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短編小説

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生きることの難しさについての短いお話集。
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記事一覧

【短編小説】未来は悪の時代【SF】

【短編小説】未来は悪の時代【SF】

未来人の俺が助言する。今のうちに正しい行いをしろと。

何言ってんだと?と思うだろうが真剣に聞いて欲しい。AIの時代が来るのは無知な君たちも知っている。だが君たちが創造するよりもはるかに生活の隅々まで浸透し君たちの行動を支配してしまうことになる。「ああ、はいはい。そういうことならわかるよ。そんなの未来人じゃなくても知ってる」と知恵のついた猿は言うだろう。甘い、甘すぎるんだよ。君たちに今俺が見ている

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【短編小説】異世界転生した俺が異世界モノの小説家になった話

【短編小説】異世界転生した俺が異世界モノの小説家になった話

さて、表題にある通り俺は異世界に転生した。周りはスライムとゴブリンがうごめいているファンタジーな世界なわけなんだが、ここでは俺はただの非力で腹を減らした人間に過ぎなく、生きていく糧が必要だった。俺は街を歩いていて人込みができているのに気づいた。彼らは熱心に壁新聞を読んでいた。中には笑いながら読んでいるエルフもいた。俺は気になって壁新聞を見ると、新聞小説らしきものがあった。内容はトロールの屁に驚いた

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【短編小説】タイムマシンのAIとの相性テストはご購入前に必ず行いましょう

【短編小説】タイムマシンのAIとの相性テストはご購入前に必ず行いましょう

俺は念願のフェデリコ社のタイムマシンを手に入れることが出来た。最大200年の時間旅行が可能というスペックに興奮し、お金を貯め続けた。我が家の前に日本郵政の車が止まると俺は駆けつけ梱包されたタイムマシンを山賊が奪うように受け取ると、子供のようにはしゃいだ。早速リビングで組み立て、出来上がったそのフォルムの美しさに感嘆した。やっぱりフェデリコ社にしておいてよかった!イタリアの巨匠デザイナー、テシオによ

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【短編小説】走ることと嘘をつくこと

【短編小説】走ることと嘘をつくこと

俺は趣味でランニングをしている。その事を嫌な同僚に知られて何で走るの?と馬鹿にされぎみに聞かれた。健康に良いだとか、体力をつけるだとかそれっぽい事をそれっぽく答えた。ふーんと相手は何も興味を引かずその場を離れた。

俺は走っている。
何のため?
苦痛を感じるため。

俺の本当の答えはこうだ。マゾなのか?いや違う。あれ?いやそうかもしれない。俺がこういう考えを持つようになった切っ掛けがある。飲み屋で

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【短編小説】猫語を話してみよう

【短編小説】猫語を話してみよう

俺は猫語が話せる。
そんなわけないって?
本当だぜ。披露してやるよ。

「にゃにゃんんにゃにゃむにゃ、にゃにゃななにゃにゃんにゃーんみゃん。みゃむにゃにゃにゃ~ん。にゃーにゃにゃにゃん、にゃにゃむにゃなにゃむにゃにゃ~んにゃ。にゃなにゃんにゃんみゃ?みゃんにゃんにゃーんにゃ~んみゃにゃにゃにゃ。にゃにゃみゃ。」

もし、君が猫を飼っているのなら今表示しているディスプレイを飼い猫に見せてやって欲しい

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【短編小説】精度100%の天気予報

【短編小説】精度100%の天気予報

ぼくは夢を見ていた。
長い夢だと思う。
目が覚めても、動悸が激しく、なんだか体がぐたっりしていた。
でも、どういう夢だったのかぼくはまったく思い出せなかった

去年働いていたバイト先で「天気さん」という先輩がいた。ぼくの中でそう勝手に呼んでいた。天気さんは天気のことしか話さなかった。それ以外の話を振っても、苦笑いするだけで黙っていた。その顔を思い出すとなんだか悲しくなった。
彼の天気予報は世界一正

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