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読書記録

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感想文を書くのはなかなか苦手なのですが極力書くようにしています。
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#読書

フランクルの人間観と思想をもっと知る(知の教科書フランクル・諸富祥彦)

ヴィクトール・フランクルの本は「夜と霧」「それでも人生にイエスと言う」を読んだがそれらには書かれていなかったことが多く書かれていた。 フランクルが取りあげられる際にはアウシュビッツの強制収容所での出来事にスポットがあたるが、提唱したロゴセラピーや実存分析は収容所に送られる以前から考えられていた。それよりももっと驚くのはフランクルが4歳のときに「生きる意味への問い」に目覚めたということ。 この本は、大きく分けて2部構成になっている。 ◆第一部 フランクルの生涯と思想形成

フランクルの思想を楽しく学べる「君が生きる意味」(松山淳)

生きることや店長の仕事で悩んでいる主人公の青年。 その前に突如現れる謎の「小さい変なおじさん」。 その変なおじさんが、青年に「ヴィクトール・フランクル」の教え(思想)をユーモアやギャグをもって教えを説いていくという物語。 ヴィクトール・フランクルとは、ナチスの強制収容所での体験記「夜と霧」で有名な精神科医。 少々難解なフランクルの教えを青年を事例としてバサバサとわかりやすく教えてくれる。 フランクルといえば、 自分が「生きる意味」を問うのではなく、「生きること」(人生)が

藤井総太は、こう考える(杉本昌隆著)

金、権力、成功などを手に入れた人を羨むことをなかれと言われれば受け入れられるかもしれない。だけど、好きなものに出会えた人は羨ましいと思う。 今年は遂に八冠を達成した藤井総太氏。 彼の思考や精神について師匠の杉本昌隆氏が書いた本を読んでみた。 強い理由とは、常に将棋のことを考え、研究をしていること。 そこには集中力、構想力があり、探求心がある。そして常に平常心を保っている。しかし、その姿は「努力」というものとは少し違うもののようだ。 将棋が好きで、将棋と共にいることが幸せで

全ては推しと共に(「推し、燃ゆ」・宇佐美りん)

21歳が書く「推し、燃ゆ」。なんで芥川賞を受賞したのだろうかと思っていたが、ようやく読んでみた。 “推し”という言葉が一般化されたのはいつ頃だろう。 主人公の女子高生が推しているアイドルがファンを殴ってしまう。 そしてネットが炎上するところから始まるが、最終的に「推し、燃ゆ」とは違った意味で完結する。 学校生活は勉強も人間関係もうまくいかない。家庭の人間関係もあまりよくない。しかし、生活は「推し」がの中で充満している。起きてから寝るまで。バイトでお金を稼ぐのも「推し」の

リカバリー・カバヒコ(青山美智子)を読んで

青山美智子さんの新刊「リカバリー・カバヒコ」を読みました。 公園の古びたカバの遊具、自分の怪我とか病気とか治してもらいたいところを触ると回復するという。 ※以下若干ネタバレあります。 とあるマンションに住む人々で綴る5つの短編集。 中学のときは優秀だったが高校に入って成績不振に悩む高校生は「正直であること」の大切さに気づき、 ママ友たちとの人間関係に悩む元アパレル店員は関係づくりが大切なのではなく「大切なことははっきりと言葉にすること」と気づき、 ストレスで休職中の女

少年探偵団・怪人二十面相(江戸川乱歩)

子供の頃は(大人になっても?)あまり本を読まなかったと思います。(漫画はよく読んだが) 親は活字の本ならなんでも買ってくれると言ってくれていたが読みたくなかったんだから仕方ない。(ズッコケ三人組シリーズは買ってもらって読んでた記憶がある) どこの学校の図書室にも必ず置いていたであろう江戸川乱歩は知っているけど読んだ記憶がないのです。もちろん怪人二十面相なども名前は知っていますが、恥ずかしながら内容は知らない・・・ ふと先日新聞で紹介されていたのですが、こんな中年になって読ん

「赤と青のエスキース」(青山美智子)

こう来たか。 帯に「仕掛けに満ちた傑作連作短編」と書いているとおり仕掛けがたっぷりでした。 青山美智子さんの本はいろいろと読みましたが、この作品は他の青山さんの本とはちょっと違う雰囲気を醸していたのでなんとなく後回しになっていました。 しかし、他の作品とは少し毛色が違うもののやっぱり青山さんワールドでした。割と短編ですがいつものようにメッセージが詰め込まれていて良い本でした。 50歳を過ぎても恋愛をして活き活きと生きる人。絵描きにはなれなかったけど、額縁アーティストにな

