第1話 初めましてマレーシア
「スラマッダタンクマレーシア…」
初めて聞く言葉が飛行機のアナウンスで流れる。
ふと窓から外を眺めると、飛行機が下降しており、たくさんのヤシの木が目に飛び込んできた。
飛行機は無事にマレーシアに着陸。飛行機から降りると、ムッとした熱気と独特の匂いが飛び込んでくる。
初めての南国を実感した瞬間だ。
「マレーシア、どんなところなんだろうね」
横にいた友達が尋ねてくる。
「すごく暑いね。女の人みんな被り物してるねぇ」
そんなよくわからない答えを言う。
マレーシア、ただの旅行できたつもりだった。
まさかこの旅行が、私の人生を変えるとは…
「卒業旅行どうしようか。南国のビーチでゆっくりっていいかもね。」
そんな友達の一言で卒業旅行は南国に決まった。
正直、私は海外旅行に慣れてないし、全部友達に任せていた。
行先がマレーシアに決まったときも、特に何も思わずOKした。
卒業旅行に行く4人ともマレーシアが初めてだったから、みんなで色々想像しながら旅行の日を心待ちにしていた。
「こんにちは。私はグンです」
空港には体格のいい、ちょっと怖そうなガイドさんがいて、私たちを迎えてくれた。
これからホテルへ案内してもらい、観光する。
空港からホテルへは40分くらい。正直、ジャングルみたいなところを想像していたからその都会ぶりにびっくりしていた。道はガタガタだけれども。
ホテルに到着する寸前、大きなレストランが目に入った。
その時は何も思わなかったけど、このレストランが、後に運命の場所となる。
ガイドさんが観光案内をしてくれ、マレーシア人の親切にも触れ、海でのんびりもでき、私たちはすっかりマレーシアを好きになっていた。
色々なところで日本との違いを感じることができた。例えばバス。バスにはまず時刻表がない。5分待ってすぐ来ることもあれば、40分待ってもこないこともあった。来たと思ったらムスッとした運転手が行き先を聞いてきて、ここにお金を入れろと料金箱をトントンする。小銭をもってなかったから、両替したいと伝えるも、無理!の一言。しょうがなく多めに支払う。こんな感じでも成り立つのがすごいな。
他にも、ショッピングに行っても誰も接客しない。それどころか、いい匂いがしたと思ったらなんとレジでお昼ごはんを食べているではないか。お会計の時も無言でムスッとおつりをたたきつけてくる。え、これで成り立ってるのか。ありなのか。
こんなにムスッムスッて言いまくったら、まるでマレーシアの人が笑わないみたいになってしまった。マレーシアの人が笑わないわけではないよ。とある店でおつりをもらうとき、「ジャパニーズ?」って聞かれたから「イエス」って答えたら、「コンニチハ~」って言ってニコって笑ってくれたんだけど、その笑顔が可愛くてキュンってした。
日本人が面白くないのに無駄に笑いすぎなんだと思う。
さて、そんな感じで過ごしていたとある日の夕方、夜ご飯を食べに近くのレストランに行くことにした。
マレーシアのご飯は日本人に合っていると思う。どれを食べてもおいしい。そしてすごく安いのだ。水でお腹を壊すんじゃないかという心配はあったが、それを忘れるくらい美味しかったので、私たちはたくさん注文して料理を堪能した。
そしてふとカウンターの方を見ると、仕事している男の人が目に入った。
最初見たとき、びっくりした。男前すぎて。
シュッとした体型に、日本人を少し濃くした顔。てきぱきと同僚に支持を出し、無駄なく動く働き者。
動きが気になって、目が離せなくなった。
この人こそが、私の今の夫なのだ。私たちの物語はここから始まった。
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