…
なんだか楽しい雰囲気が一気に不安へ変わってしまった。どうしよう。このままサヨナラして逃げる?今ならこの人一人だから、私たちでも倒せそう…そんなことを日本語で相談した。もちろん彼はわかっていない。
そして、あと一歩でサヨナラと言いそうになったとき、彼の友達が到着してしまった。クソ、早えな!!
その友達を見たら、あれ、どっかで見た顔。
…そうだ、彼と同じ店で働いている人だ。チャラい感じだが、こちらもイケメンなので覚えていた。
なんてことはない、事情を聞くと、英語に自信がない彼が、英語ペラペラの友達を呼んだだけだったのだ。
早く言ってくれればいいものを…余計な心配をした。やっと念願のショッピングがスタートだ。
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