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女に振られて音楽が嫌いになった話

 僕は音楽が嫌いです。

イヤホンもまだ有線だし、電車内や飛行機でも外を見てボーっとしたり、本を読みます。当然音楽のサブスクには入っておらず、携帯にも音楽を保存しません。家の中でもほぼ無音で過ごしています。僕は音楽が文化としてあまり染み付いていません。

 厳密に言えば、バンドとかそういうのが嫌いです。というのも、歌手から「かっこいいでしょ?」とか「こんな感じならモテる!」とか、その人の性欲が見えて気持ち悪いからです。

 僕は歌のことを「上手い人が暴力的な声量で凡人を圧殺するモノ」と思っていて、そこに評価を置いています。だから尾崎紀世彦とかが好きです。

だから最近の歌手とかはあまり聞きません。声量で圧倒してくれる人が少ないから。プロの歌手たる自覚があるなら、容姿はそこそこに技術で勝負して欲しいです。だから僕はザ・50回転ズとかが好きです。

 さて、僕は当時好きだった女性がいたのですが、彼女は学生時代から音楽とかバンドとかそういうのにあこがれてるタイプでした。当時僕は彼女と話を合わせたい一心で、興味の無い音楽に手をつけ、それはそれはパンピーのように曲を調べて聴いていました。興味も無いのに延々と。邦ロックと言われるものからポップやフォークや、とにかく共通の話題ができるようにがむしゃらに聴きました。とても苦痛な日々でした。

でもその生活も終わります。振られました。真ん中に入る曲がらないスライダーみたいに綺麗に振られてホームランでした。

あれだけ興味の無い音楽を聴き続けた苦労が、水泡に帰しました。それ以来僕は音楽が大嫌いになりました。

 さらに追い討ちをかけたのは彼女が大学で軽音サークルに入ったことです。上で示したように、僕はバンドというのに「性欲まみれのヤリチン集団」というイメージがあります。そこに彼女が籍を置くというのは、それはもう耐えられないくらいの屈辱でした。

好きな人が、嫌いなものの特に嫌いなものになる

この事実に僕は打ちのめされました。この出来事以来、僕は音楽を憎んでいます。

 でも振られたときに聴いていた「シュガーソングとビターステップ」は思い出の曲なので今でも大好きです。僕はこれを「戒めソングと戒めステップ」と呼んで今でも十八番にしています。


これが完全に逆恨みで偏見だっていうことはわかっているのですが、好きな人を音楽に取られた僕が自己防衛する手段はこれしかありませんでした。

自分で自分を生き辛くするのは、賢くない人の特権だと思います。


おわり 2021/09/24

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