マガジンのカバー画像

短編小説

17
生きることの難しさについての短いお話集。
運営しているクリエイター

記事一覧

【掌編小説】口紅と零戦乗り

僕の祖父は酔った勢いでよく自分の青春時代を語ってくれた。僕がまだ一人で寝るのが恐い年の頃…

さけおにぎり
1か月前
8

【掌編小説】パイナップルピザと肺呼吸

ピザにパイナップルを乗せるのは是か非かという議論がある。俺はどうでもいいが、母はパイナッ…

さけおにぎり
1か月前
5

【エッセイ風小説?】オタク青年が語るギャル論

僕は学生でいろんなところでバイトをしたのだが、大体そこの大人の人に 「君、オタクでしょ?…

さけおにぎり
2か月前
8

【掌編小説】深夜のサウナ、ゲイの友人と

真夏に停電が起こり、エアコンが止まり室内がサウナのようになって地獄だったという話はよくあ…

さけおにぎり
2か月前
4

【掌編小説】夏の日曜午前10時、喫茶店で

日曜の朝、カーテンを開けて顔を洗い歯を磨きながら(ちなみに私は10分ぐらい時間をかける)、喫…

さけおにぎり
2か月前
4

【掌編小説】台風の夜に

台風が上陸している。窓ガラスを打つ雨。吹きすさぶ風の音。それらの強弱はリズムを拒否し、予…

さけおにぎり
2か月前
3

【掌編小説】愛し方、忘れ方

僕は3年前に死んだ彼女の墓参りに来ている。僕は墓参りが好きだ。図書館の次に好きだ。そこはいつも静かで、下品な笑い声は聞こえないし、品定めするような目で見てくる輩もいない。だが盛夏の太陽光線にはノックダウンされつつある。 山を切り開いた場所にある霊園は、生きている森を殺し、人間の死者を葬るという矛盾した存在。なぜ殺生を禁ずる仏教の坊さんがこういう存在を許すのかは謎だ。僕は周囲にある青々とした木々を見渡した。強い日差しを浴びて気持ちよさそうに葉を微風に揺らしている。御影石の下に

【掌編小説】コンサートはいつも少し遅れて始まる

僕は会場から少し離れた公園で彼女を待っていた。だだっぴろい駐車場が隣接し、ときおり遠くか…

さけおにぎり
2か月前
8

【掌編小説】黒神話:悟空というゲームと部長の離婚

「黒神話:悟空」という中国の最新ゲームをプレイしたという同僚が喫煙所にいたので、その感想…

さけおにぎり
2か月前
5

【掌編小説】幽霊とゲリラ豪雨と三島由紀夫

空から不快なゴロゴロという音が聞こえ、肌にじっとりと湿気がまとわりつき、大雨の予感がそこ…

さけおにぎり
2か月前
1

【掌編小説】捧げる

「大きな大きな力が私をどこかに連れ去ってしまうの」 そう少女は言った。 崖上の潮騒が聞こ…

さけおにぎり
3か月前

【短編小説】未来は悪の時代【SF】

未来人の俺が助言する。今のうちに正しい行いをしろと。 何言ってんだと?と思うだろうが真剣…

さけおにぎり
4か月前
7

【短編小説】異世界転生した俺が異世界モノの小説家になった話

さて、表題にある通り俺は異世界に転生した。周りはスライムとゴブリンがうごめいているファン…

さけおにぎり
4か月前
3

【短編小説】タイムマシンのAIとの相性テストはご購入前に必ず行いましょう

俺は念願のフェデリコ社のタイムマシンを手に入れることが出来た。最大200年の時間旅行が可能というスペックに興奮し、お金を貯め続けた。我が家の前に日本郵政の車が止まると俺は駆けつけ梱包されたタイムマシンを山賊が奪うように受け取ると、子供のようにはしゃいだ。早速リビングで組み立て、出来上がったそのフォルムの美しさに感嘆した。やっぱりフェデリコ社にしておいてよかった!イタリアの巨匠デザイナー、テシオによる現代的デザインは芸術品とも言えた。俺ははやる気持ちを抑えるために深呼吸した。そ