カミール①マレーシアに来て初めての友達

このマガジンを作ったのはこいつのことを書きたかったからといっても過言ではない。それぐらいこいつはインパクトが凄かったのだ。私はミャンマー人と結婚していて、ある程度異文化には慣れているつもりだった。しかしこいつとの出会いで、所詮私の思っていた異文化なんて、同じアジア同士の似たような文化だったということに気づかされた。


奴との出会いは語学学校。ミャンマー人の彼と婚約し、マレーシアに移り住んだのはいいが、毎日あまりにも暇すぎた。そして友達作りと、英語のブラッシュアップのために英語の語学学校に通い出したのだ。


説明会の段階から、少しあれ?と思うことがあった。どうも、生徒の国籍が片寄っているような気がするのだ。具体的にいえば、リビア人が生徒の多数を占めていたのだ。


リビア?どこそれ?と思う人が大多数だと思う。私もそうだった。説明会が終わって急いでリビアの場所を検索したぐらいだ。


リビアはアフリカ大陸にあり、エジプトやチュニジアと隣接している国だ。首都がトリポリという場所とか、カダフィ政権とか、もしかしたらそんな単語をどこかで聞いたことがある人もいるかもしれない。いわゆるアラブの国、中東の国だ。

リビアはかなりイスラム教の色が強い国だ。マレーシアもイスラム教国家だが、リビアに比べたらまだマイルドなほうだと思う。私はイスラム教のことを少しは知っているつもりだったが、リビア人たちと出会ってさらにイスラムの世界をよく知ることができた。


面白いことに、一言にリビア人と言っても、バリバリ中東系の顔の人、ヨーロッパ系の顔の人、アフリカ系の顔の人と色々な人種がいることがわかった。そして美形が多いのだ。体型も長身でモデル体型の人が多い。脚もすらりとマッチ棒のように細い。そのマッチ棒に囲まれて、単一民族、のっぺり顔の日本人の私は大根足をさらけ出して授業を受けていた。

…話を戻そう。

そんな語学学校初日、初めて私に声をかけてくれたのがカミール、奴だったのだ。

クラス分けのテストで、私は上から2番目のクラスに属することになった。友達ができるかどうか期待と不安に胸膨らませて扉を開けた私はびっくりした。…誰もいなかったのだ。

あれ?授業時間間違えた?と戸惑ってしまった。だって9時授業開始で、今は8時55分である。なのに教室も真っ暗で、先生すらいないのだ。

受付に行って聞いてみる。すると部屋は間違っていないという。どうやら、まだ誰も来ていなかったようだ。先生すらも…


仕方ないので電気をつけて部屋の端っこの椅子に座る。第一のカルチャーショック、みんな時間が南国タイムだったのだ。


9時10分ごろ、やっと一人現れた。それがカミールだったのだ。カミールはザ・中東の顔をした少年だった。身長は180以上ある高身長で、リビア人典型のすらりとしたモデル体型だった。彼は私の対角線上に座った。

「は、ハァーイ。」

私はとりあえず彼に挨拶した。私は日本人らしく、誰にでも礼儀正しい。

「ハァイ」

はにかみながら彼が答えてくれた。よしよし、出だしは順調だ。


そんなことをしていると、ぽつぽつと人が集まってきた。そして、9時20分ごろになってやっとほとんどがそろったのだ。


クラスは私とタイ人の女の子以外、全員リビア人男性だった。教室ではアラビア語が飛び交じり、まるでリビアの学校に留学してきたようだ。しかし皆美形でモデル体型だったため、目の保養にはなった。(今思えばこれはたまたまで、もちろん美形でないしモデル体型でない人もたくさんいる。)


私は戸惑いながらも、異文化に飛び込んでいる実感があって楽しく過ごすことができた。


そして休み時間。


話相手として、選択肢はタイ人の女の子しかなかった。だって他の人みんなリビア人だし男性だし。アラビア語喋ってるし…


タイ人の女の子と会話するが、非常に申し訳ないのだが、クセが強めの英語なので理解するのに苦労した。そのためか、あまり会話が弾まないのだ。どうしようと思っていると、カミールが近づいてきた。

「ここの答えはbでいいのかな?」

そんな感じで、英語の質問してきた。

私は喋るのは苦手だがペーパーテストはよくできるという典型的日本人なので、前の授業でちょっと目立ったのだ。なのでカミールは質問してきたのだと思う。

「うん、私もそうだと思う。」

と、答えたら、カミールは満面の笑みでありがとうと言ってきた。そのものすごいぱっちりした目がフワッと笑うとなかなか可愛い。そのときはそう思った。

しかしそのやりとりが、強烈な異文化交流の始まりだったのだ。





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