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個別案件という名のマインドセット

全ては個別案件

Everything is an individual matter.
全ては個別案件である。
これは人との対話で意見が食い違った時の落しどころの話。

「それは個別案件だよね」

どうしても埋められない食い違いが生まれて。
食い違いを埋めようとして話し合って、それでも溝は埋まらない。
そこで辿り着く結論が個別案件

個々人が別々に持つ考え。
個々人が別々に持つ感じ方。
個々人が別々に持つ常識。
個々人が別々に持つ拘り。
個々人が別々に持つ価値観。

物事を見る時の視座や焦点も。
商品の価格を判断する時の価値基準も。
恐れや恥を感じた時の情動も強さも。

全ては個別案件。
全ては人それぞれ。

例えば。
バンドが解散する時の決まり文句、

音楽性の違い

この音楽性が個別案件となるわけです。
メンバーそれぞれの音楽に対する感性や価値観、それは個別案件だから食い違うのはしょうがない。
結成時には同じ音楽性を持つ者同士だったけど、個々人が別々の音楽性を持つに至ったのでバンドを続けることができなくなったわけです。
まぁ、往々にしてメンバー間の好き嫌いが個別案件なんだろうけれど、、

音楽性にせよ、好き嫌いにせよ。
全ては個別案件。
Everything is an individual matter.

全てが個別案件となる理由

全てが個別案件というのは極論と言えば極論。
意見が食い違ったり、人間関係で問題が起きたりしなければ個別案件という話にもなりません。

ただ、問題が起こることは日常茶飯事。
個別案件が浮き彫りにならない日は無いと言っても過言ではないでしょう。

そこで全てが個別案件となる理由について考えてみましょう。
その理由を大まかに分けると4つ。
それっぽく英語で表現してみました。

BEEP for individual matters.

訳すと個別案件の警告音となります。
BEEPは英単語のイニシャルを繋げた言葉です。

Background(生い立ち・経歴)
Emotion(感情・情緒)
Environment(環境・周囲の状況)
Personality(人格・個性)

これら以外にも理由はありますが、大きくはこの4つ。
このBEEPが完全に同じならば、恐らくすれ違いは起こりません。

ただ、そんな人がいたとして。
その人と関わることで面白味は味わえないでしょう。

というわけで。
BEEPを解説していきましょう。

Background(生い立ち・経歴)

山崎まさよしのセロリの歌詞に

育ってきた環境が違うから好き嫌いはイナメナイ

というフレーズがあります。
これはBackgroundに当たります。
その人をその人たらしめる背景。
育ってきた環境もそう、今までの経験もそう。

例えば味噌汁の味付けも個別案件。
使う味噌も入れる具材も塩辛さも育った環境に依存します。

これは私の経験談ですが、

「え~!正月の雑炊は小豆に餅?ぜんざいじゃん!」

なんて馬鹿にしたような口調で言われたことがありまして。
とてもショックを受けた記憶があります。

これは食文化が山陰由来の人同士なら起こらない摩擦ですね。
雑煮の種類は個別案件。
味噌だろうが、すましだろうが、小豆だろうが、雑煮は雑煮。
ただ食文化が別個なだけ。

Backgroundは、このような食文化に限りません。
家庭環境や学生の頃に打ち込んだ部活。
学歴や社会経験。生まれた年代。
全てが個別案件。

先ほど、個別案件が共通していれば問題が起こらないと言いました。
もちろん、そういう側面もあります。
しかし、このような個別案件が全く共通していないという理解があれば同様に問題は起こりません。

例えば相手が50歳年上の外国人だったら、自分の当たり前を押し付けることはありませんよね。
常識も知識も考え方も違うことが分かっているので、最初から良い意味で諦めがついています。

この記事で伝えたいのは、この良い意味での諦めの大切さです。
諦めるの語源は「明らむ=明らかにする」と言われています。

明らかにするべきは、相手は自分とは完全に別個の存在であること。
全く別個の価値観を持っているということ。

全てが個別案件であるということが明らかになっていさえすれば。
意見がすれ違った時も、

「それって個別案件だよね」

と、諦めがつくわけです。

Emotion(感情・情緒)

