ホーチミン市内で観られるカオダイ教寺院「Thanh That Cao Dai Sai Gon」
初訪 2019.03 更新 2023.10.07
カオダイ教とは
カラフルで奇抜な寺院装飾が目を引く、ベトナム生まれの新興宗教「カオダイ教(Đạo Cao Đài)」。新興宗教とはいえ発足は1926年で、現在国内外に400〜600万人の信者がいるといわれています。
カオダイ教が生まれたのは、ベトナム南部のタイニン省。住民のおよそ7割がその信者といわれ、総本山となる巨大寺院での礼拝で信者がずらりと並ぶ光景は圧巻です。
…ぜひその様子、見てみたい!と思うところですが、ホーチミン市街から総本山までの距離は約100kmと、なかなか気軽に行ける距離感ではないのが難点。たとえば、旅行日数が限られている場合や、ツアーでよくセットになっている「ベトナム戦争時の地下トンネル」がちょっと苦手…という人におすすめしたいのが "ホーチミン市内最大級のカオダイ教寺院" 。
街なかからもアクセスしやすい立地なので、市内観光の合間に個性的な寺院の内部を見学することも可能です。
タイニン省の総本山についてはこちらで書いています。
アクセス
場所は、ホーチミン市中心部の大通り「チャンフンダオ(Tran Hung Dao)通り」沿い。中心部の1区から車で20分ほどの場所にあり、華人街「チョロン(Cho Lon)」へ向かうついでに立ち寄りやすい立地です。
寺院があるのは、ホーチミン市5区のチャンフンダオ通り891番地。
一目見てカオダイ教寺院と分かる、色鮮やかな外観が目印です。
宗教施設のため信者など関係者への配慮が必要ですが、マニアックなスポットを巡る英語のバイクツアーに組まれていたり、入口に英語の注意書きがあったり、外国人の見学者もいる模様。
とはいえ念のため、中を見学してもいいか関係者らしき人にひと声かけておくと安心です。(私が行ったときには「見学も写真もOKだよー」といっていただきました。)
寺院内へ
まずは入口の門をくぐり、小さな階段を上ったところで靴を脱ぎ、男性は右の階段から、女性は左の階段から上階に上っていきます。
はじめに見える地上階のフロアはこんな感じ。正面の青い箱は寄付箱で、隣の青い看板には「本殿入口」と矢印付きで書かれています。
南国ならではの通気口を兼ねた壁の装飾や、手すりのアイアンレースなど階段を上っていく途中にも見どころが。独創的な装飾は、奇界遺産的建築物(©佐藤健寿)としても見応えありです。
本殿入口の画には、"天上天下 博愛公平" へと導く三聖人として、ベトナムを代表する詩人グエンビンキエム(Nguyen Binh Kiem)やフランスの詩人ヴィクトルユゴー(Victor Hugo)などが描かれています。そう、カオダイ教の特徴の1つが、崇拝する相手が多い点。いくつかの宗教を融合しているため、釈迦やキリスト、ムハンマドなどがそこに並ぶのですが、そのほかユゴーやソクラテスなどの哲学者や詩人までが崇拝の対象になっています。
三聖人の画の奥に広がる本堂。ほかにはない個性的な装飾が散りばめられていて、なんだか圧倒されます。
ここでは1日4回(6:00、12:00、18:00、24:00)の礼拝が行われ、道教は赤、仏教は黄色、キリスト教は青色、一般信者は白と、それぞれ色の異なる装束に身を包んだ信者が並び、礼拝が行われます。(※それぞれ元々信仰している宗教を尊重しつつカオダイ教に融合されている形)
本堂の正面に鎮座するのは、ご本尊である「天眼」。
取り囲む柱には立体的な龍が絡みつき、独特の雰囲気を放っています
こうしてみると柱の上部はコリント式なのか西洋風の装飾がされていて、アジアと西洋が織り混ざっている印象。こういった摩訶不思議な装飾も相まって欧米のメディアでは「(カオダイ教寺院は)ディズニーランドや漫画のよう」と揶揄されることもあるそうですが、装飾の1つ1つにはちゃんと理由があるそうです。
宗教を融合してしまうという大胆さに驚きつつ、"排除なき共生"が難しいいまの時代では何か感じるものもあるこのカオダイ教。
新興宗教とはいえ、2011年には国の公認宗教として認定されました。今回の寺院は総本山のように巨大ではありませんが、色鮮やかでユニークな装飾を見ながら、独自の信仰世界に触れてみるだけでも、おもしろい体験になりそうです。
カオダイ教寺院
Thanh That Cao Dai Sai Gon/Saigon Cao Dai Temple
住 891 Tran Hung Dao, Q.5, HCMC
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