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【デジタル保健室】インタビュー後編:立命館守山中学校・高等学校 養護教諭 山村和恵先生

こんにちは。

インパクトラボ理事・滋賀大学大学院データサイエンス研究科の戸簾です。

本記事では、デジタル保健室に関わっていただいている方々にインタビューを行い、どのような繋がりから、デジタル保健室と関わりを持って下さっているかを紹介します。

前編では特に、山村先生がどのような経験を経て、養護教諭として活動されるようになったのか、そこで感じた最近の子どもたちの傾向などについて、お話頂きました。

詳しくは下記ページをご覧下さい。

経験を理論とつなげることができた大学院進学

立命館守山中学校・高等学校 養護教諭 山村和恵先生

立命館守山中学校高等学校に勤務すると同時に様々な出会いもあり、立命館大学に興味のある先生が何人かいたこと、そして社会人でも学べると言う環境があることをきっかけに、立命館大学大学院応用人間科学(現:人間科学研究)に進学を決意しました。

この頃は本当に様々なことを吸収したい時期で、大学院での学びとともに、下記Webサイトの団体で行われている性被害加害の専門研修に、土・日、参加していました。

一般社団法人もふもふネット
https://mofumofunet.jimdo.com/

そして2017年には京都市ユースサービス協会で、子ども・若者ケアラー(ヤングケアラー)の事例検討会に参加をします。

「性教育」「ヤングケアラー」「デジタル保健室」私が養護教諭として、特に大切にしている3つのトピックスの内の2つはこの頃からスタートしています。

ヤングケアラーに着目したタイミング

2017年から子ども若者ケアラーに関する事例検討会に参加するのですが、当初はまだまだ「ヤングケアラー」という言葉や概念は広く知られていませんでした。きっかけは、一緒に性教育をしていた立命館大学産業社会学部の斎藤真緒教授と、家族のケアを伴う子ども若者が多くいるのにもかかわらず、家族のお手伝いをしてえらいねという言葉だけで、何もサポートがない現状をどうしたらいいかという話しからです。

この検討会は「当事者の声」を真ん中においた会で、当事者の方々の貴重な声をもとに、サポーター(支援者)がどのような関わりをするかを考える会でした。そして2021年からは「YCARP(ワイカープ)子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト」にサポーターとして参加し、現在はケアラー支援プログラム開発チームの一員としてさまざまな活動をしています

まだまだ学校でできることはある

ヤングケアラーや性教育の問題に向き合う中で、学校や福祉や外部機関との連携の難しさを感じていました。どこに相談すればいいかというものから、具体的な繋がりです。連携の障壁や認識の違いもあるのですが、多職種が参加する研修会などでは、教育現場、教員の参加が少ないのも気になるところでした。

その頃から増加してきた“居場所”に関してもです。サードプレイスの存在は、現在の子どもたちにとっても非常に重要な場所ですが、「学校では補えない部分」を外に作るだけでなく「学校内に新たに作る」ことができないかと考えていました。まだまだ学校でできることがあるではないかということです。

たとえば、保健室登校は一つの解決策であるものの、保健室登校に抵抗感を持つ生徒もいます。もっと校内で気軽に利用できる環境が必要ではないか・・・・・・

まずは、2020年コロナの流行時に「保健室」そのものを見直しました。

生徒が望む「保健室」

「保健室」というと怪我や病気などの対応から相談する場所として生徒は利用しますが、中には「保健室にいくとそんな人(相談している弱いヒト)と見られる」といったスティグマを感じとる生徒もいれば、学校内で過ごす場所が少ないと感じている生徒もいます。

そこで、保健室を「保健室らしくないCafé 」のような環境にして、保健室に行くことに抵抗感をなくしてもらうようにしました。新たに保健室の近くに「サポートルーム」を設置し、生徒が勉強だけではなく、ゲームや読書など、リラックスできる場を設けました。2023年からはサポートルーム【オルバ】に、教員でも養護教諭でもないナナメの関係のスチューデントサポーターを常駐させ、生徒がいつでも気軽に話せる場を作りました。

