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未完成の言葉のちから

もうすぐ今年度が終わる。雪が降って動ける範囲が減るしきっと振り返る時間もあるだろうと思っていた1~2月もあっという間に過ぎてしまった。1日1日何してたんだろう?と思ってしまうけど、映画見てのんびりしたり料理してゆっくり食べたりする時間がしっかりあったような気がして、それはそれでよかった。

今年度ふりかえりたかったもののひとつに、毎月企画していたオンラインイベント「はたらくくらすラボ」がある。今年度のうちの取り組みのひとつで、昨年度まではリアルの場で開催していたものだった。新型コロナウイルスの影響で東京に行けなくなり、オンラインでやったところ同じように(もしくは違った)面白さがあることがわかり、毎回ゲストを招いて開催した。

対象は大学生と20代社会人。10名ほどで、前半はゲストの話を聞き、後半はグループにわかれて「キーワードトーク」というワークを行う。募集はイナカレッジのSNSやホームページ…といいつつ、必ず顔を出して会話をするイベントなので、全く知らない人というよりはこれまで何らかの関わりがあったり口コミで知ったりして来る人ばかりだ。

募集記事はこんな感じ↓

https://inacollege.jp/blog/2020/09/25/hatarakukurasu3/

だいたい平日の夜7時から、2時間で終了。進行は私と、新潟に来てからずっと一緒にこういうイベントを企画している、現在は阿賀町で高校魅力化に取り組んでいる西田さんとおこなった。

自分で言うのもなんだけど、とにかく毎回気づきが多く、私自身が良い言葉と問いに出会い、思考が止まらなくなるのに安心感もあるイベントだった。アンケートでも概ね好評で、「時間が足りなかった、もっとしゃべりたい」「これからもやってほしい」という声が多かった。その多くが、特に人前でしゃべるのが得意!というタイプの子たちでもないのがまた嬉しい。

特に印象に残っている話と、このイベントの肝である「キーワードトーク」について書きたいと思う。

眼鏡とおもしろ感度、変化の中に「ただ居られる」田舎

特に印象に残っているのが、第四回の工藤君がゲストだった時の話。2017年、大学を休学して新潟県小千谷市の山奥で米の生産・販売をする会社にインターンした彼が、東京で社会人1年目をやりながら振り返って思っていること。

(右が当時の工藤君。以後この写真が宣伝によくつかわれることに、笑)

工藤君は休学を決意した大学3年当時のもやもやをこう話した。

何かに真剣になることが怖かった。それが将来に直結しないかもしれないことも。やりたいことなんてなかった(という状態が怖かった)。

とにかく飛び込んでみたインターンで、楽しみながらもある程度ミッションを「こなし」てしまった彼は、ある人の「興味ないでしょ。情熱を傾けてないでしょ?」という言葉で、ある意味おもしろがるのがとても難しかった「お米」(味の違いがわかりづらい)について、ちょっと無理矢理情熱を傾けてみたという。

そしたら、楽しかった。一生やりたいかと聞かれたらそういうわけではないけれど、それでも充分な気がした。世界の見方が少し変わって、「おもしろ感度」が少し上がった。

「自分の中から沸く興味」を待つんじゃなくて、「それに興味がある」という視点=色眼鏡のようなものを一時的にかけて世界を見てみる感覚でいろんなことをやってみていいんだと思う。眼鏡をかける前とは少し違う世界・違う自分がいる。そうすると、「ものを受け取れる範囲が広がる」、それが楽しいと彼は言う。

変化を感じる過程の中にいることが、ただ自分がここに居るだけでいいと思える幸福感につながっている。自分でやる畑、雪の日、おすそわけ…田舎にはそういう過程が(もはや無意識になっているけど)多かった。

この言葉には圧倒されてしまい、思わず西田さんも「うーん」と唸っていた。

私は工藤君がインターン生だったときコーディネーターとしてサポートをしていた(まあ大したことはしてなかったけど)。インターンが終わった時の工藤君は、「大きなことを成し遂げること」より「小さな積み重ね」に価値を見出したように見えた。その感覚へさらに深く理解が進み言語化されたような言葉だった。

ぼーっとしていると人間は、わかりやすくて刺激的なものを求め摂取してしまうように思う。それは「おもしろ感度」を減らしている生き方なのかもしれない。わかりづらくて眼鏡をかけないと気が付かないような小さなものに「おもしろい」と思える心をもっていたい。ちなみに、私個人では「短歌」が今それだなあと思う。

未完成の言葉に宿るもの

工藤君のようなゲストがあと3人いて、ゲストの話のあとにやるのが「キーワードトーク」。『最近もしくは今、頭に浮かんでいるキーワード(単語でもそうでなくても)』を紙に書いて共有し、グループで順番に聞きたいものを選んで、選ばれた人が話すというのを繰り返すだけのワーク。

こんな感じでいくつでも書いてOK。あんまり特別な工夫はしていない。ポイントは、「自分の書いたキーワードが人に選ばれること」と「考えや意見が完成していなくていいこと」だと思っている。前者については、単純に選ばれると嬉しいので、説明するモチベーションがあがる。後者は、要は「キーワードの時点で人から見て何の話かわからなくていい」という気楽さがあることと、「自分でも考えがまとまっていなくてもキーワードだから書けてしまう」というライブ感?みたいなものがあること。これは西田さんに言わせると自分の「言語と非言語の間」の思考が引き出されるから面白いのだそうだ。

「はたらくくらすラボ」で特にこれが盛り上がるのは、前半でゲストも「まだまとまっていないけど今こんなこと感じてます」というような話をするからかもしれないな、と別のイベントでもこれをやってみて思った。あまりにみんながまとまった話をできすぎると、あんまり盛り上がらない。

「未完成の言葉」にはパワーがあると思った。それこそ工藤君の言った、「目の前で変化を見ることができる」という幸福感があるからかもしれない。「未完成のもの」が今ここに存在しているという安心感。

それを「オンライン」だと出しやすいという気づきもあった。ZOOMを利用すると「チャット」という機能がついているが、場のみんなが注目する「音声」よりもパッと「未完成言語」を書きやすい。リアルのイベントはそもそもオンラインにあまりない「空気」にとても存在感があるので、みんなけっこう「空気」を読んでしまうのだ。

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もうすぐ次年度が始まる。結局、新型コロナウイルスの状況は先が見えないままだ。どうする?と常に耳元でささやかれているような焦りもある中で、私はこの「はたらくくらすラボ」をやってるときや日々の生活を生きているとき、不思議とコロナのことをあまり話さず忘れていることも多かった。

「未完成言語」に触れることが「変化の過程」に居るひとつの方法だとしたら、4月からもそういう場をつくりたい。たぶん、私にとって大切な仕事だ。



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