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アメリカ印象派展まもなく開幕!

いよいよ1月27日(土)に開幕の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」。フランスのイメージが強い印象派ですが、フランスから世界に広がり、アメリカでは「アメリカ印象派」と呼ばれる作品が生まれました。本展はこれまで日本では紹介されることが少なかった知られざる「アメリカ印象派」の魅力をたっぷりお届けする展覧会。開幕に向けていよいよ準備も追い込み中!今日は輸送と展示のお話です。


▶アメリカから作品到着!

本展にはフランス、アメリカをはじめとする印象派の作品およそ70点が展示されますが、そのうちアメリカ・ウスター美術館所蔵の作品は53点。そのほとんどが日本初公開です。貴重な作品群が海を越えて日本に到着しました!

▶作品は「木箱」に入って・・・

クレート(crate) とは、英語で「木箱」の意

作品はクレートと呼ばれる特製の木箱に入れて輸送されます。英語でクレート(crate)は農作物を入れる木の箱など、簡易なものにも使われますが、世界に1点しかない大切な美術品を守るクレートは厳重そのもの。航空機やトラックでの輸送による振動や温湿度変化に耐えられよう、重箱のような「入れ子」の構造で、内箱と外箱の間には幾重にも緩衝材が使われ、最終的な箱の厚みは20センチほどになります。印象派の作品は概してヒューマン・サイズのものが多いとはいえ、縦横1メートルの作品を額に入れてクレートに入れた場合、箱の大きさは2メートル四方、重量も400キロ近くになります。これらを作品の大きさや状態に合わせて1点ずつオーダーメイドで制作するのですから、まさに「箱入り娘」級の”待遇”です。

▶美術品の同乗者は?

海外からの輸送は航空便で。当然輸送中クレートの平置きは厳禁。作品は立てた状態で、進行方向に対する置き方が決まっている場合もあります。また高さが1.6メートルを超えると、高さ制限のため旅客便ではなく貨物便での輸送となりますが、貨物便は肉や魚介、果物などを運ぶこともあり、「人類の至宝である美術品の隣にアメリカンビーフやカリフォルニアオレンジ」はよくある話。競走馬が同乗、なんてこともありえると言います。本展の出展作品の一部はニューヨークからの貨物便で到着しました。(成田空港での荷物の引き取り、寒かった!)

作品は大きさによって旅客便か貨物便で輸送
(写真は本展とは無関係です)

▶日本の気候に馴染んでね

こうしてはるばるやってきた作品ですが、残念ながらすぐにクレートを開けることはできません。最低でも24時間、場合によっては48時間から72時間、作品をクレートに入れたまま保管する“シーズニング”、いわゆる“ならし”を行います。作品保全のためのこのルールは厳格で、特に本展のように冬場の輸送は悪天候などによる飛行機の遅延、欠航など不測の事態に備えて少し余裕をもって展示スケジュールをたてないと、「開幕に間に合わない!」と慌てることになりかねません。

メアリー・カサット《裸の赤ん坊を抱くレーヌ・ルフェーヴル(母と子)》1902-03年

▶絶賛展示作業中! 

シーズニングが終わったらいよいよ開梱・展示作業。美術品修復家や学芸員など専門の知識を持ったプロが1点1点、作品を点検し、輸送中にダメージを受けなかったかを確認します。もちろん額もしっかり点検します。作品の制作年代に合わせてはめられた額はフラジャイルなことも多く、作品と同じくらい慎重な扱いが求められるのです。万が一作品や額に損傷や変化が見つかれば都度詳細な記録をとり、場合によってはその場で応急処置をすることも。アートハンドラーと呼ばれる美術品取り扱いのプロフェッショナルの力に支えられて、ようやく作品たちは展覧会会場の壁に掛けられるのです。世界に唯一無二の作品を直に取り扱う開梱・展示作業は緊張を強いられ慎重さが求められると同時に、展覧会が出来上がっていくのを間近に見られるワクワクを感じられるひと時でもあります。
 今回の展示作業は5日間。1月27日の開幕に向けて、絶賛進行中です!


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