上京5周年【後編】〜明日もきっと、この街で生きていく〜

2021年夏。

新型コロナウイルスによる無観客開催が中心という特殊な状況に置かれたまま、世界最大のスポーツイベント、オリンピック・パラリンピックが東京で開催された。


4年間東京で夢を追いかけ続け、時には夢叶って歓喜し、時には夢破れて挫折を味わってきた自分にとって、これもまた一つの夢だった。

しかし、ただ「夢叶えたい」という上京当時に思っていたキラキラした気持ちと現実世界でのリアルの苦しみや葛藤を理解した上で挑んだこの仕事は、これまでとは違う気持ちも感じていた。



2021年9月。

東京オリンピック・パラリンピックは閉幕し、自分のこの夏の役目は終わりを迎えた。やり切った。その一言しかなかった。

これまで自分は東京で時には間違いも犯したし、「どうやって生きていけばいいのだろう」ともがいていた日々もあったけれど、それらも経験値として自分の引き出しとして使い対応できた。

そんな気持ちを感じたのは東京に来て初めてだったかもしれない。それを感じられただけで良かった。




それから秋を迎え、冬を迎え、気づけば2022年を迎えていた。

世の中はまだパンデミックの影響を受け、「コロナ前」の世界は戻って来ない。もしかしたら「コロナ後」の世界はもう幕を開けていて、この現状を新たなスタンダードとして受け入れて生きていくのかもしれないが。




東京生活も今日で丸5年を迎える。

希望に溢れて、夢にすがりついてこの世界に飛び込んで、「この街に来てよかったな」、と思う日もあれば「この街に来なければよかった」と思う日もあった。

得たものの喜びと失ったものの悲しみ。

2つの感情が混ざり合ってこの5年はできている。多分、どっちかだけではこの世界は渡りきれなくて、どちらも背負いながらこれからも生きていくことになるのだろう。




東京できっと、明日も自分は生きているのだろう。

この街に馴染めたのかは分からない。これからずっと東京に住み続けるのかも。それでも自分は東京という街が好きだし、東京に出てきてよかったし、自分の人生の記憶としてこの東京での日々は残っていくのだろう。

風の先の終わりを見ていたらこうなった
雲の先を 真に受けてしまった
さすらいの 道の途中で
会いたくなったら歌うよ 昔の歌を
(さすらい/奥田民生)

東京での生活を経て、新たな目標も芽生えている。

希望も、絶望も、喜びも、悲しみも、楽しみも、憂いも、これからの日々には引き続きついて回るのだろう。けれど、時にはこの世界と折り合いをつけ、時にはこの世界に抵抗しながら、進んでいくこの日々と向き合っていきたいと思う。

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