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結婚しなくても誰かと共に生きられる世の中になればいいのに、というはなし

***このnoteはドラマ『最高の離婚』『大豆田とわ子と3人の元夫』のネタバレを含みます***

10月の頭、TVerで配信されていた『最高の離婚』を見終わった。
坂元裕二の描くドラマが好きで、中でも最高傑作と呼ぶ人の多いこの作品は気になりつつも手を付けられていなかったので、期間限定無料配信はまたとないチャンスだった。

あらすじ

物語は、光生と結夏という一組の夫婦の離婚から始まる。
神経質な光生と大雑把な(おおらかな)結夏。毎日喧嘩ばかりの二人は、ある日衝動的に離婚届を書き、提出。バツイチとなった。

二人の近所には光生の元カノ、灯里と、その夫、諒が住んでいる。
一見仲睦まじい夫婦に見えて、諒は誰にでも優しい浮気性。灯里はそんな諒に気づきつつも見ないふりを続けている。

愛おしいけど、離れてしまいたい、憎らしいけど、離れられない。そんな二組の夫婦が、それぞれの関係に決着をつけるまでを描く。

『最高の離婚』感想

見終わった感想は「なるほどなあ」。

先に見ていた『カルテット』『anone』『スイッチ』『大豆田とわ子と3人の元夫』は、『最高の離婚』で提示された疑問、課題への答えだったのか、と、ストンと落ちた。

最終話、光生と結夏、灯里と諒の二組の夫婦は、それぞれよりを戻す。
相手の欠点には目をつぶり、少し自分を変えようと無理してでも、結婚という道を選ぶ。

それは一つには、そうしないと誰かと一緒に生きていけないからだ。
とりわけ灯里の決断は、「子供を産み育てるには最善の選択」。
諒の浮気性を許したわけでも信じ直したわけでもなく「現実的な選択をした」と語る。

誰かと生きていく手段として、この作品は、一旦は結婚を肯定したわけだ。


しかしそのあと坂元裕二のドラマ(他にもいろいろあるのは知りつつ、私が視聴したもののみ記す)は、『カルテット』『anone』と続く。

どちらも夫婦ではない、血の繋がりのない、ゆるやかで、でも心を許せる共同体での生活が描かれる。

さらに昨年のスペシャルドラマ『スイッチ』は、別れた恋人同士がなんだかんだと縁を切らず、お互いの恋人を紹介する会を開きつつ、必要なときには寄り添う様子を描いているし、

今年の春ドラマ『大豆田とわ子と3人の元夫』も、自立した女性が、ひとりでいたくないとこぼしつつ、最終的には誰かと結婚するのではなく、でも人とともに生きていくという選択をするさまが描かれた。

結婚じゃなくても、血縁関係がなくても、恋人じゃなくてもいいじゃん。

一対一がしんどいなら、心を許せて、たまに助けてくれて、そういう人が何人かいたらそれでいいじゃん。

坂元裕二の描く世界は、最高の離婚から8年を経て、そんな答えを出したのだ。

現実は厳しい

心を許せる人がほしい。
何かあったときにお互い支えになれる人がほしい。
できれば誰かと一緒に暮らしたい。
子供がほしい、子育てがしたい。

そうした願望は、誰もが少なからず、そしてそれぞれ形を変えて持っているものだと思う。

しかし現実に翻って考えてみると、今の私たちがその願望をすべてかなえるためには、まだ「結婚」というたった一つの選択肢が主流、というかほとんどそこに集約されていく。

心を許せる友人とのシェアハウスだって、契約結婚だって、緩やかな共同体だって、少し現実味を帯びてきたとはいえ、まだほとんどフィクションの中の出来事だ。
現実を見渡せば、婚活サイトの広告が溢れかえり、周囲の友人たちは皆「たった一人」を見つけて結婚していく。

でも私なんか、上に書いた願望を「たった一人」に全部かなえてもらおうとすることって、ものすごくハードルが高いように思ってしまう。

まず、何かあったときに支えてもらえるほど、心を許せる人ってそんなにたくさんいない。

そしてその数少ない「心を許せる人」と、家族観、金銭感覚、生活の感覚(几帳面さや衛生観念など)、人付き合いの感覚……その他もろもろ、いわゆる「価値観」が全て一致することはまずないし、
その中にどうしても我慢のならない点があれば、一緒に生きていくのはなかなか苦しい。

加えて相手と子供に関する考え方(自分の子供が欲しいと思うかどうか、子育てをしたいと思うかどうか)が一致しないことだってざらだろうし、
さらには経済状況だって大きく影響するだろう。

もちろん、全部叶えられる相手を見つけられる人もいると思う。
私の周囲で結婚している皆さんはきっとそうなんだろうなと思うし。

でも正直、私みたいな、七面倒くさくて(感情を深堀して説明しようとする癖がある、一緒にいたら面倒だと思う)そのうえ生活に対して怠惰な人間は、ちょっと遠い目をしてしまう。

そんな人、見つかるかな。
そんな人が私と一緒に生きようとしてくれるもんかな。

誰かと生きる未来へ

だから思うのだ、いいとこどりできる世界になったらいいのに。

一緒に生活しなくてもちゃんと支えあって心を許せる人がいて。

子供を育てるのだって、一人じゃ何かと厳しいから、夫婦じゃなくても、同性同士でもいい。同じ希望を持つ人たちが協力し合って面倒を見て。

夫婦や血縁や従来型の家族に縛られず、それぞれの人が支えあって自分の人生でやりたいことを達成できるようなそんな世界。

もちろん、現実的にそんな形をつくるのはいろいろと厳しいのかもしれない。法律で縛られているからこそ守られるものもあるだろう。

でも、スマホを開けば婚活サイトの広告が表示され、結婚だけが唯一の幸せみたいにPRされるこの状況は、なんかもう違うんじゃないかという気がしてしまう。

『カルテット』『anone』『大豆田とわ子と3人の元夫』で描かれたような家族が一般的に許される世の中になればいいのになあと割と本気で思うのだ。

追記

書きながら、この理想形態はどこか『フルハウス』『フラーハウス』に通じるところがあるなあと思った。あの作品は結婚を一つの幸せの形にしてはいるけれど。昔から大好きな作品の一つです。


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