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それでも社会隔離は延長!まだまだ続くベトナムの新型コロナウイルスとの闘い(2020年4月15日夜現在)

今日ほど多くのベトナム人(そしてベトナムにいる外国人)がベトナムのニュースを注意深く見た日は久しくないでしょう。4月1日から始まった「全社会隔離」=厳しい外出制限措置(こちらについては前回note記事をご参照ください)の期限とされた4月15日、現地紙は「運命の時を待つ」と言ったような見出しが躍り、政府措置の行方に注目が集まりました。

新規感染者は大分減少、残った主戦場はハノイだけか

とその前に、ここに至るまでの近況を改めて。ここ数日、ベトナムでは毎日数名しか新型コロナウイルス感染者は報告されていません。以下グラフの赤線は新規感染者、紺色は退院者数ですが、4月4日以降はずっと一桁、かつ5人以下の新規感染者数で推移しています。3月6日から所謂「第二波」が来てから、3月26日に19人/日の新規感染者が出たのが今のところのピーク値。その頃から各種の外出自粛要請(ほぼ強制)、国境シャットアウト、更には「社会隔離」の日々が続いたわけで、2週間以上経ってのこの成果、他の国ならほぼ「収束宣言」なんじゃないかなあ?と思わせるほどの数字です。

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しかも、その新規感染ケースのほとんどはハノイでの報告となっており、ハノイの次に感染者の多いホーチミン市でも8日間連続で新規感染者報告はなく、ホーチミン市内で現在も治療を受けているのは僅か9人です。この状況で全国が「社会隔離」となっているのは、さすがに感染者が報告されていない地方省など中心に「厳しすぎる」ともいえる対応でしょう。

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それでも主要都市・省で延長された社会隔離

そんな中で迎えた4月15日、ベトナム政府、フック首相の決断に注目が集まりました。結果、以下「高リスク」地域と指定された地域においては4月22日まで首相指示16号(=社会隔離政策)が延長されることとなりました。首都のハノイ、経済の中心地であるホーチミン、中部の大都市ダナンと、ベトナム経済を支える、そして日本人含む外国人在住者の多い主要地域は、もう暫く社会隔離下の生活を送ることになりました。

高リスク地域:ホーチミン、ハノイ、ダナン、Lào Cai、Quảng Ninh、Bắc Ninh, Ninh Bình、Quảng Nam(ホイアン含む)、Bình Thuận、Khánh Hòa(ニャチャン含む)、Tây Ninh、Hà Tĩnh

リスク有地域:Bình Dương, Cần Thơ, Đồng Nai, Hà Nam, Kiên Giang, Nam Định, Hải Phòng, Sóc Trăng, Thái Nguyên, Thừa Thiên - Huế(フエ), Đồng Tháp, Bình Phước, Nghệ An, Lạng Sơn, An Giang

(上記以外の地域は「低リスク」地域、以下地図上赤は高リスク地域、黄はリスク有地域)

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「今月いっぱい延長か」という声も多かったところで、一週間の延長はやや意外ではありましたが、また一週間後に「延長や否や」という議論が起こると思います。事実、VTVの報道では「高リスク地域にあたる省・市では、感染状況により4月22日、もしくは4月30日まで社会隔離を続ける」とあり、既に4月30日までの可能性に含みを持たせています。また「リスク有地域」でも何でも解除というわけではなく、今回社会隔離を指示した首相指示16号の前に規定された首相指示15号(内容については以下在ベトナム日本国大使館HPをご参照)を実施することが求められています。

厳しい措置に苦しむ経済界、出口戦略はどこに?

徹底した隔離、これは明らかに感染防止に役立っています。しかし、社会経済への影響は計り知れない、それくらいの徹底的な措置です。厳しい現状を訴えるベトナム商工会は調査報告を発表し、「このままいけば半年後には半分の企業は倒産だ」と、厳しい調子で政府の支援策を訴えました(経済社会に対する影響については、また稿を改めて)。国民からの悲鳴も聞こえるでしょう、そして経済界からの突き上げ、陳情は大きいはずです。

今回は大都市地域をほぼ全て社会隔離延長ということで、出口戦略を後ろ倒しにしたベトナム政府。その一方、徐々には日常を戻していこうという動きも同時に見られました。これまで国内線フライト数も大幅制限していたところ、4月16日からは増便を許可する方針が出されました(といってもまだまだ少ないですが)。

また、欧米諸国が新型コロナウイルス対策に苦しむ中、より早く脱出ができそうであるベトナムでは、体力のある企業は早くも動きだしています。ビングループが人工呼吸器の生産を受注、ベトナムは政府として「医療機器をベトナムで作って」と売り込みをかけています。

とはいえ、まだまだ大部分の企業にとっては厳しい時期が続きます。強い措置に伴う経済損失についてどういうバランスをとって国家運営をしていくのか、今後更にベトナム政府かじ取りの腕の見せ所です。

ともかくも、一部の地域、特に大都市では延長されることになった社会隔離、残念ながらハノイの街が活気づくのはまた少し先になりそうです。

11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。