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いじめ防止の3R|認識する(Recognize)

 いじめを防止するためには、いじめとは何かということを知り、その現状を適切に把握することが大切になります。この note の記事では、学苑社『いじめ防止の3R』をもとに日本の状態を加味して作成したスライドに解説を交えながら、いじめ予防について考えていきたいと思います。
 「いじめ予防の3R」の最初のRは、Recognize(認識する)のRです。いじめについて正しく認識することは、いじめの防止や対応になくてはならないことです。今回は、日本におけるいじめの現状をふまえながら、いじめの定義やいじめのタイプ、いじめの影響などについて解説します。

1. 日本におけるいじめの定義とキーワード

  学校や地域でいじめの問題に取り組むためには、「いじめ」の定義が大切になります。いじめ問題が明らかになることで、いじめの加害者に話を聞くと、「いじめているつもりはなかった」「冗談でやっていた」などという主張を耳にします。実際は、加害者にはいじめていたという認識があると思いますが、そのように言い逃れは「いじめの捉え方の個人差」を盾にしようとしている言動だといえます。しかし、このような言い逃れは「法的な定義」の前には無力になります。

いじめ防止推進法第2条|定義
児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している当該児童等と一定の人間関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

 いじめ防止推進法第2条においては、「いじめられている子が心身の苦痛を感じている」という状態がいじめであるということを明言しています。つまり、加害者側の「つもり」というのは、いじめであるか否かの判断理由にはならないということです。
 また、いじめ防止推進法第4条においては、「児童等は、いじめを行ってはならない」と明確に「いじめの禁止」が記載されています。

 いじめの定義の他にも、いじめを定義するための共通したキーワードについて紹介したいと思います。

キーワード1:持続
 いじめの行動的な特徴は「持続」にあります。いじめは個人に対して繰り返されるため、いじめの被害はより深刻化していきます。この持続を素早く断ち切るためには、早期発見と早期介入が何より大切になります。

キーワード2:被害者の苦痛
 いじめは被害者が苦痛と感じたら「いじめ」であることは法的根拠もあります。しかし、いじめの苦痛は、いじめられている時だけではなく、いじめから解放されたり、距離をおける環境や年齢になったとしても、引き続き苦痛を感じ続ける人も多くいます。いじめ問題は、いじめそのものを行わせないことだけが解決ではなく、被害者の長期的な心のケアも大切になります。

キーワード3:被害者の望まない行動
 
いじめの定義に関する中核的な要素は「被害者が望んでいないこと」です。被害者が望んでいないことはわからなかったと言う加害者がいますが、それは絶対にありえません。持続的に行われる行為のなかで、被害者の多くは抵抗を示していたり、それらを積極的には受け入れていません。言われなければわからないという加害者側の心理を学校関係者が積極的に支持するのだけはやめて頂きたい。

キーワード4:支配関係
 
いじめの加害者と被害者の間には支配関係があります。多くの場合は、複数の加害者が特定の個人や小集団を支配対象かのように、命令したり、従わせたりする関係性があります。しかもそれらの命令や指示は理不尽なものが多く、被害者にとっては苦痛を伴うものです。加害者自身がそれを命令されたら従うのかということを考えれば、「いじめているつもりはなかった」とは言えないと思います。

2. いじめのタイプと影響

 いじめには様々なタイプがあります。「いじめ」という言葉が使われ続けることで本質が見えなくなっている現状がありますが、この記事ではあえて「いじめ」と表現しながらも、「攻撃行動」の枠組みで捉えていきます。
 攻撃行動は大きく分けると「身体的」「言語的」「関係的」の3つのパターンに分けられます。スライドには「社会的」「感情的」というものを加えていますが、これらは関係的攻撃(または言語的攻撃)に含まれるパターンです。また、所持品の破壊は攻撃行動というよりは犯罪的な行為にもパターン化される行為です。インターネットの普及により、ネットいじめも深刻化しており、学校関係者や親が確認し辛い状況があります。

 いじめ被害を受けることで様々な影響があります。自尊心が低下し、気分の落ち込みから抑うつ症状や不安症状も現れます。そして、自死という結果を招いてしまうことも私たちは多くのニュースで知っています。
 学校現場や家庭では、これらの症状をいち早く見つけることが鍵になりますが、こどもたちの中には「親には知られたくない」と思ってしまう子もいます。いじめの被害にあうと、スライドに示されているような様々な認知能力や作業能力が低下しますので、それらの状態の変化に気づいたら、学校での様子を確認してみることが大切になります。

3. まとめ

 いじめの予防と対応を適切に行うためには、「いじめ」の定義やそのパターンと影響を具体的に知ることが大切になります。いじめ被害者が望まない行動を持続的に攻撃されているわけですから、いじめは「遊びの延長線上」で発生したという認定ではなく、「攻撃行動」として対処すべきです。よく、いじめのニュースを見ていると、学校関係者が「気づかなかった」や「いじめとは思っていなかった」という見解を発表していることを観ますが、「そんなはずはない」ということは、誰もが思うことなのではないでしょうか。そして、いじめが明らかであるにも関わらず、それを頑なに認定しないことも見聞きします。まずはどうしたら、いじめを認定できるようになるのかということを、引き続き考えていきたいと思っています。

心理学の知識を楽しくご紹介できるように、コツコツと記事を積み上げられるように継続的にしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。