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アメリカにパワハラがない、少ないというのは大嘘で実は暴言とパワハラ大国!?



はじめに
よくアメリカは労働の流動性が高い、訴訟されるから、パワハラすると辞めてしまうため、パワハラがない、または問題になる事が少ないという間違った前提が日本では飛び散っていますが、これは大間違いでアメリカで日本のパワーハラスメント(Power Harassment)という定義自体が連邦法レベルで定義されていないだけで実はアメリカでパワハラ自体は一般的です。人に対して怒鳴ったり物を投げつける等、日本でパワハラ認定されそうな言動や行動は実は違法認定しないのです。近年、職場においてのいじめ、パワハラは増加の傾向を辿っており、多くのアメリカ人が苦しんでいることがわかります。

何が実際アウトでセーフなのか
勿論年齢、性別、人種、宗教等に抵触する発言は一発アウトですが、それ以外の発言や行動、つまり上記に抵触されていないのなら実際グレーゾーンで許される範囲であり、アメリカの労働法上でも「宗教、人種、肌の色、性別関連、国籍、年齢、その他総合的情報を用いたabusiveな行為が抵触する場合」(https://www.eeoc.gov/harassment) と記載されているだけで、実は暴言や、明らかに職場の責任の越権や逸脱した行動に対しては明確な罰則がないのが現実なんですね。

パワハラする前にクビにするからパワハラが少ないって論理、普通に考えると聞いてておかしくないですか?それは雇用者の都合ですよね。別にクビとパワハラなんて両立できるわけで、職場で徹底的にいじめて最後は退職に追い込むみたいな残酷なお話はアメリカでは特段珍しいお話ではありません。

一例
例として、上記人種や性別等に揶揄するといった発言はもちろん許されませんが、「仕事ができないのなら飛び降りろ」、怒鳴るといった、俗に言う相手を詰める発言や、わざと無理難題を押し付けて辞めさせる、上司と部下の立場を利用し、職権濫用といった行為等に対し罰則は実は明確化されていません。

解決としてはHRと相談して上司と当事者の間で解決する、といったものですが実際はそう簡単に解決するものではなく、大抵は泣き寝入りするか会社相手に訴訟を起こすか、やめるか、といった形が一般的です。

下記のNY Times記事ではアマゾンの社員、元社員達が労働基準監督署に訴えたけど法律には違反していないので訴訟は出来なかったというお話もあり、実はセクハラや宗教、肌の色に言及しない暴言や行動は許されているのが現実なのです。

補足
補足として州法上ではWorkplace Bullying(職場いじめ)という言葉が定義付けてる州もあり、ワシントン州の労働管理局では、以下のように記載されています。

米国では、人種/肌の色、宗教、国籍、性別、年齢 (40 歳以上)、婚姻状況、障害、性的指向/性自認、退役軍人/軍人としての地位、またはその他の保護対象クラスに基づく嫌がらせでない限り、いじめは一般的に違法ではありません。

しかし、職場においてのいじめが定義付けられていても違法でないと解釈する州やそうでない州で別れており、ワシントン州の場合、まさに上記で自分が述べていた部分で、保護対象となるクラス(属性)を言及しないかぎりにおいては、実はいじめ自体は違法ではないという見解を示しています。

リンク先: https://lni.wa.gov/safety-health/safety-research/ongoing-projects/workplace-bullying#:~:text=Is%20workplace%20bullying%20against%20the,or%20any%20other%20protected%20class.

具体的な職場いじめが以下のようにリストされていますが抜粋してみました。

職場いじめの例
- 不当または無効な批判、不当な非難
- 職場で他の人とは異なる扱いを受ける
怒鳴られたり、屈辱を受けたりする
- 排除または組織内孤立化
- 過度な監視、マイクロマネジメント、または非現実的な期限設定等…

どれも日本だったらパワハラ認定されそうなものばかりですが、じつはアメリカではこれらはパワハラではないのです。

Brandon K Hill氏が以下のツイートをして訴訟が怖いのでパワハラがないと断言していますが、実際訴訟を起こせる要件をよく読んでみると、

カリフォルニア州では、次の2つの要素のいずれかが存在する場合にのみ、敵対的な職場環境訴訟として持ち込む事が可能。

- 雇用主が示した敵意は差別を伴うもの
- 雇用主の敵対的行動を元に、雇用主との間の契約違反が成立したと認められた場合

難しい事書いてますが要するに、差別的な事を言われたら速攻アウトだよ、って事で、つまり逆に別に差別的な事じゃなかったらいくらでも言っていいことになります。このBrandon K Hill氏、あんまりアメリカにおけるパワハラについて理解していないですね。


逆にパワハラ訴訟で被告側が負けた案件でいうと、パワハラそのものが論争ではなく、そのパワハラを行う過程において差別的発言や行動に伴ったかが、主な論争になるわけです。例として小笠原先生が出したケースですと、ここの差別的発言と認められる部分がまさに懲罰的賠償の判例に繋がったわけで、ただ怒鳴ったり、詰めるだけだったら実は懲罰的賠償には至らないし、そもそも起訴するのも難しいでしょう。


対処法
そしたら職場いじめに遭遇してしまったら、従業員が取るべき行動というのは以下です。

- 事件(日付、時間、場所、何をされたか、何を言ったか、誰がいたか)の詳細な日記をつける
- タイムシート、監査報告書など、告発と矛盾する文書を保管
- 加害者が被害者の告発を否定する可能性を鑑みて証人を得る
- 可能であれば、その行動を適切に報告
- 職場、職場外、自宅で信頼できる人々からサポートを見つける

正直上記どれをやっても訴訟まで持っていくのは実際難しく、職場において加害者を告訴するのは容易ではありません。

まとめ
労働規制が緩いからパワハラが起きにくいというのは非常に危なく安直な考えで、少なくとも労働者の権利が一般的に他先進国と比較し弱いとされるアメリカにおいてはパワハラがない、あるいは少ないというのは違いますね。結論として、言葉や行動を選べばパワハラのやり方なんて如何様にある、実情はそんなものです。

というか映画やドラマとかで普通に怒鳴るの見かけませんか?普段はフィクションのアメリカを信じる割に、こういう都合の悪いお話の時は、フィクションと分けようとする輩がいますが、結局フィクションは現実を元に作られていますので、フィクションのネタになるくらいはアメリカでのパワハラは極一般的なお話なのです。

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追記:
個人的にアメリカの現地で実際に社会人をやった身としては、労働の流動性が高いからパワハラは起きにくいという結論には、非常に疑問しか湧かなくて、辞めた部下が将来的に上司として戻ってくる可能性があるから、パワハラがないという結論はおかしいですし、パワハラすると従業員が辞めてしまうからパワハラが起きにくい環境だってのもあまり理解できませんし、最後の管理能力が疑問視されるからパワハラ上司がクビになるってのもいまいち理解できません。

労働の流動性が高いのは別に免罪符ではありませんし、業界によって流動性は異なる以上、例えば伝統的な製造業や金融機関、公務員等、歴史が長い組織ほどアメリカでも労働力の流動性は低くなりますし、じゃあテックのような最先端業界でパワハラがない、あるいは少ないかというと、皆さんが大好きなスティーブ・ジョブズやイーロン•マスクがまさに好例ですよね。結局人間と組織という世界で生きている以上、パワハラはどこでも一般的なものなのです。

*注記: 自分の法的解釈はあくまで上記アメリカの労働管理局に記載されているものを元に解釈したものですので、アメリカでの労働法関連の訴訟に関してのお問い合わせは弁護士方にご相談ください。

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