Backgroundに比べると語る内容が乏しいですが、これもまた個別案件。
人は感情によって別人になると言っても過言ではありません。

感情がポジティブかネガティブか、はたまたニュートラルか。
少なくとも、人と関わる時には感情的であるということは頭に入れておくと良いでしょう。

この感情は、体調やストレスによって左右されることもあります。
特定の刺激に反応して、特定の感情が生まれることもあります。

何気ない発言が、思いもよらず人を傷つけてしまった経験があるでしょうし、逆もまた然り。
コンプレックスに触れたのか、はたまたトラウマに関係していることだったのか。
その反応は人格や経験に由来するわけですが、とにかく感情は常に変化しています。

ここで大切なのは、感情的になっている状態というのはBackground同様、しょうがない面があるということ。
常に良い感情でいられる人は存在しないので、理由はどうあれ不機嫌な人にアレコレ文句を言うのは酷な話でもあるわけです。

「何でこんなに楽しい場なのに不機嫌なの?」

という問いかけは、

「何で夏は最高なのにダメなの?」
「何で癖の強いセロリを美味しく食べられるの?」

といった疑問と何ら変わりません。
ダメなもんはダメだし、美味しいものは美味しい。
感情に関しては、そういう感情になっちゃったんだからしょうがない。

理由が説明できるかどうかは置いておいて。
自分も相手も、その時々の感情に関しては完全に個別案件。

例えば映画。
同じ趣味趣向なら、同じ映画を見た時の感情は共有できます。
もし真逆の趣味趣向なら、全く別の感情を抱いても当然の話。

例えばストレス。
昨日あった嫌なことを引きずっている人。
明日凄く楽しみにしていることがある人。
この二人にギャップがあるのは当然の話。

自分の感情でさえ、訳が分からず動いていて。
相手の感情のこととなると、なおさら訳が分からない。

もう、これはお手上げです。
個別案件です。
相手の気分が悪いと感じた時や、相手の感情と自分の感情にズレがあると察した時は、感情の個別案件と認識しましょう。

自分の感情は自分の案件。
相手の感情は相手の案件。
それぞれ全く別個の案件。
個別案件です。

Environment(環境・周囲の状況)

人は環境の奴隷である、という言葉があります。
それくらい人は、環境に影響を受けやすいわけです。
最初に紹介したBackgroundでも、育ってきた環境について言及しました。

もちろん、現在の環境からも大きな影響を受けます。
環境や周囲の状況はTPOにも置き換えることができるでしょう。
Time(時間)Place(場所)Occasion(場面)によって人の事情というものが発生するわけです。

時間によっても、場所によっても、場面によっても。
価値観や態度が変わるのは容易に想像できるでしょう。
もちろん、それが画一的ではなく個別案件であることも。

環境には人的環境も含まれることから誰と一緒にいるかも重要です。
もちろん誰とどこにいるかで判断基準や気分が変わることもあるでしょう。

先ほど夏がだめという話が出ましたが、これは温度環境。
逆に冬がだめという人もいるわけです。
低気圧環境におかれると調子が悪くなる人もいます。
気温や気圧に対する反応も個別案件と言えるでしょう。

環境が個人与える影響は枚挙に暇がありません。
もしかしたら、あの日あの時あの場所で出会うことでしか成り立たなかった関係性もあるかもしれないですね。
それもまた個別案件ということで、、

Personality(人格・個性)

人格は解説するまでもありません。
個性には性別も含まれるので、

ましてや男と女だからすれちがいはしょうがない

といった恋愛関係あるあるは創造に難くないでしょう。

その他にはスペックもあります。
見た目とか知能といった、本来備わっているものですね。
知性という言葉を使うのであれば、後天的に獲得した知恵とか経験則次第も。

見た目に関して少し深堀りすると、自己評価とか他人からの仮想評価も要因として取り上げられます。
もちろん性格も同様ですが、見た目は人の好みが大きく関係してくるので個別案件性は強いと考えられます。

