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記事紹介:小さな火種がくすぶり続けている「慢性炎症」

今日は慢性炎症に関して書いている記事を見掛けたので紹介しよう

記事では恰もコロナ後遺症の原因が全て慢性炎症の様に書かれている部分もあり、それは正確ではないのだが、原因の一端が慢性炎症と関連している部分があるのも事実だろう。一方で慢性炎症というのはその定義から機序に至るまで不透明な部分がある現象でもあり、深く理解することが非常に難しい。その点に関しては、この様な記事を参考にして概要を掴む事から始めるのが良いだろうか。

記事ではまず炎症の分類として以下の2種類を紹介している。

●急性炎症 外敵を排除したり、外傷を修復しようとする過程で起きる炎症反応。比較的短期間で治まる。

●慢性炎症 全身の臓器などに起きる持続的な弱い炎症。自覚症状は少なく、長く続くと臓器の機能が損なわれる。

急性炎症というのが一般的にイメージされる免疫応答かも知れない。新型コロナウイルス感染やワクチンの副作用で強い発熱が生じる事などは急性炎症の一部である。一方で慢性炎症というのは急性の強い炎症が収まった後も持続的に続いている炎症反応の事である。本来免疫学的に問題が大きいのはこちらであるのだが、一般の人は自覚症状として出やすい急性炎症のみに注目して物事を考えることが多い。コロナの急性症状が出なくなったから安全とか、ワクチンの副反応が収まれば問題は無いとか、そういう誤解が長期的影響を正しく評価できない原因となるのだ。まずは記事にある様な長期的な炎症反応という現象と、それに伴う問題点を把握することが必要だろう。

記事の締めくくりではコロナ後遺症について以下の様に考察している。

コロナ後遺症も、ウイルスが検出されなくなり急性炎症が治まっても、炎症が慢性化して体調不良が続いている状態と考えられます。新型コロナは無症状や軽症の人も多いので、知らぬ間に感染し、無自覚なまま回復したものの、慢性炎症に陥って不定愁訴を招いている人もいるかもしれません

コロナ後遺症の内どのくらいが慢性炎症に起因しているのかは別の問題であり、必ずしもこれが正確という事ではないのだが、概念的に真実の一端を記述しているのは間違いない。また、ウイルスの潜在的・持続的感染がそのまま慢性炎症の原因となっている可能性も高いだろう。他方で、ウイルスが排除された後でも、急性炎症による組織障害が深刻であったために慢性炎症が続いてしまうという状況もあり得る。生理的に考えられる機序というのは非常に多様であり、そこに慢性炎症そのものの定義や機序という難しい問題が絡んでくる。

慢性炎症というのは一言で言えば持続的燻ぶる炎症というイメージで書かれてきたが、実際に「これが慢性炎症です」という現象を説明するのは難しい。弱く続く反応であるため、細胞がどのくらい活性化・浸潤していれば慢性炎症であるとか、サイトカインがどの程度出ていれば慢性炎症であるとか、定義することが難しいのだ。一方で、慢性炎症の結果としては記事にあるような組織障害が確かに現れるため、無視していい状態ではない。

慢性炎症の機序についても不透明な部分は多い。というよりも、あらゆる細胞があらゆる組み合わせや状況に応じた反応で関与しているというのが正しい印象である。急性炎症時とは役割が変わってくる細胞やサイトカインなどもあり、理解も難しい。ここで詳細を説明し始めると長くなってしまうので、まずは慢性炎症の存在とイメージを掴んでもらえれば幸いである。

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