日本ラグビー躍進の立役者・中竹竜二さんの講演で、社員全員がリーダーシップを学んでみる。
はじめに
はじめまして。株式会社オズビジョンという一風変わった会社で働いている、モリシママサヒロと申します。
入社後4ヶ月で感じた「どう変わっているか」、……ひとことでは言い表せないのですが
・もっとも大切な経営指標がNPS(ネットプロモータースコア)。このために四半期に1度顧客調査を行っている。
・顧客だけでなく、従業員のNPS=eNPSも経営指標においている。
・そのために必要な人材開発プログラムが充実。入社後たった数ヶ月で、6年間勤務した前職の大企業で受けたセミナー・トレーニングの回数を超える研修を受けました。能力開発費の至急もあり、社会人大学院のプログラムを受けている同僚もいます。
「人材開発」という言葉が当たり前のように使われるようになりましたが、ここまで本気でやっている組織も少ないんじゃないかな、と感じています。そんな会社でこの間あったセミナーの様子を紹介します。
いきなりトップクラスのコンサルタントが会社に来た
去年日本で開催されたラグビーワールドカップ。「One team」のキャッチフレーズが「新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれたり、日本ラグビーの活躍が記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
そんな日本ラグビー躍進の立役者のひとりに、早稲田大学ラグビー部監督や、U20日本代表監督を務めた中竹竜二さんがいらっしゃいます。
中竹さんはラグビー界だけでなく、ビジネスリーダーシップのコンサルタントとしても活躍されていらっしゃいますが、なんと先月、その中竹さんをお招きして、オズビジョン社員全員がリーダーシップを学ぶ機会がありました。
よく考えたら、すごく贅沢なことですよね。中竹さんご本人の許諾もいただきましたので、そのときの講演内容をお伝えします。
監督の言うことを、誰も聞いてくれなかった
中竹さんはもちろん選手経験をお持ちですし、早稲田大学時代には主将として大学選手権で準優勝されています。しかし、強豪の社会人チームの主力だったり、全日本代表に選ばれたりする「ラグビーエリート」ではありませんでした。
そんな中竹さんが、あの清宮克幸さんの後任として早稲田大学のラグビー部監督に就任したとき、選手は誰も監督の指示に従わなかったそうです。なかには陰口を叩いたり、直接面と向かって「こんなんじゃ勝てない」と悪態をつく選手もいたそうです。
弱さをさらけ出すリーダーシップ
中竹さんがとったやり方は、「弱さをさらけ出す」こと。
「これは自分のミスだった」「これは自分にも分からない」「ちょっと悩んでいる」など、ふつうリーダーが見せないような、自分の弱さを選手の前で正直に伝えたそうです。
中竹さんは、自分の弱さをどれだけさらけだせるかこそが、「Barometer of courage=勇気のBarometer」だと言います。
弱さを出せず、虚勢を張ることが当たり前の組織には、心理的安全性がない。メンバーの心理的安全性を作るためには、まずリーダーが自分の弱さを表に出すことが重要だ、と。
勇気は伝染する
そしてある日、自分に批判的だった選手が、突然丸坊主になって部室にあらわれたそうです。
「自分が間違っていた。恥ずかしいけれど、自分の気持ちを表すために丸坊主になった」
そんな選手のカミングアウトを聞いて、中竹さんはこう言ったそうです。
「お前、よくやったな。自分の弱さを認められたな。決して恥ずかしいことじゃないぞ。勇気は必ず伝染する」
この一件を機に、早稲田大学ラグビー部は「強い」組織へ変わっていったそうです。中竹さんが紹介された、有名な研究者の一節があります。
愛も強い絆も喜びも、創造も信頼も
自分の弱さを認めることから始まる
ブレネー・ブラウン(ヒューストン大学大学院研究教授)
弱さをさらけ出せる人間=勇気を持っている人間
弱さをさらけ出せる組織=心理的安全性が高い組織
これは企業組織だけでなく、あらゆる組織に言えることなのかもしれません。個人的な所感ですが、いまの日本型組織が学ぶべき点のようにも思います。
