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南ベトナム解放民族戦線の拠点跡地カフェ「Ca Phe Do Phu」 Dang Dung店

初訪 2018.04  更新 2023.05.12


前回、こちらの記事で紹介した
レトロカフェ「カフェ ドーフー(Ca Phe Do Phu)」。


かつて、南ベトナム解放民族戦線(俗称ベトコン)のサイゴン特殊部隊が拠点として利用していた建物を、展示・開放するこのカフェ。
市内に下記の3店舗あるうち、前回はの「地下に武器庫のある店舗」を取り上げました。

地下武器庫 → ヴォーヴァンタン(Vo Van Tan)店
文書や薬の保管庫跡地 → ダンユン(Dang Dung) 店
秘密の作戦基地 → チャンクアンカイ(Tran Quang Khai) 店

ということで今回は、その続き。
番の文書や薬の隠し保管庫があるカフェ。ホーチミン市1区にある、居心地のいいテラスが特徴のカフェをご紹介します。



アクセス

場所は、ピンクの教会として知られる「タンディン教会(Nha Tho Tan Dinh)」から徒歩約8分の、ダンユン(Dang Dung)通り沿い。

木製のテラスが趣きあるカフェは、思わず写真を撮りたくなるノスタルジックな雰囲気が漂っています。

かつての食堂がオープンしたのは1946年(tu nam 1946)


この建物は1940年代に建てられ、当初は焼肉ワンプレート「コムタム」やコーヒーを提供するシンプルな食堂だったそう。当時、店を切り盛りしていたドー・ミエン(Do Mien)夫妻の名前にちなんで、現在「ドーの宮殿(家)」を意味する「ドーフー(Do Phu)」という店名がついています。

コムタム食堂が、実はベトコンの拠点?
表向きは夫婦の営むコムタム食堂だったのですが、1975年以前は、ベトナム北軍から支援を受ける「南ベトナム解放民族戦線(いわゆるベトコン)」の隠れた拠点として機能していました。
食堂として客を迎えながら、建物内では主に機密文書やお金、薬や武器を保管したり、北部に移送するためのやりとりが行われていたそう。

長い年月を経て近年、ベトコン(サイゴン部隊の)一員だった「チャンヴァンライ(Tran Van Lai)※以下別名の"ナムライさん"と表記」氏の息子さんが、現存する拠点跡地を買い戻し管理。「この歴史を若者に伝えたい」とカフェに改装し、般のお客さんに開放しています。

ということで、この建物には "秘密の拠点" ならではの、まるでからくり屋敷のような仕掛けが残されていて、それを見学することができます。

1階は、レトロな民家のリビングのような雰囲気
2階へは少し急な階段を登って
アンティーク家具が配された落ち着きある空間の2階
テーブル席やテラス席などさまざまな席があります
ホイアンのようなウッディなテラスも居心地良し

テラスには、写真のようにベトナム国旗が飾られているときもあれば、赤と青を背景に星が描かれた「南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)」の旗が飾られていることも。秘密の拠点として利用されていた当時は、テーブルの上に半分に折った爪楊枝を交差させて置くことでベトコンの人間であることを伝えていたそう。…興味深いですね。


秘密の保管庫と避難口

さて、からくり屋敷のような仕掛けですが、「空中保管庫(Floating Storage)」とも表現される仕掛けが、2階の床板に隠れています。

スタッフに声をかけると仕掛けを見せてくれます

端の床板の一部を持ち上げると、本来の壁との間に作られた隠れた空間が出現。ここに紐付きの缶を吊るして秘密文書や薬、お金などを保管し、必要なときに引き上げるなどしていたそう。ここから補給路である "ホーチミンルート" を経て、北ベトナムに運ばれたりもしていたそうです。

さらに、一見クローゼットに見える扉を開け、中の床板を外すと、脱出口が出現。何かの危険を察知したときに、この家の裏から近くの通り(Tran Quang Khai通りやNguyen Van Nguyen通り)に逃げる避難口として使われていたそう。

なんでも当時、この建物の隣にはベトナム共和国の陸軍大将であるNgo Quang Truong氏の家があったため、活動にはより慎重さが求められたのだとか。このほかにも、キッチンの床下にピストルの隠し場所があったりなど、秘密の拠点ならではの名残が残されています。


メニュー

メニューはほかの店舗同様、ベトナムコーヒーやフルーツティーなどのドリンクと、フードは焼肉プレート「コムタム」を用意。メニュー名は一応小さく英語も併記されています。

ドリンクメニュー
(クリックで拡大表示できます)

バターコーヒー(Ca Phe Bo Phap)やバタービール(Bia Bo)など、ユニークなドリンクも。

フードメニュー


料理

「コムタム  リブ肉+卵焼き(Com Tam Suong Trung)」5万5000vnd(約320円)

コムタムは、好きなおかずを下記から組み合わせて注文するスタイルです。

Suon = ポークリブ
Trung = 卵焼き
Bi = 豚皮
Cha = ひき肉やキクラゲ入りの蒸し卵

なぜコムタムが看板メニュー?
もともとコムタム食堂だったことにちなんで、店の看板メニューになっている「コムタム(Com Tam)」。
精米過程でできたくず米をなんとか利用できないかと考えた、サイゴン人の知恵から生まれた南部料理で、がっつりとした炭火焼肉ながらご飯が小粒でさらっとしたくず米なので、朝からでも軽く食べられるのが特徴。
かつてこの店に韓国兵が出入りし、ドー夫妻がキムチの作り方を教わっていたことから、ここのコムタムにはキムチが付いています。


「アイスティー(Tra Lipton)」3万5000vnd(約200円)

このアイスティーは現在メニューにありませんが、ライチティー(Tra Vai)やレモングラスピーチティー(Tra Dao Cam Sa)、シナモンティー(Tra Que)など、アジアンなアイスティーが揃っているので、お好みでチョイスを。

開店記念で出してくれた素朴な焼き菓子

ベトナムコーヒーや南国らしいドリンクとともに、レトロなベランダ席で一服。ついでに歴史に触れてみるひとときというのも、いい体験になりそうです。 


Ca Phe Do Phu/カフェドーフー

[Dang Dung 店]
 113A Dang Dung, Q.1, HCMC
 7:00〜22:00
 0898・107・113
 なし(祝日は休みの場合有)
FB
HP

参考:
Vn Express
Tuoi Tre
Thanh Nien
Dan Viet
VOV World


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