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【デジタル保健室】インタビュー前編:立命館守山中学校・高等学校 養護教諭 山村和恵先生

こんにちは。

インパクトラボ理事・滋賀大学大学院データサイエンス研究科の戸簾です。

本記事では、デジタル保健室に関わっていただいている方々にインタビューを行い、どのような繋がりから、デジタル保健室と関わりを持って下さっているかを紹介します。

インタビューの第一弾として、デジタル保健室の実現に向け、保健室の最前線で活躍しておられる、立命館守山中学校・高等学校 養護教諭の山村和恵先生にお話を伺いました。

立命館守山中学校・高等学校 養護教諭 山村和恵先生

幅広い経験から、生徒に何かを伝えられるようになりたかった。

私が保健室の先生、つまり養護教諭になりたいと感じたのは、高校生の頃でした。その理由は、学校自体が好きだったからです。

勉強や先生が好きだった訳ではなく、学校という場所はいろんな人と無条件に話すことができる環境ではないか、これは得だなと(笑)。

漠然と教育現場に関わりたいなと感じていましたが、誰かを評価する立場の人になりたい訳ではなかったことや、卒業してすぐに「先生」になることにとても違和感がありました。私が今まで出会ってきた先生の中で、様々な経験をされた人はとても魅力的だったんです。

他にも色々興味があったため、学校にすぐに勤めるのではなく雑貨店や服飾関係、病院や清掃のバイトなど様々なアルバイトを掛け持ちして、とにかくいろんな仕事を経験して、お金を稼ぐことからスタートしました。

仕事を通じて、子どもの考え方に興味を持つように

はじめて「子ども」に関わる仕事をしたのは、保育園です。子ども達のイマジネーションに満ちている発想や柔軟さ、独創性に大変興味が湧きました。そこで働きながら保育士の免許を取得し、数年保育士として、また保育園の養護教諭として勤務しました。それから、小学校で養護教諭の常勤講師としての話があり、学校現場で働くことになったのは30歳過ぎてからです。

数校、小学校での経験の中で子どもたちの様々な課題が見えてきました。

何らかの事情で学校に来ることができない、家庭環境や人間関係のトラブル、虐待や性の問題など誰一人として同じ悩みではないその多様性に戸惑いながらも、だからこそ保健室がその子どもたちにとって何らかの居場所になればいいなと考えるようになりました

そんな考えを実現するために心がけたことは、あったかい声掛けです。保健室に生徒たちの興味が湧く物をおいたりして環境面を整えました。漫画を一緒に読んだり、保健室備品を一緒に作ったりしていました。

単位制や夜間高校で知った多様な生徒の悩み 性教育のスタート

そこから、いくつかの学校を経て、単位制や夜間高校で勤務をすることになりました。

単位制や夜間高校と聞くと、保健室がどのような形態かイメージがつきにくいかも知れませんが、基本的には、普通の学校と同じです。生徒が自由に登校してくるスタイルのため、養護教諭も彼らにあわせて、常に保健室にいました。授業の前に生徒は教室に行くのではなく、よく保健室に来てくれていました。「ただいま」「話をきいて」「昨日こんなことあった」など日常の報告から様々な悩み事などたくさん話してくれました。

不思議なことに生徒たちは必ず「ただいま」といって保健室に入ってきます。これはどの学校でも、今もそうですが、「いってきます」「いってらっしゃい」「おかえり」「ただいま」が日常的な挨拶として生徒と私の中で交わされます。学校の中でそのような会話が成立するのは、もしかしたら不思議かもしれません。

当時は様々なトラブルに巻き込まれていた生徒も多く、校内暴力、虐待、自傷行為、薬物、性のトラブルなどかなりコアな対応も多かったです。一緒に婦人科に行く事もありましたし、警察や他機関とも連携をしていました。「生きるのがしんどい」と連絡をくれた生徒を迎えに駅まで探しに行ったこともあります。

また学校に通いながら出産・育児を経験する生徒も多かったです。今から思うと実に多様な生活が学校内で日常的に行われていました。私は、生徒と妊娠や中絶、育児などを話ししながら、個々にあった性教育の重要性を感じました。この頃からです。生徒同士で伝え合う参加型の性教育を意識したのは。この経験が私の性教育に対する基本姿勢となり、現在の包括的性教育に繋がっています。

幼少期から思春期までの子どもたちとのかかわりから見える最近の子どもたちの傾向

そこからさらに、様々な学校・・・・・・。男子が多い学校、スポーツが盛んな学校などを渡り歩いてきました。そして現在は中高一貫校である立命館守山中学校高等学校で勤務しています。最終的に保育園から高校まで、幼少期から思春期のすべて子どもたちと関わりができたということになります。私が養護教諭になった頃と比べると、現在の子どもたちは自己主張に対して躊躇しているように感じます。

「この意見を言っていいのかな」とか、「こんなこと言ったら誰かが悲しむかもしれない」とか「自分が目立ったらどうなってしまうのか」とか、様々なことを意識して、何もできなくなってしまう。空気を読み過ぎているようです。

昔は生徒から「うるせーババア!」と言われることもざらにありました。以前、ある生徒から「先生の時代は本音を色々なことを話して解決したかもししれないけど、今は無理。結局自分の意見は通らないんだったら・・それだったら喧嘩せずに上手くやっていくほうがいいと思う」と言われました。

確かにそうだなととても納得したことを覚えています。コミュニケーションの方法の変化をどのように周りに関わればいいか・・・・・・この頃から生徒との関わりで生まれているコミュニケーションの方法に疑問を持つようになりました。

=============後編につづく=============

 Information

デジタル保健室について、詳しくは以下のnoteマガジン、学校ニュースリリースをご覧下さい。

インパクトラボでは、SDGsのスローガンでもある「誰ひとり取り残さない社会」の実現に向けて多様なステークホルダーの皆さんと一緒に活動をしてきたいと思います。

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