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リモートワークしながら、都内の畑で野菜づくりを始めた

今年の夏、都内から都内へ引越しをした。仕事は、完全リモートに移行して数ヵ月が経っていた。

コロナ禍で在宅勤務メインの働き方になったことは、利点も多いけれど、欠点もある。その一つが「外出が減ること」。外に出なくなると、季節の移ろいを感じにくくなる。風の重さや光の質感、雲の厚さや速さ、草花の色や香り、虫の声や街の音。そうしたものが日々の生活から遠のいて、やがて五感を鈍化させていく。人間らしさを失っていく。そんなことを感じ始めていた。

そんな感覚を持ったままの引越から数日後、ポストに1通のチラシが入っていた。近くの畑で利用者を募集している、というお知らせ。農業は、まさに季節とともにあるもの。とても気になった。

そして翌日、何気なくSNSを眺めていると、知人が自分で育てて収穫したという野菜の写真が目に留まった。ナスやトマトやピーマンが日を浴びて、ピカピカと輝いていた。思わずどこの畑かと尋ねると、それは前日のチラシと同じ場所だった。

そんな出来事に縁を感じ、背中を押されて、畑を借りることにした。

家から歩いて10分少し。家か、近くのコワーキングスペースで仕事をした後に畑へ行く。ワーケーションならぬ、ファーケーションという新しい働き方の模索。ちなみに、農業についてはほとんど何も知らない。自然という偉大な師に弟子入りした気分だった。

かくして、夏の終わりの強すぎる日差しの下、畑の日々は始まった。そのスタート地点はこちら。

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ここに、有機肥料を撒き、それを梳き込みながら土を耕し、畝(うね)を作る。炎天下で鍬を持って1時間を超える作業をしていると、段々と意識が朦朧とし、頭痛さえし始めた。でも初日で鍬を投げるわけにはいかない。

そしてなんとか畝を作り、

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そこにキャベツと茎ブロッコリーの苗を植え、防虫ネットをセット。

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初日の作業を終えて、ふらふらしながら自宅に戻ってすぐにズーム会議。しばらく汗が止まらなかった。これがファーケーション。

この日、2時間足らずの畑作業で腕にはくっきりとTシャツの袖の跡が残り、ひと夏、在宅勤務によって回避できていた紫外線を一気に吸収してしまったようだった。

ちなみに、水分補給にと、畑で育てられていたステビアを氷水に入れてみたら、少し甘くて見た目も清涼感のある飲み物になった。けれど、そのうち、ステビアも水を飲んだのかグラスの中でみるみる元気になり、飲み物というより観葉植物の風情を帯び始めた。畑の植物の生命力はすごい。

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リモートワークになって、都内で畑を始めた。自然の中で育っていく。野菜も、人間も。

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