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無農薬・有機栽培だからって、自然に優しいだけではないかもしれない

都内の自宅から、歩いて10分少しのところに小さな畑を借りて野菜づくりを始めた。無農薬・有機栽培ということで「自然と共生している」気分でいたけれど、必ずしもそうではないのかもしれないと、始まってすぐに思うことがあった。

畑を始めたのは8月終わりで、そこから土を作って、秋冬野菜のキャベツやブロッコリー、大根、ハクサイ、ナバナなどを植え付けた。植え付けが終わるとすぐに、防虫ネットを張らなければならない。

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なぜかというと、これらアブラナ科の植物は、アオムシなどの虫の餌になるから。葉を食べられてボロボロになって、収穫できなくなることもあるのだそう。その季節、まだ畑をチラチラと飛んでいるモンシロチョウは、葉っぱに卵を産み付けたくて仕方がないらしい。時には、防虫ネット付近にまで達した葉に、ネット越しに産み付けることさえあるそうだ。生まれてきた子供(アオムシ)がすぐに食べ物にありつけるように、という母の愛ということか。

野菜を育てている立場からすれば、アオムシなどの虫、その親のモンシロチョウなどは敵で、それらから野菜を守らなければいけない。防虫ネットを張ったり、見つけ出して引きはがしたり、殺したりしなければならない。

でも、と思う。モンシロチョウやアオムシだって、自然の中の生物。生きるために、子孫を残すために、アブラナ科の植物を必要としている。人間は、野菜を害虫から守るという名目で、結局は自分が食べるために、そうした虫たちの生存を脅かしている。それって、そこに人間がいなければ成立していた自然の関係性を壊しているのではないか。まあ、そもそもそこにアブラナ科の野菜を植えたのは人間なのだけど。

そんなことを考えていると、「無農薬・有機栽培だから自然に優しい」なんて手放しには言えないような気がして、複雑な気持ちになった。その裏で、犠牲になっている虫たちがいる。彼らも自然界の大事な一翼を担っているはずなのに。

かといって、人間だって野菜が必要。だから、無農薬・有機栽培だから、何も傷つけていない、何も損なっていない、のではなくて、やはり自然の命を、野菜はもちろん、そこに繋がっている命を、そういう生態系の一部を頂いているのだということを、忘れてはいけないのだろう。そして、人間もその生態系の一部であるということを。

せめて「農薬」という武器は使わない、というささやかな約束を握りつつ。

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