見出し画像

NPOの給料のハナシ

このnoteはstand.fmで公開されている「NPOではたらくをアップデートする」で公開した内容を文字にしたものです。企業からNPOに転職することを検討している人の団体選びの目線でお話しております。

私が10年勤めた企業からNPOに転職したのが2010年のころです。今(2021年)から11年前で、私は34歳でした。その時の給料が23万円×12か月=276万円でした。年度末に利益があれば報奨金として追加で支給されましたので、280万円前後でしょうか。

この額が多いか少ないかは「自分のこれまでの給料」と「業界水準」の2つと比べるとわかります。まずは後者の業界水準についてみてみましょう。

業界水準でみる

労働政策研究・研修機構の平成27年度の調査によると、「NPO法人の「正規職員」の年間給与額は、「平均的な人」の平均値で約260万円である。」となっています。「高めな人」の平均は370万円ほどとなっています。なので、冒頭の280という数字は業界水準であったといえます。なので、ぱっと金額だけ見て「安い」と思っても、その団体からすると業界水準と比べて頑張った額を出している場合もありますので、相対的に給料の額を見ることが大切です。選考を一度断ってしまうと2度目はありません。転職活動を進めて、ある程度NPO業界の状況がわかってから、あの団体結構よかったんだ・・・と思って後悔しても遅いので、ここは慎重に見て判断してください。

給与金額と合わせてみて欲しいポイント

あと給与金額と合わせてみてほしいポイントとして、「昇給」「契約期間」「社会保険」があります。

昇給ですが、企業のようにパフォーマンスに応じて給与に差をつけるというところはあまりなくて、横並びで上がっていくところが多いのではないでしょうか。また原資も限られているので、急激に上がることはありません。なので、昇給額が低くても候補から外すことはしなくてもいいかなと思います。


契約期間については、助成金で人件費が出ている場合は1年単位の契約で非正規扱いのところも多いです。なので、収入で助成金の比率が高いところはそうした事情があるのだろうなと思いますが、もし、自主事業で収入の柱があるにも関わらず1年単位で更新するのは、なぜそのようにしているのかを確認するようにしてください。ここは、職員とどのような関係性を築いていきたいかのポイントになるところです。NPOで単年度で契約更新する姿勢を持っているところは、「とりあえず一年試用期間でだめそうならやめてもらいたい」「団体が自転車操業なので雇い続けることはできないかもしれない」「過去に人に辞めてもらおうとして苦労した経験がある」「超激務で長続きしないけど、それでも人は必要」などネガティブな思考の表れかもしれないので、注意が必要です。

社会保険(年金、雇用保険、健康保険)はフルタイムであれば厚生年金になりますが、パートタイムの場合は契約する勤務時間に応じて変わってきます。きちんと契約に応じた社会保険の対応がされているか確認しましょう。自分はどの社会保険を、どれくらいうける権利があるのかを理解すると、給料の額は交渉できなかったとしても、福利厚生の部分で法律で定められた条件よりも上回った内容で交渉する余地があるかもしれません。逆に、定められた条件以下のを提示する団体はガバナンスに難ありなので、転職候補から外すようにしてください。

自分のこれまでの給料から見る

転職対象のNPOの給料の額が多いか少ないかを判断するためのもう一つの見方である、「自分のこれまでの給料」と比べるについて述べていきます。

日本人サラリーマンの平均年収が432万円という結果がありますので、年齢や役職によっては、NPOとあまり変わらないといったこともあり得ます。それまでもらっていた給与水準と比べて転職対象のNPOが同じ程度であれば転職候補として問題ないと思います。

逆に、少ないなと感じる方は、団体の職員となるとこの水準が続きますので、生活していけるかどうかの判断が必要です。そこで、もし少なくて無理となった場合でも、それまで専門知識を活かしたお仕事をされた方であれば、団体の職員ではなく、業務委託を受けることも考えてみてはいかがでしょうか。というのも業務委託は人件費と異なり、専門知識をもった外部人材として助成金などから払われることが多く、高い金額水準での支払いがされることが多いです。ただ、いきなりNPOから業務委託を受けることはできませんので、受けられる準備をする必要があります。

あとは、今の給料が「自分の実力に下駄を履かされた金額なのではないか?」と問うことは大切です。生活があるので、今の給与水準を守らなければと思ってスキルが積み重ならない仕事ばかり我慢して続けていると、40歳を過ぎて気付いたら、どこにもいけなくて組織にぶら下がるしかないなんてなったらよくないですよね。

給料が高いということは、嫌なことを我慢したり、やる目的が不明な無意味な仕事をさせられたり、急で長い残業を命令されたり、社長や役員のわがままで発生するしょうもない仕事をさせれたりと、高いなりの代償があります。その我慢が自分のスキルアップやその後のキャリアにつながっているのかを一度考えてみてください。

また、生活が給与額に合わせてインフレしていないかもポイントです、共働きを維持する、親と同居する、都会ではなく近郊暮らしにして住居費を下げるなど検討することで、NPOの給与水準でも生きていけるのであれば、精神的に満たされたバランスのよい人生になるかもしれません。

さいごに

企業からNPOへの転職は、「NPOは給料安いから無理だわ」と安易に判断されるかもしれません。ですが、企業よりも高い給料を支払っているNPOも多くありますし、業務委託でNPO業界でもある程度の水準の収入を得ている人もいます。また、給料が下がることを納得の上で心身の充実を重視して転職される人もいます。自分の人生に関わる一大決心ですから、給料のひとつの軸だけでなく複数の視点で見て判断してもらいたいです。
 

◆◆お知らせ◆◆

企業ではたらいているが、いつかはNPOではたらきたいと考えている人や、今NPOではたらいている人を応援するマガジンです。

NPOで働く人に役立つ本を紹介するマガジンをやっています!関心のある方はフォローをお願いします。

noteを定期的に書きます!といざ宣言しても書けなくなってしまうことありますよね。私も同じでした。でも、ある時を境にnoteを継続して書くことが苦痛ではなくなってきて、むしろ書かない方が気持ちわるくなりました。2年で100本以上記事を書いてきたのですが、こうしたモードになると案外簡単に続けることができます。note依存症(笑)になるためのコツや考え方をマガジンでお伝えしていきます。

企業からNPOに転職したい人にオススメの求人と団体の魅力を解説したマガジンもやっています。こちらも是非!


記事を読んでくださいましてありがとうございます。少しでもお役に立てれば幸いです。おかげさまで毎回楽しく制作しております。皆さんからの応援があるとさらに励みになりますので、サポートお願いいたします!!