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首根っこ掴まれてブンブン振り回された挙句、なぜかちょっと気持ち良くなる映画【後編】

note書き続けるのって結構大変なんですね…みんなすごい。
というわけで本編れっつごー
…の前に本文はネタバレを含むので良い子は【前編】から読んで下さいね。

なぜ私は気持ち良くなったか

恐らく、今作を見終わった瞬間ほとんどの人が得体の知れない気持ち良さを感じるのではないだろうか。これは何なのか。

この映画は得られるカタルシスがハンパではない。しかし、そのカタルシスを得た瞬間映画が終わってしまうのだ。無情なくらいあっという間に終わり、気持ちを整理する時間が無い。
それでも何かヤバい物を見てしまったようなゾクゾクした気持ち良さがあった。

他の映画で例えるなら「真実の行方」(注1)を見終わった時の気持ちに近い。
何がそうさせるのか、その理由について迫っていきたい。

(注1)映画「真実の行方」は、俳優エドワード・ノートンの存在を世に知らしめた作品。私はこの映画でエドワード・ノートンにハマった量産型である。もし、この映画を多感な思春期に見ていたら、エドワード・ノートンに影響され過ぎてヤバい子に育っていた可能性が高い。ラストシーンのリチャード・ギアの後ろ姿といい、とにかく後味が味わい深い。

1,フレッチャーとの意思疎通

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まず触れておきたいのはやはりこれだろう。
【中編】で説明した極悪非道なフレッチャーが主人公と意思疎通する(厳密にはしたと思われる)シーンがある。フレッチャーに首根っこ掴まれた身としてはこれはデカい。
「なんだ、あんだけ尖ってたのに結局和解かよ、、」と思う人もいるだろう。
その気持ち、よく分かる。
ありがちな勧善懲悪な物語や、ハッピーエンドは私も好きではないので。
でも正直「セッション」は和解までは描いてないんですよ。ここがミソ。
なんか沸点の合う物同士で勝手に解決した、みたいな感じ。

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強者のみが分かる境地だ(ドヤァ)みたいな感じで鑑賞者が置いてけぼりを食らう図式ですね。私がまさに「行き過ぎプロフェッショナル系」に求めていた物なんですよ。狂気に身を委ねる人たちの世界を垣間見れた気がして。

2,努力と才能の衝突

永遠のテーマですよね。
才能と努力の対比。
少年ジャンプを読んで育った私は、努力は実る物と信じて止みませんでした。
しかし、逆上がりや二重跳びが得意な子の存在がその信念を揺らがせるのです。

…というように、誰しもが才能に打ちのめされた経験をお持ちのはずです。
とりわけ芸術に関してはそれが顕著で、ある一定のレベルになると「センス」という先天的で不明確なパラメータが必要不可欠になると聞いたことがあります。

「セッション」では主人公が文字通り血の滲むような努力でドラムを叩きます。

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一瞬、「あれ、何の映画見てんだっけ…」ってなります。
ジャズって血出るんだっけ。

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あー、そうそう。ジャズって血出るやつだったな、となります。

狂気に身を委ねた主人公が、努力で才能の世界に肉迫していく姿にはやはりパワーがあります。私のような小市民には尚更です。

ちなみに今作は、映画好きからは好評で音楽関係者からはぼちぼちの評判の様ですが、一部の音楽関係者の方々は今作を見て
「音楽は才能の世界であり、この映画は音楽に打ち込む人に誤解を与える可能性がある」という身も蓋もないコメントをしたという話も。
それだけ才能主義の世界で、鬼教師の暴言に耐え、可愛い彼女(注2)まで捨てて、血を流して、わずかな可能性を必死に掴みにいく主人公の姿は良くも悪くも鑑賞者の何かを揺さぶるに値するものだと思うのです。

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それゆえにラストシーンでは、その努力が報われたとも取れる演出に唸らずにはいられない。というか、もうどうにかポジティブに終わってくれと願ってた。

(注2)主人公の彼女役で出演しているメリッサ・ブノワは本当に可愛い。
しかしながら、作中ではとても不憫な役となっている。
長々と今作を絶賛しているが、この点に関してのみ私は納得がいっていない。


という様な感じで、私は観賞後気持ち良くなってしまった。
簡単にいうと圧倒的展開の応酬により鑑賞者としての余裕が無くなっていき、
気付いたら自分よる遥か上の高みにて物語が完結しているという。

これはnoteをやっていても思うことなのだが、
何かに偏愛・没頭している人の世界や言葉はとても面白い。
この作品も似た様なものを感じる。
それが「セッション」の面白さの一つであり、
「行き過ぎプロフェッショナル系」の醍醐味なのだと思う。

余談だが私自身学生の時かなり厳しい吹奏楽部に所属しており、
作中のシーンのいくつかにはその頃を思い出させる物もあった。
私は懐かしーくらいにしか感じなかったが人によっては当時のトラウマが
蘇る可能性もあるかも知れないので鑑賞については十分にご注意されたい。


これにて3編完結です。
支離滅裂、自己満足、浅学非才を体現した様な物になっていますが
ここまで読んでくださった貴方は博愛の心をお持ちに違いないでしょう。
ありがとうございました。

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本記事には、筆者の私見が含まれます。記事内容の扱いには十分ご注意下さい。

画像出典:IMDb

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