「それでも人生にイエスと言う」を読んで

前回の記事でヴィクトール・E・フランクルの「夜と霧 新版」について書きましたが、もう少し深く知りたいと思い、同じくフランクル著の「それでも人生にイエスと言う」を読んでみました。 著書とはいえ、この本は1946年に行われた講演がもとになっていますが、アウシュヴィッツ強制収容所での体験をもとに、精神科医、心理学者らしく生きる意味について分析された学術的、哲学的な内容になっていました。 「夜と霧」より深い内容で面白いのですが、なぜか読みにくかったです。個人的なものかもしれません

極限の状況の中で生きる意味を考える <「夜と霧」を読んで>

今回は読書記事です。 今回読んだ本は、あの「夜と霧」(新版)(ヴィクトール・E・フランクル/池田香代子訳)(みすず書房)です。 この本は「言語を絶する感動」と評され、20世紀を代表する本とも言われています。随分前から知っていましたがようやくこの歳で読むことができました。 初版は1947年ですが、今回読んだものは1977年に新たに手を加えた改訂版を出版された「新版」の翻訳版です。 (旧版は霜山徳爾訳)心理学者、精神科医だった著者ヴィクトール・E・フランクルは、1942年第

「嫌われる勇気」感想⑤(最終回)人生とは何か。

いよいよ今回で「嫌われる勇気」レポート?感想文?最終回です。 この本に登場する青年は考えました。 前回の終わりに共同体感覚が重要ということだったが、それだけでいいのだろうか? 自分はもっとなにかを成し遂げるために、この世に生まれてきたのではないかと・・・ 青年は自意識過剰なため、人前で自由に振る舞うことができないと哲人に思いを伝え、どうすれば克服できるのかという話になります。 その答えは、 自己への執着を、他者への関心に切り替えること。 重要になるのが、 「自己受容」

「嫌われる勇気」感想④ 世界の中心はどこにあるのか

自分と他者(世界)の関係はどう考えればいいのか。 他者が気になって仕方が無い人は、他者の事を考えているというのか、 それとも自分の事を考えているのか。 どうすれば自信をもって生きていけるのか。 今回はそんなことがテーマです。 1.個人心理学アドラー心理学の正式名称は「個人心理学」といいますが、これはどういうものなのか? 人は人、自分は自分と、自己中心的とか個人主義というわけでは無いのです。 「人間をこれ以上分割できない」という意味で個人心理学と言っています。 例えば、

「嫌われる勇気」感想③ 自由に生きるために!ついにあのキーワードが登場

第3章(第三夜)前回では、「すべての悩みは対人関係」であるということで、劣等感に関することを考えるうえで、いかに自分に問題があるかということを示しました。 今回はさまざまな時に起きる「他者に認められようとする心」のアドラー流の解釈です。 ①「他者の課題を切り捨てる」 人は誰しも他者から承認されると嬉しいもの。 そうすることで自分に価値あるものと認識することになります。 しかし、認められよう、承認されようと思っていると、承認されなかった場合に不満という気持ちが起こります。

「嫌われる勇気」感想① このタイトルは損しているのか、得しているのか?

このタイトルから「他人に嫌われても自分を主張しろ」という内容だと勝手に思い込んでいました。 しかし、早計でした! それは、この本で書かれているアドラー心理学の中の一部で「嫌われる勇気」も必要という解釈があるだけだったのです。 この本、アドラー心理学が本当に言いたいことはそこだけではないことは本を最後まで読むとわかってきます。 それにしてもこのタイトルの付け方、誤解をされることもあるので損しているのか得しているのかわからないですね。 けれど、結果ベストセラーになったのだから得

「維摩経」をできるだけシンプルにまとめました

日本の仏教のお経といえば般若心経や法華経などが有名ですが、この「維摩経」(ゆいまきょう)は今一つ人気はありません。 しかし、仏教伝来間もない頃から広く親しまれ、聖徳太子が著した「三経義疏」の中の一つでもある立派な経典なのです。 内容は戯曲のようなストーリー仕立てになっているのですが、内容を理解するのはなかなか難しいのです。(個人的に) ただ、前半の釈迦の弟子を在家の維摩がやりこめるという件は「なんだこの話は?」と、誰でも興味をそそるのではないでしょうか。普通は釈迦の弟子のあ