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鶏白湯ラーメンの鶏チャーシューによる食中毒

写真を見る限り、レアチャーシューとも言えない「鶏のたたき」状態。
(写真は当該店ホームページより)

半生の鶏肉はもってのほか。
半生で提供し続けて約一年以上経過していた様子だが、まさに誰が当たってもおかしくなかったロシアンルーレット状態が続いていた。


食中毒原因菌 カンピロバクター

ここ数年、食中毒事件数で第1位が続く原因菌であるカンピロバクター。
HACCPの講義を行っていても、まだまだその存在すら周知されていない。

一般的な食中毒菌よりもはるかに低菌量で発症する。
確率は低いものの後遺症(ギラン・バレー症候群)が残る可能性もある。

(参考)
「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル ~ 鶏肉等におけるCampylobacter jejuni/coli ~ (改訂版)」
食品安全委員会 2021 年6月
https://www.fsc.go.jp/risk_profile/index.data/210622CampylobacterRiskprofile.pdf


調理におけるカンピロバクター対策

<レシピ設計時>

加熱殺菌工学の視点から設計した安全なレシピが作れないならば、低温での加熱調理はやめるべきだ。
中心温度が75℃1分間以上と同等な殺菌効力のある加熱温度・時間の設定が必要だ。

<定常生産時>

・HACCPの「検証」にあたる加熱調理時の中心温度の確認も定期的に実施しないといけない。

・手袋を着用しているから安心と思って、生の鶏肉を触ったあとで、いろいろと調理器具を触っていないかなど、二次汚染の可能性の視点で作業を見直す必要がある。
ちなみに、米国農務省は生の鶏肉の取扱いが悪いと二次汚染を引き起こすため、水洗いしないようにと注意喚起している。

(参考)
「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」
厚生労働省ホームページ


今後の懸念点

この店単独の事故では済まないかもしれない。
このレシピをプロデュースしている会社によって、類似の「鶏チャーシュー」を提供するラーメン店が全国にあるようだ。

「レシピ開発・設計者」と「調理する店」が異なる場合の新たな監視指導などの検討が必要だ。


ネットニュース記事(抜粋)

「鶏レアチャーシュー」が原因?  食中毒19人でラーメン店が営業停止に
厚労省も注意喚起する「生食」リスク

(J-CASTニュース 7/1(金) 17:14配信)

愛媛県松山市のラーメン店の客19人が、食中毒を発症した。発症者の便からは鶏が多く保有するカンピロバクター菌が検出された。この店では生に近い鶏肉をチャーシューで使用していた。

ミシュラン、食べログラーメンアワード受賞店がプロデュースするというこの店では、鶏白湯ラーメンを看板商品とする。

鶏のムネ肉を使用したチャーシューは、外側は白く火が通っていることがわかるものの、大部分は鮮やかなピンクだ。このチャーシューを使った「鶏丼」も販売する。店のウェブサイトでは「レアなチャーシューが苦手な方は炙りもできます」と案内している。

松山市保健所生活衛生課は2022年7月1日、J-CASTニュースの取材に、一部始終を次のように話す。6月9日~20日に店を利用した15~50歳の19人が、下痢や腹痛、発熱を訴えた。うち16人は医療機関を受診し、現在は全員回復している。

複数の客の便からはカンピロバクターが検出された。食中毒の原因となったメニューは、チャーシューである可能性が高いものの、鶏肉の取り扱いが不十分でほかの料理が汚染したとも考えられるため特定はできなかった。

牛の生レバーなどと違い、鶏肉の調理に法的な規制はない。店には中心部まで十分に加熱したり二次汚染の防止を徹底したりするよう指導し、6月30日~7月2日まで営業停止処分とした。

店は1日、SNSで「被害に遭われたお客様に、心よりお詫び申し上げるとともに、心よりお見舞い申し上げます」と謝罪し、リスクの高いメニューを一新するなどして再発防止に努めるとする。


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