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初恋を覚えていますか?

皆さんは初恋を覚えていますか?

日常の全てに恋のフィルターがかかっていて
彼の言葉に一喜一憂していた淡い思い出。

3/6に発売した3rd mini album「いまさら、君に」の収録曲から
今回はこの曲の元となった切なくも優しい恋のお話をさせて下さい。


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気付いたら彼に恋をしていた



眩しい太陽が教室の窓から入ってくる
少し肌寒かった夏服も
丁度いい季節になってきた

金属バットの“カキーン”という        甲高い音が校舎に響いて
私は窓に駆け寄った

勢いよく走り出した彼を目で追った

普段は見ない真剣な顔つきに
胸の奥がぎゅっと締め付けられる

私は、彼に恋をした 

好きになったきっかけは
本当に些細なことだった

クラス替えの初日
席が近い同士という理由で
良く話すようになった男女グループの中に
あの日校舎の窓から見た、野球部の彼がいた

私達は、授業中に手紙を回しあったり
好きな芸能人の話をして盛り上がったり
時が経つにつれ
どんどん仲良くなっていった

私はその中でも特に彼と仲が良かった

忘れ物を貸し合ったり
他愛もない話で笑い合ったり
内容のないメールのやりとりも
毎日途切れることなかった

そんな私たちを見た
周りの友達からは

「あいつと付き合えば良いやん!」

と言われることもあった

その度に、何故か胸が高鳴って
恥ずかしくなってくる

初めての感覚に焦った私は

「ただの友達やから!」

と答えていた

自分でただの友達だと否定したくせに
友達と楽しそうに笑っている彼を見て
さらに鼓動は高まっていく

「私、彼のこと好きかもしれない」
と思い始めたのはこの頃だった


離れていても繋がっている気がした


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家族でご飯を食べ終えた後
リビングでぼーっとお笑い番組を見ていた時
彼からメールが届いた

「今、何してるー?電話しよ!」

彼からの連絡に鼓動が少し速くなる
そんな自分に恥ずかしくなった

「いいよー!」
と文字を打ちながら
急いで自分の部屋に入った

誰にも聞こえないように
布団を頭の先まで被せて
彼と電話を始めた

「もしもし、何かしてた?大丈夫?」

いつもより低い声の彼に
ついドキッとしてしまう

「何もしてない〜、テレビ見てた」

私は緊張している自分を隠して
平静を装った

いつも教室でしている
他愛ない会話が続いていく

そこから彼の部活の話をしたり
好きな音楽を語り合ったり
普段よりも少しずつお互いを知って
私達の会話は止まらなかった

気付けば深夜2時を回っていて
だんだん眠気が襲ってくる

「眠い?もう寝る?」

「眠くない!」

お互いこの会話を繰り返して
電話を切ることはなかった

ゆったりと相槌の数が減っていき
電話の向こう側から寝息が聞こえる

私は熱くなった布団から頭を出した
窓の外は薄明るくなっていた

「え!もう朝になってるー!」

驚いた私は一気に目が覚めて
彼にそう伝えると
眠そうな声で笑った

同じ場所にはいないけれど
窓から見える景色を彼も同じタイミングで
見ているんだなと思うと
まるで隣にいるみたいに
彼を近くに感じて嬉しかった

この日をきっかけに私達は
より距離が縮まり、電話の回数も増えていった

そしてこんな日々がいつまでも続いていくと
思っていた


それから1ヶ月ほど過ぎたある日のこと
プール終わりの授業中で
大半の人が眠気に襲われていた

眠気を耐えるように誰かが
手紙をまわし始めた

また始まったよ、、と思いながら
前の席から回ってきた手紙を開いた

そこには
「好きな人ぶっちゃけよ〜!」
と大きく書かれていた

その下に小さく彼の字で
「彼女できた」と書かれていて
皆んなからのお祝いコメントが
沢山寄せられていた

いつもふざけて回していた
手紙に手が止まったまま
私は何度も文字を読み返す

耳の後ろから頬にかけて
熱くなって顔が赤くなる感覚が
自分でも恐ろしいほどに分かった

やだ、こんな格好悪い姿を
誰にも知られたくない!

