第7話 爆笑撮影大会
若さゆえの、服のまま海へダイブするという荒行をやってのけた次の日、私たちは彼らの仕事前に会うことになった。
言われるままバスに乗り込み、向かった先は…
寺!
(一応)ダブルデートで寺って!渋っ!
しかし中に入ってみると、日本のような全部木でできた真っ茶色の寺とは違い、ベースが金ぴかで、日本ではあり得ないカラフルな色使いの寺だった。なかなか目が楽しい。しかし寺…
とりあえずお参りをすることに。
本堂らしきところへ行き、お祈りをする。しかし私と夏子は無宗教だから、手を合わせて終わりだ。横を見ると、ペペとショーンが真剣にお祈りをしていた。人が真剣にお祈りをしている姿を見るのはこれが初めてだ。ミャンマーでは大多数の人が仏教徒であり、すごく身近に仏教がある生活をしている。
彼らが真剣に祈っている姿は、美しかった。男に美しいもなんだが、かっこいいというより美しいが似合っているのだ。どんなにチャラついた格好をしていても、根本には仏教を真剣に信じていることがよくわかる。
こんな姿の若者を日本で見ないもんだから、私も夏子もついキュンっとなってしまった。全く、単純である。
そんな真剣なお祈りが終わったあと、寺の周りを散策した。
その寺にはいろんな像や置物があって、私たちを楽しませてくれた。一応観光ということで写真をとったりしていると、目を疑う光景が飛び込んできた。
彼らが、お互いに写真を撮り合っていたのだ。もちろんそんなことでは驚かないが、驚いたのは、モデルさながらにポーズを決め、草などを身体に巻き付け、笑うわけでもなくトップモデルもびっくりの真剣な顔で写真を撮り合っていたからだ。
え、この人たち大丈夫?超ナルシストなの?
後で知ったことだが、東南アジアの人たちは自撮りが大好きらしい。それもイェーイ、楽しいって感じの写真ではなく、澄ました顔や、モデルのようなポーズを恥ずかしがることなくやってのける。そして大体携帯の待ち受けは自撮りした自分だ。ちなみに、ペペもキメキメで撮影した写真をすぐに待ち受けにしていた。
彼らの撮影会をしていた横で、私たちはまたしても大笑いしていた。日本男児がやっていたら一発アウトで変人認定だ。でも彼らがやっているとなぜだか妙に様になるのだ。
そんなこんなで自分たちの撮影会を終えた彼らは、標的を私たちに変えた。今度は私たちの写真を撮りだしたのだ。
普通に写真を撮られる分には問題ない。むしろありがたい。けれども彼らは自分がするように私たちにもポーズを要求してくるのだ。
「ここに立って、これを持って!」
「後ろを向いて、振り向いて!」
「なんでいつも笑ってピースするの?クールに決めて!」
「目線を外して!」
と要求はなかなか厳しい。しかしよくしたもので、何十枚も撮っているうちに自分がまるでモデルかのような気分になってくる。その証拠に、最後のほうではまるで別人のようにキメキメの格好で写真を撮っていたのだ。後で見返して、大爆笑してしまった。
そして、一応ダブルデートであるので、暫定カップル同士写真を撮ることになった。もちろん普通の日本人カップルか撮るような写真ではなく、雑誌の撮影ですか?というような写真を撮らされるのだ。
「君は僕を見て!僕は空を見るから!」
ペペがそう指導してきた。まさかの、私が空を見ているペペをうっとり見つめているという構図の写真が欲しかったようだ。
これには私もさすがに大爆笑してしまい、止まらなかった。そのため、何枚撮っても私の顔は大爆笑している。そしてペペはアンニュイな表情で空を見上げていた。今でもこの写真を見ると笑いがこみあげてくる。
そんなこんなで、寺デートは無事に終了した。
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