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秘密の武器庫を利用したカフェ「Ca Phe Do Phu」 Vo Van Tan店

初訪 2020.12   更新 2023.05.08


ベトナムでも起きているここ数年のレトロブーム。
かつてサイゴンと呼ばれていた時代を懐かしむようなレトロなカフェは、日本と同様に「写真映えする」と現地の若者から人気で、ホーチミン市内にもノスタルジックなカフェがたくさんあります。



ですが、今回はそんなレトロ"風"カフェとは一線を画す、本気のレトロカフェ。国の史跡を利用した本物のレトロカフェです。


いったい何の史跡?
国の史跡とは、どんなものかというと、
ベトナム戦争の時代。北軍の支援を受けた「南ベトナム解放民族戦線(俗称:ベトコン)」のサイゴン特殊部隊が、秘密の拠点を置いた場所。

市内にはたとえば「機密文書や薬を保管した場所」「秘密の作戦基地」などかつての拠点跡地が数カ所あり、それらをサイゴン特殊部隊の一員だった「チャンヴァンライ(Tran Van Lai)※ナムライ、マイホンクエなどの別名あり。以下「ナムライさん」と表記」氏の息子さんが現在管理。
「父の記憶とともにこの場所を蘇らせ、若者にその歴史を伝えたい」とカフェ兼博物館に改装し、一般のお客さんに開放しています。


カフェの店名は、「カフェ ドーフー(Ca Phe Do Phu)」。
史跡を利用したカフェとして現在3店舗あり、
① 地下武器庫 → ヴォーヴァンタン(Vo Van Tan)店
② 文書や薬の隠し保管庫 → ダンユン(Dang Dung) 店
③ 秘密の作戦基地 → チャンクアンカイ(Tran Quang Khai) 店
となっています。

今回取り上げるのは、中心地からもアクセスしやすい①番。
3区ヴォーヴァンタン通りにある地下に秘密の武器庫があるカフェです。



アクセス

カフェの場所は、統一会堂から車で約5分。
Vo Van Tan通り270番地の路地を入ります。

270番地の路地入口にあるゲート

入ってすぐ左手に、カフェが見えてきました。

こちらが入口。ドアのないオープンな作りです

入口近くにある席で、サクッと休憩も可能。2階席でのんびり過ごすこともできるので、建物内を探検しながらぜひ好きな席を見つけてみましょう。

まずは、1階のカウンターで注文を。
2階へは奥の階段から上がります。

キッチンを横切った先にある2階への階段
2階はレトロな家具が置かれたスペースと
路地を見下ろすテラス席があります
個人的にはこのテラス席がオススメ(冷房はなく扇風機のみ)
2階から、さらにハシゴのような急な階段を上った先には屋根裏部屋も
踏み板ミシンやラジオなどのアンティークが並べられた空間は、どこか懐かしさを感じます
中にはベトナム戦争が終結した日(1975年4月30日)の手帳なんかもありました
カフェの入口にはナムライさんの愛車も置かれています



地下の武器庫とは

"地下に武器庫があるカフェ"といいましたが、一見するとただのレトロカフェ…ですが、このカフェの床下には広い武器庫があり、1968年ベトコンによる南ベトナム大統領官邸(現 統一会堂)などへの攻撃「テト攻勢」の際には、収蔵された3トンの武器の中からさまざまな武器が運び出され、実際の攻撃に使われたそう。

カフェの隣には、ベトコンのサイゴン特殊部隊(サイゴンレンジャーズと表記)を表す壁画があり、こう書かれています。

国家レベルの歴史的文化遺産
1968年、サイゴン特殊部隊による統一会堂(Dinh Doc Lap)への攻撃
"テト攻勢"(Tet Mau Than)で使われた地下武器庫。
秘密の地下武器庫を有して建てられた家には、B40やカービン銃、ピストルや手榴弾など、さまざまな戦争装備を含む3トンの武器があり、天井にあるドアロックシステムを使って隣の家や床下から安全に取り出せる戦闘システムもありました。
1968年の旧正月元旦の深夜、ここに集結した特務兵19名は兵器や爆薬を受け取り3台のトラックに乗り込んで、サイゴン政府の中枢である統一会堂を突如攻撃。同時にラジオ局や軍司令部、アメリカ大使館などにも分散して攻撃が仕掛けられました。


