見出し画像

【映画感想】Oppenheimer

□映画

(注意)以下は日本語字幕は対応していません.
Oppenheimer [4K Ultra HD] [2023] [Region Free]
Oppenheimer [Blu-ray] [2023] [Region Free]

□感想

ようやく日本でも公開になった,Oppenheimerを観てきたので感想を共有したいと思います.
あくまでも,一個人の感想でありますが,参考になったらと思います.

やはり現代は原爆の歴史からきちんと学んでおらず、科学者、特に組織のトップ、教授になると、自ら手を動かすことはほぼなくなっており、組織運営をメインにしています。

現在、大学や研究機関は、競争的資金がメインになったことや、国が運営する大学ファンドなどがあるように、国や企業にいかに認めてもらうかを意識するのが中心で、それを主導している教授陣は、ほとんど政治家、すなわち、Oppenheimerの立場とそれほど変わらないでしょう。

その結果、映画で描かれるOppenheimerのように、せっかく若くして偉大な功績を残した実績ある科学者であり、さらに科学的貢献をできたはずなのに、
そのうちに、若手科学者からは議論にならないと見放され、その一方で、その権威を利用したい組織に都合よく賞賛され、飴を撒かれながら利用されるということになります。

このままでは国、組織にとって、都合の良い科学に再びなってしまうかもしれません。

それは、ビジネス(ここでの意図は、金儲けや権威誇示のための道具)として利用されるだけでなく、戦争、特にAI技術なども利用した攻撃、ドローン・ロボット攻撃、生体兵器による攻撃、サイバー攻撃、また再びの核兵器使用といった最悪の事態すらも招くかもしれません。

さらに,私はその分野の専門外である国家(政治家や軍),企業が資金提供を理由に介入することは,研究者コミュニティに対するダメージも相当大きいように思います.
その資金提供者の方針によって定められた人事や,テーマ決定によって,研究者間の断絶を招きます.特に教授といった重鎮は研究者間にとってのハブであり,研究者同士を繋ぐ大切な役割を担っているため,ここに介入されると,ハブが狂って,その分野に所属する研究者のネットワークが狂ってしまいます.そして,研究者の好奇心で行われる純粋な科学的発展,イノベーションが阻害されていくのは容易に想像がつきます.

 また,原爆によって生じた問題は,作った科学者の責任ではなく,利用する側の問題でしょう.
この点に関しては,話題になった映画「Winny」で描かれている金子勇氏が陥った体験に類似するものがあります.ぜひ合わせてこの内容もチェックしてみてください.

もっと学問、科学は自由であるべきでしょう。

EinsteinがOppenheimerにコメントするシーンが何度もあるのですが、Einsteinの忠告を聞いていると泣けてきました。

Einsteinは、
賞賛は賞賛したい人のために受ける、
賞賛された時ほど、集まってくる彼らはその実績を利用したいだけなのだ、
その実績には罪が伴う
その罪を返していかなくてはいけなくなる
とまで語っていました。

Einsteinはもっと自分の探求したいことがあったのだろうとも思います。それを犠牲にしてまで、爆弾を作るべきだったのかと。当時の情勢も相まってこの辺りは複雑な心境だったに違いありませんが。

これからインターネット,第4次産業革命によって,再び私たちはこの危機に晒されていると感じます.
同時に,個人での事業や,フリーランスの増加などの脱組織化のトレンド,より個人が主流となる時代もやってきていることも感じます.

我々はより学びを深めて,本当の意味での社会貢献,地球や人類にとって大事なこと,何より自分にとって大切なことに向き合う時間をきちんと作っていきたいと思いますね.
具体的には,これを学ぶキーワードとしては,道教をはじめとする東洋思想や,アフリカ哲学,チベット仏教などをより深める必要があると感じています.

ここまでほとんど内容の話だったので,最後に映画の演出についても少し触れておきます.(より細かいところはぜひ観て感じていただきたいですね.)
Oppenheimerの心情を表す,役者であるCillian Murphyの表情豊かな演技,そして,場面に合わせた爆弾と心音を思わせるような音楽がとてもリンクしており,鑑賞していく中で,Oppenheimerに益々引き込まれていきました.
また,個人的には時々現れる陽気なFeynman,ボンゴ演奏,あれほど注意されているのに肉眼で原爆の光を見に行っちゃう好奇心溢れる所にも注目です.

素晴らしい映画でした.
ぜひ,皆さんにお勧めしたい映画です.

□紹介した映画

(再注意)以下は日本語字幕は対応していません.
Oppenheimer [4K Ultra HD] [2023] [Region Free]
Oppenheimer [Blu-ray] [2023] [Region Free]

予習や復習になるであろう本も挙げておきます:

American Prometheus: The Triumph and Tragedy of J. Robert Oppenheimer
Kai Bird (著), Martin J. Sherwin (著), 2023/6/15
Atlantic Books

日本語版
オッペンハイマー 上 異才 (ハヤカワ文庫NF)
オッペンハイマー 中 原爆 (ハヤカワ文庫NF)
オッペンハイマー 下 贖罪 (ハヤカワ文庫NF)
カイ・バード (著), マーティン・J・シャーウィン (著), 河邉 俊彦 (翻訳), 山崎 詩郎 (監修), 2024/1/22
早川書房

映画Winnyも挙げておきます:
Winny

#鑑賞日
24/03/29

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?