勿論これらの取り組みは、校長や副校長や教員の後押しがあってこそ実現したものです。私の思いや願いを否定せず、耳を傾けてくれる環境があったからこそ実現できたのです。立命館守山中学校・高等学校は非常に柔軟でユニークな学校だなと、改めて感じました。

「デジタル保健室」をつくるきっかけ 

生徒は、保健室にいくと、ほぼ養護教諭が対応することになるのですが、救急対応以外は生徒にとって相手が選べないことも以前から疑問を抱いていました。相談も学校で1人か2人しかいない養護教諭に限らず、もっと選択肢があるべきではないかと・・・

その他にも保健室対応中に、「ゲームをしていると怒られる」という声をよく耳にし、これに違和感を覚えていました。確かにゲームの利用方法や時間管理には注意が必要ですが、それでもうまく調和させる方法があるのではないかと考えていました。当時本校では「メタモリ」といって学校内をメタバース体験できる場があったんですね。あっ、これは有効な手段だと。そこで、当時本校の探求授業に講師として訪れていたインパクトラボの上田隼也さんに相談したのです。彼は、保健室の現状と課題を丁寧に聞いてくれました。ここがデジタル保健室の始まりです。

「生徒」×「卒業生」×「企業」

このデジタル保健室は2022年から活動を始めています。一番初めに行ったのが、「生徒の声」を聞くことです。

保健室は皆にとってどんな場所であったらいいか、そして学校内のコミュニケーションをどうすればいいかを生徒と何度も話し合いました。直接話しをするのではなくアバターを介して話すと生徒の緊張の軽減にもなることからこれを校内で活用するのはどうしたらいいかと考えました。そこでインパクトラボの戸簾隼人さんに生徒の話を聞いて頂いたり、アバターを使った会話体験などをさせて頂きました。本校の卒業生であり、立命館大学の学生である中井勇希さんには、ワールド担当として保健室やサポートルームを再現して頂きました。インパクトラボの皆さんには何度も保健室に来て頂き、常に生徒と意見交換してもらっています。

デジタル保健室は、メタバースの利活用やAIによる会話補助など、これまで利用されていなかった技術を活用することで、生徒の考え方を尊重し、ユニークで柔軟な方法で保健室をポジティブに利用してくれるような環境作りを目指しています。実際に生徒から「保健室でメタバースのことなどを話していて、新しい保健室という感じがする」という声も聞きました。

養護教諭そのものを支えるネットワーク作り「とりあえずほけんしつ」

養護教諭は大変多忙で、子どもたちの悩みに対して「〇〇をすれば解決する」といった画一的な対応は難しく、生徒ごとに対応を考える必要があります。中にはインタビュー前編でお話したような、コアな悩みを聞く機会も多く、全力疾走で走っているようなイメージがあります。

それぞれの学校に合わせた対応をしている人も多く、その経験からくる知恵を持ち寄れないかというところから、養護教諭のネットワークの場として「とりあえずほけんしつ」を設立しました。現在は私とイラストレーターで養護教諭でもあるはるちゃん、立命館大学の斎藤教授とゆるっとした会を開き、活動をしています。結果、養護教諭だけでなく多職種の人たちにも参加して頂いています。

 最後に

今回のインタビューいかがだったでしょうか。デジタル保健室の実現に向けて動かれているリアルな声を届けることができたかと思います。

今後も私たちは、これまで実践事例が非常に少ない保健室での先端技術の活用方法の模索に取り組んで行く予定です。これらの様子については、改めてnote等で報告させていただきます。

 Information

デジタル保健室について、詳しくは以下のnoteマガジン、学校ニュースリリースをご覧下さい。

インパクトラボでは、SDGsのスローガンでもある「誰ひとり取り残さない社会」の実現に向けて多様なステークホルダーの皆さんと一緒に活動をしてきたいと思います。


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