カミール③じわじわと囲まれていく


晴れてマレーシアでの友達第1号、カミールをゲットした私は、その日から久々のスクールライフを満喫することとなった。

学校が終わるとほぼ毎日スタバに直行し、宿題などをする。そしてたまにご飯を食べに行ったり、映画に行ったり、プールで遊んだりする。遠くの街までバスを乗り継いで遠征したこともあった。

家ではミャンマー語オンリーの生活が続いていたので、英語を話せるのは楽しかった。お互い英語学習者である。英語が間違ってようが変なこと言ってようが間違いを指摘するほど理解していない(笑)なので気軽に英語が話せ、良い練習になった。

ちなみに全部二人きりというわけではない。宿題は2人ですることが多かったが、他は大体同じリビア人クラスメイト、アフメッドがいたし、何人か他のクラスメイトと一緒に行動することもあった。あれ、友達いないはずでは…と少し疑問に思ったが、ああ、リビア人以外で友達いなかったってことか?とそのときは納得した。

無宗教の私にとって、初めて接するイスラム教の文化も非常に興味深かった。彼らは金曜日、授業が終わると急いでモスクに向かう。金曜の午後はお祈りの時間だそうだ。どんなチャラチャラしてそうなクラスメイトでも、金曜の午後はきちんとモスクに向かいお祈りしていた。

他にもレストランは絶対に「ハラルマーク」があるところしか行けない。ハラルマークとは、イスラム教の人が食べていいよーというマークだ。幸い私の大好きなケンタッキーはハラルマークがあるため、一緒に行くことができた。ちなみにリビア人御用達のシリア料理のラムは、「おいしーい!!」と叫ぶくらい美味しかった。

はたから見ていればリビア人をはべらしている謎のアジア人女性だっただろう。私だって女友達が欲しかった。しかし初日にいたタイ人の女の子は、短期だったためすぐにタイに帰ってしまったし、下のクラスにリビア人女性や中国人女性もいたので話かけたりしたけど、リビア人女性は一人で出かけられないらしいし、中国人女性たちはコミュニケーションできるほど英語が出来なかった…。

ま、男だらけの中に混じって遊ぶなんてイケパラのようなシチュエーションはなかなか体験できないことだったので、それはそれで楽しむことにしたのだ。


そんな楽しい生活が1か月ほど続いたとき、ふと気づいたことがある。カミール以外のリビア人クラスメイトが、私と1対1で話すのを避けているような気がするのだ。さすがに授業中のディスカッションは話してくれるが、休憩中に世間話をしようとしても少し話したらフィッとどこかへ行ってしまうのだ。

あれ、私なんか嫌われてる…?みんなに一斉に嫌われることってなんかしたっけ…?自分の行動を思い返してみたが、原因は見つけられない。それにカミールだけは普通に接してくれている。

少しもやもやしていたが、それでもみんな遊んでくれていたし、そこまで気にすることはないのかな思うようにしていた。


もう一つ気づいたことがある。カミールがやたらプールに行きたがるのだ。当時私は27だったから、調子に乗ってビキニを着ていた。初めてのプールのとき、一応カミールにイスラム教の人の前でビキニは大丈夫かお伺い立てたが、大丈夫だということだったのでそのままビキニで遊んだ。

そのあと、事あるごとにプール、プールなのだ。

プールに行くと言っても、カミールはじめリビア人たちはあまり泳げない。水泳の授業なんてものはなかったらしいのだ。私は普通に泳げるからいいが、彼らは少し泳いだ(浮いた?)あとすぐにプールから上がってしまう。

なのにプールに行きたがるのは…なんとなく、私の水着姿を見たいのでないかと思ってしまう。

他にも、プールの中でふざけてボディタッチをしてきたし、服に着替えるときに普通に部屋に一緒に入ってきたりしたのだ。

さすがに着替えるから出てってくれない?と言ったが、他のリビア人から守るため?ここにいないといけないという。わからないが出て行ってくれなさそうだったので、部屋についているシャワールームに入って着替えた。


それ以来プールに誘われても、断ることにした。何回か断ったら、誘われなくなった…。

カミールに少し違和感を感じながらも、この楽しい生活を壊したくないという思いもあり、あまり気にしないようにしていた。

しかしそんなとき、事件は起こったのだ。

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