そして、実際にかつての地下武器庫に下りることもできます。

市松模様に並んだレトロなタイルの一部分を持ち上げると、地下への階段が出現。

うっすら見える階段。下りると広々としたスペースが広がります

武器庫の様子は、実際に下りたときのお楽しみに。
スタッフ曰く「再現で地下に武器が置いてあるけど、本物じゃないから安心してね」とのこと。…よかったです。

スタッフの子が下りて見せてくれました
人1人が入れるタイル数枚分の入口なのがわかります


日本人ジャーナリストによる、テト攻勢当日の記事
当時、実際に現場で取材していたジャーナリストの故・友田 錫(ともだ せき)さんの記事があったので貼り付けさせていただきます。
ベトナム断想Ⅰ  テト攻勢 衝撃の一日

テト攻勢のとき、どうやって市内に武器を持ち込んだのかについて、上の記事では「旧正月の時期に街にあふれる花の荷車の下に、武器を積んでいた」と書いてあって、なるほど!と私も思わず膝を打ちそうになりました…たしかに現代のベトナムでもうまく紛れそうです。


メニュー

この店舗のメニューは、外国人客が多いこともあり小さくですが英語が併記されています。

☟ドリンクメニュー

ベトナムコーヒーやライムジュース、バタービールなどがあります
(クリックで拡大表示できます)


☟フードメニューほか

フードの看板メニューは、南部料理の焼肉プレート「コムタム(Com Tam)」。下の具材から好きなおかずを組み合わせて注文するスタイルで、お腹の空き具合に合わせて、おかず3品(Com 3 mon)、2品(Com 2 mon)、1品(Com 1mon)から選べます。

Suon = ポークリブ
Trung = 卵焼き
Bi = 豚皮
Cha = ひき肉やキクラゲ入りの蒸し卵


料理、ドリンク

それでは実際に注文してみました。

ライチの実がのったさっぱりとした「ライチティー(Tra Vai)」4万5000vnd(約260円)

お茶の入ったレトロな水玉グラスもかわいい

昔ながらのアルミのフィルター(Phin)で淹れる「ベトナムコーヒー(Ca Phe Den Da)」3万vnd(約170円)。ゆっくりとした抽出時間も楽しみながら、抽出後は氷の入ったコップに入れて氷を溶かしながらいただきます。

スープと漬物付き。チリ入りヌクマムをお好みで

ベトナム南部料理である焼肉プレート「コムタム」
具材は、リブ肉+卵焼き(Com Tam Suong Trung)」5万5000vnd(約320円)にしました。

具材選びに迷ったら、とりあえずはこの「リブ肉+卵焼き」の組み合わせが個人的にはオススメ。砕き米のご飯はさらっとして朝からでも食べやすく、ネギ油や卵焼き、味が染み込んだポークリブとよく合います。
(ほかの2店舗でも注文可。)

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近くの歴史スポットに寄り道

歴史好きな方なら、徒歩圏内にあるこの場所へ寄り道してみるのもありかも。今回のカフェから徒歩約6分、8月革命(Cach Mang Thang 8)通りとグエンディンチエウ(Nguyen Dinh Chieu)通りの角に、ある僧侶の銅像があります。

公園のように整備され、いまも多くの人が参拝に訪れているこの場所は、1963年6月11日、カトリック教徒だったゴ・ディン・ジエム大統領による仏教徒への宗教弾圧に対する抗議として、ティック・クアン・ドゥック(Thich Quang Duc)僧侶が焼身自殺をした場所。

当時このニュースは、炎に包まれる僧侶のショッキングな写真とともにたちまち世界に広がりました。さらに、ゴ・ディン・ジエム大統領の弟夫人であるマダム・ヌーが「単なる人間バーベキュー」と発言したことで、大炎上。政権への批判が集中し、同11月のクーデターでの失脚へとつながりました。

Thich Quang Duc Monument
住 
185D. Cach Mang Thang 8, Q.3, HCMC
MAP



カフェ休憩をしながら秘密の武器庫を見学するなど、歴史の荒波に翻弄されたベトナムならではの、興味深い体験を味わってみては。



Ca Phe Do Phu/カフェドーフー 

[Vo Van Tan 店]
 270 Vo Van Tan, Q.3, HCMC
 7:00〜22:00
 090・1808・898
 なし(祝日は休みの場合有)
HP

参考:
Bao Phu Nu
Vietnam Net


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