このPersonalityはBackgroudと同じくらい重要な要素です。
また、お互いが相互作用しると言えますし、オーバーラップする部分もあるでしょう。

深堀していくと沼にハマりそうなので、これくらいにしておきますが、いつか語りつくしたい要素です。

個別案件を言い換える

個別案件の概念を深めるために別の角度からも考えてみましょう。
例えばこちらの金子みすゞの詩に出てくるフレーズ、

「みんなちがって、みんないい」

これは個別案件を認めているわけです。
みんなちがうから、意見の違いも生まれる。
それは仕方ないから、意見が違ってもみんなOKにしたらお互いハッピーじゃん!
そういうフレーズ。
とても愛のある考え方ですね。

そして、ひろゆき氏のこちらの名言。

「それはあなたの感想ですよね。」

これもニュアンスが近いかもしれません。
"感想"を"意見"や"価値観"に変えれば、さらに近い。

ニュアンスが近いからと言って上から目線で

「それは所詮、個別案件ですよね。」

なんて言い方をするのはオススメしません。
個別案件はあくまで調和的なコミュニケーションを目的とする言葉です。
くれぐれも気を付けましょう。

ここまで説明してきてお分かりかと思いますが、個別案件は全く目新しい概念ではありません。
ただ、マインドセットとして頭に留めやすいという点においては目新しいと言えるでしょう。

とにかく大切なことは、人と人とは相容れなくて当たり前ということを腑に落とすことが大切です。
そういう意味では四文字熟語であることや、(個人的に)案件という言葉の響きが良いことはマインドセットとして定着させるのに一役買っていると言えます。

先ほど人と人は相容れなくて当然と言いましたが、個別案件という言葉は人と人とを繋げる鍵になると思ってます。
価値観の違いや、ちょっとした誤解を正しく早く深く認識できれば、すれ違いや争いのない関係性を築けるのは間違いありません。

個別案件というマインドセットを使う時

では個別案件を使う時の話をしましょう。

「それは個別案件だね」

このセリフを言うのは、基本的にイラっとする時です。
相手と自分とは違うということを突きつけられたらイラっとしますよね。

イラっとしてしまうと、冷静さを失うので個別案件という言葉を思い出すことは難しいでしょう。

イラっとするかどうかは、さて置き。
以下、どういったシチュエーションで使うのかを書いていきます。

味覚の違い

濃い味が好きか。薄い味が好きか。

塩味が濃い方が美味いといくら主張したところで、薄い味が好きな人にはなしのつぶて。
薄味好きの人に素材の味が分からないと言い返されて終わり。

その違いは味覚の問題かもしれないし。
食体験の問題かもしれないし。
日頃の食生活の問題かもしれない。

味の好みの違いという個別案件を紐解いていけばいくほど、個別案件性が際立ってくるわけです。

味覚に関わる神経の感度が違う。
体質的な部分で塩分の必要量が違う。
幼い頃育った地域が違う。
家庭料理で育ったかコンビニ弁当で育ったかが違う。
日頃は塩分を控えた自炊がメインか、濃いめの味の外食がメインかが違う。

これだけ違うのだから、味が濃いと感じるか薄いと感じるか分かれるのは当然。
もちろん同じ料理を食べて同じように丁度良いと感じる人もいるでしょう。

色覚の違い

個別案件を国別案件に置き換えて説明してみましょう。

虹の色は国(民族)によって異なるのは有名な話です。
日本ではご存じのように7色。
アフリカのアル部族は8色に見えていて。
南アジアのバイガ族は赤と黒の2色にしか見えない。

日本人が7色を説明しようとしてもアル部族にもバイガ族にも伝わらない。
色の認識は容易に変わらないから伝わらない。
だって、そう見えちゃってるんだから仕方ない。

そこで、仕方ないと思えるかどうか。
2色に見えるから能力が劣っていると揶揄しないかどうか。

「7色が2色に見えるんだ。人間って面白いね。」

自分と相手の違いを認められるかどうか。

色覚に関しては色盲の方は一定の割合でいるので、色覚における認識の齟齬は身近とも言えます。
これは、そもそも見えている色が違うという個別案件。
さらには色がどういう印象で捉えられているかも個別案件。
色を美しさで判断するのも美意識の個別案件。

信仰の違い

味覚や色覚の違いに関して細かく突き詰める必要はないとは思います。
ただし、こと価値観の話になると突き詰めていくことが大いに役立ちます。

もし同じ食べ物を食べて美味しさに関しての意見が分かれたとしたら、少なくとも自分の感覚の正しさを主張するのは馬鹿げていると気付くでしょう。
好みが違うんだからしょうがないよね、と。