そう思った私は止まった手を
無理矢理動かして
皆んなの寄せ書きに紛れるように
「おめでとう!」
と小さく書いた

どんどん回っていく手紙に
照れ臭そうに彼の口元が緩んでいた

昨日まで近くにいたはずの彼が
友達より離れた存在になった気がした

幸せな日々は続いていく
と勝手に思い込んでいた
こうして突然、終わった

それから案の定
彼からの連絡もだんだん少なくなっていって
私も彼への気持ちを隠したまま
毎日少しずつ距離を置いていった


綺麗に消えた花火とあの日の片思い


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あれから学年が上がり、彼ともクラスが離れて
本当に一言も交わすことがなくなった

彼女と別れたらしい
と風の噂で聞いていたけれど
私も彼もお互いに連絡を取り合わなかった

あっという間に卒業を迎え
別々の道を進み
彼への恋も消えかけていた頃


私達は1度だけ再会した


それは高校2年生の夏のことだった

友達とお気に入りの浴衣を着て
地元の花火大会に出かけた

浴衣と合わせたネイルや
綺麗にセットした茶色い髪
沢山練習したメイクも上手くいって
いつもとは違う夏が来る予感がした

沢山の人で溢れる屋台の道を抜けて
花火がよく見える河川敷へ向かっていた時

突然、後ろから名前を呼ばれた

「やっぱりそうや!久しぶり!」

びっくりして振り返ると
満面の笑みで私に手を振る彼がいた

「うわ〜、久しぶりやな!会えると思ってなかった」

驚いた顔で彼を見つめたまま
私は立ち止まった

背が伸びて大人っぽく見える彼に
少しだけ胸が高鳴った

「良かったら一緒に花火見よう!」
その彼の一言で私達と彼の友達と
4人で花火を見ることになった

ゆっくり歩きながら
彼の友達が買ってきてくれた
サイダーを片手に花火がよく見える
場所へ向かった

河川敷に到着した後
浴衣が汚れないようにと
彼は羽織っていたシャツを
地面に敷いて座らせてくれた

何だか急に女の子扱いされてみたいで
照れくさかった

「もうすぐ花火が打ち上がります!みんなでカウントダウンしましょ〜!」

と会場アナウンスが流れて
周りの声が一気に湧き上がる

「今日会えてめっちゃ嬉しい!元気かな?って毎日考えてたんやで。」

皆んながカウントダウンを始めるなか
小さな声で彼が私に話しかけた

その声が電話の時に聞こえていた
低い声と同じで一気に片想いしていたころの
記憶が蘇ってくる

「私も」

彼が私のことを考えてくれていた理由は
友達だからとかどうであれ
その言葉が嬉しくて俯きながら
口元を緩めた

ひゅーっと花火が登っていく音が聞こえて
私は顔を上げた

カラフルな花火が次々と打ち上がって
みんなで拍手しながら空を眺めていた

隣で歓声を上げている彼の姿を見て
何だかすごくホッとした

切なく散った片思いだと思っていたけど
今日、彼と会ったおかげで
あったかく優しい思い出に
変わった気がした


「たった一言の境界線」


元々はSeikeさんと別タイトルで
作っていたこの楽曲に恋の甘酸っぱさを
足していき、完成しました。

片想いは、切なさだけが生まれるのではなく
好きだと思える人と出会えた
という素晴らしさも感じられる
素敵なものだなと思います。

そして相手に好きだと伝えなければ
相手の本当の気持ちを知ることが
絶対にできないという難しさもありますよね(笑)


全力で好きだと言える人と
出会えた頃を思い出しながら聴いてほしいです。


・各種配信サイトへ

・3rd mini album「いまさら、君に」


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saki(secondrate)
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