あくまでも、目的達成のため
ただし、中竹さんは勘違いしないように、とも言います。
「弱さをさらけ出すことは目的ではなく、目的達成のための手段です」と。
その先に理想とするチーム像があり、そのビルディングの一貫としての弱さの表出である、と。
これを間違えると、愚痴で傷をなぐさめあう組織になってしまうそうです。確かに……と、思いあたるところもありますね。飲み屋で互いになぐさめあうことも時には必要ですが、リーダーシップ確立のための手段ではない、ということです。
自分のやり方を信じていたから、折れなかった
講演後、思わず中竹さんに「選手が誰も言うことを聞いてくれない時間はほんとうに辛かったと思いますが、どのようにして乗り越えましたか?」と尋ねました。
「折れるようなことはありませんでした。自分のやり方を信じていたので、いつか浸透すると考えていたので」
おお……。これは誰でも簡単に真似できるようなものではない気もします。誰しもがメンタルオバケではないですもんね。
だからこそ、いまリーダーである人間は将来リーダーになる(かもしれない)メンバーを守るため、このメンタルタフネスとともに、率先して取り組まねばならないのだろうな、とも思いました。
リーダーの定義なんか、ない
ある社員が、「中竹さんの考えるリーダーの定義を教えてください」と尋ねました。中竹さんは即座にこう言います。
「リーダー像は自分の言葉で定義することが大切です。また研究によると、成功したリーダーに共通点は『ない』そうです。あえていえば、『自分らしくある人』がリーダーなのではないでしょうか」
世間にはたくさんのリーダーシップ本がありますが、そこにはさまざまなリーダーシップが描かれています。多様で不確実な時代だからこそ、リーダー像も多様であるほうが良いのかもしれません。
組織によっては、リーダー(マネージャー)の理想像が固定化していることもありそうですが、それよりもいろんなタイプのリーダーがいる組織のほうが、いざというときに折れずにすみそうです。
中竹さんが考えるリーダー像
中竹さんは、これからのリーダー像についても語ってくれました。
今までの組織は、成果を上げた人間をリーダーにしてきた。しかし、このやり方はその能力についていけない周囲を消耗させがちです、と。
このようなリーダーを『ディミニッシャー型』と呼ぶそうです。
ディミニッシャー型のリーダーは、その人が優秀であっても、周囲を疲弊させてしまう人たちのことである。
このタイプの人は、自分はすべてを知っていると考え、周囲の力を借りることをしない。
それでいて指示だけ出す人のことである。いわゆるワンマンというのもこのタイプである。
(引用:米国研修で学んだマルチプライヤー型リーダシップについて)
これからは『マルチプライヤー型』のリーダーが求められる、と中竹さんは言います。マルチプライヤー型リーダーとは、周りの人の能力を引き出し、増幅していける人のことです。
衆知を集めることで、組織として結果をつくることにつながっていくのだと力説されていました。
ひとりひとりがリーダーに
そして、リーダーとは組織内の一部の人間がなるものではない、とも中竹さんは言います。管理職だけでなく、ある業務やある領域に限定すれば、社員誰もがリーダーになる可能性がある。と。
さいごに。リーダーにとって大切なのは、「信用(Credit)」ではなく「信頼(Trustness)」だ、と話していたのが印象的でした。
一般的に、「信用」とは過去の実績などで積み重ねられるもの、「信頼」とはその人への期待と解釈されています。中竹さんはこれを『理性ではなく感覚的なもの』だと言います。
心理的安全性の高い組織からは『相互の信頼』も産まれやすいのではないか。そんなことを感じました。
私自身、なかなか弱さをさらけ出せないほうなのですが、ちょっとずつ変えていけるといいな、と思います。
とても良い学びになりました。中竹さん、ありがとうございました。
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