一方、自分が大切にする価値観の話になると、そう簡単には割り切れません。
特に宗教。

自分と違う意見の人を否定したくなるのが人の常。
自分の意見に同意させたくなるのが人の常。
これは争いの種になりかねない人の性。

本来、何を信じるかなんて自由。
信じていた神を変える人も少なくありません。
まさに信仰の自由は個別案件の最たるもの。
でも、人は幾度となく宗教戦争を繰り返してきました。

応援する対象の違い

例えば野球。
阪神ファンも巨人ファンも。
応援するチームは自由。
阪神ファンに、

「何で巨人を応援しないの?」

と問うたところで、

「ほな何で阪神を応援せえへんねん?アホちゃうか?」

と言われて終わり。
何なら言い争いになりかねません。
何を応援するか。
まさに個別案件。

蛇足になりますが政治も同様ですね。
営業の時に政治・宗教・野球の話はするな、という話があるのは有名でしょう。

いずれにせよ、自分が心の底から大切にしている事柄に関しては注意が必要です。
政治・宗教・野球のように、最初からタブーと分かっていれば争いのリスクは低減できます。

もちろん、個別案件というマインドセットはリスクを減らすためのもの。
あらかじめ、

『この人は信仰心が強いから神様に関しては個別案件案件だな』

という風に案件化しておくと良いでしょう。

最後に

兎にも角にも。
価値観、応援対象、味覚、宗教、趣味、好みetc.
全ては個別案件であることが腑に落ちたかと思います。

大切なのは自分と相手で意見が別れた時に、直ぐ個別案件と気付くこと。
相手を自分側に引き込みたい気持ちを抑えて、個別案件だと理解すること。
自分の正しさを証明したい衝動を止めて、正しさは個別案件だと話し合うこと。

善と悪。
正しさと誤り。
成功と失敗。

日本人なんだから。
男性なんだから。
いい年なんだから。

そんなんどうだっていいでしょ?
個別案件でしょ?

アナタの価値観は分かった。
認める。
個別の案件だもの。

でも、自分は自分で個別案件がある。
日本人っぽくなくて。
女性的な感覚で。
年齢不相応の価値観で。
それが今の自分の、自分だけのスタイル。

このスタイルが自分だ。
これが個性だ。

アナタはアナタのスタイルを貫いていい。
自分は自分のスタイルを貫く。
ワタシとアナタは別の存在。
別の個性。

「みんなちがって、みんないい」

それでよくない?
だめ?

まぁ、この個別案件を認めるも認めないも個別案件。
どこまで行っても個別案件。

意地を張らずに相手を認める。
肯定して、許して、首を縦に振る。

そうすれば自動的に相手も肯定してくれて、許してくれて、首を縦に振ってくれる。
どちらか先に個別案件と気付いた方が相手の思想に歩み寄る。

それは一つの愛の形。
相手を大切にしながらも、自分も大切にする愛の形。
相手にも大切にされることで生まれる愛の関係性。

この関係性を少しずつ広めていくことが平和への道。

目玉焼きに醤油をかけるかソースをかけるか。
塩だけなのか、ハムエッグなのか。

好きなようにすればいい。
歩み寄った結果、塩派からソース派に改宗するかもしれない。

個別案件。
どこまで行っても全ては個別案件。

時に価値観を同じくすることもあるけれど。
そこで一喜一憂するのも人生の醍醐味だけれど。
価値観や思想の派閥を作って徒党を組んでもしょうがない。

人と話をしていてイラっとすることがあれば。
それは個別案件に気付くヒント。
相手を理解して尊重するための千載一遇のチャンス。

一呼吸置いて。
個別案件だと納得して。
醤油の良さを聞いて。
塩の良さを伝える。

そしてお互いの目を見つめてハモる。

『『目玉焼きの味付けも個別案件だね』』

このハーモニーを奏でれば奏でるほど。
自分も相手も自由になって、愛が大きくなっていく。

個別案件という概念が生み出す平和な世界。
アナタも一緒に創ってみませんか?

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