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DRAWER: 製造業のベテランに倣い、ベテランを超えるプロダクト開発

こんにちは。CADDiの今井です(imaimai0)。CADDiでは図面解析のプロダクトマネージャーを経てAI Labを立ち上げ、その後MLをコア技術の一つとする図面活用SaaS DRAWERのテクニカルプロダクトマネージャを担当しています。
この度、弊社はシリーズCの資金調達を実施いたしました。

前回の調達から今までで、PoC/MVPフェーズから正式ローンチを果たし、少しずつ顧客も増えています。今回はDRAWERについて、PdMとしての気付きや、何を考えて作っているかの思想、今後どうしていきたいかについて技術視点を交えながらお話できたらなと思っています。


一年半前、DRAWERはプロダクトとして立ち上がる直前のPoCフェーズでした。当時社内で活用していた内製の図面管理のプロダクトについて100社以上にヒアリングした結果、もう一歩先の図面の活用まで踏み込まないと刺さらないことがわかり、図面の検索性を高める機能を開発していました。

プロトタイプは1-2ヶ月で完成し、当時の想定顧客に再度ヒアリングを行いました。概ね好評を頂き手応えを感じていたなかで強く印象に残っているのは、あるメーカーの設計部署のベテランのお客様とのやり取りです。

ヒアリングの内容は、サンプル図面をもとに数万枚の図面に対して、用意したアルゴリズムによって近い順に表示し並び順に違和感がないかコメントをもらうというものでした。そのベテランは、さながら社内の生き字引のようにコメントをくれました

「あーこれは制御盤だからぱっと見カテゴリとしているものは全部かなり似ているね、あー、ただ2番目と比べると、図番がxxxなのね。これはプロジェクトとして違うから、分けて考えたい。あとサイズがxxxを超えると加工が変わっちゃうから、xxx以上のものは省きたい。あとこの図面は、色々な加工会社にサンプルを出して試作品を作ってもらってたりしてたね、あと…」

なんだ全員がこの人みたいになればDRAWERなんて要らないじゃないか。と少し思いつつも、私同様に感動している同社の他の設計者や調達部門の若手を見ながら、これこそがDRAWERとして作っていく価値だと感じました。こんな人がいっぱいいると、製造業はもっと良くなっていくのではないかと。ただしそれは現実的にかなり難しい課題で、であれば我々はそれをテクノロジーで支援・解決しようと。

資産として眠るデータを活用するには

ベテランの発言からもわかるように、データの活用には「製造業に対するドメイン知識」と「様々な情報が有機的に繋がっている」ことが非常に重要です。そこで私たちは現在、大きく2つのことに力を入れています。

  • 図面や3D CADなどから製造に関わる情報をできるだけ多く抽出する

  • 製造業に関わるデータをできるだけ多く関連付けられる

製造業の世界における図面はコミュニケーションの媒体、いわゆる言語みたいなものです。「こういうふうにモノを作ってね」という要望を図面を通じて表現し、受け取った人はそれを解釈して何らかの行動に移します。

図面を使ったコミュニケーション

なので、図面をそのまま資産として管理するだけではなく、製造業の世界でそれがどう読み取られるかを知る必要があります。長さは500mmで作るんだとか、ここは精度を厳しく作る必要があるだとか、ここは溶接する必要がある、だとか。画像として受け取った図面に意味を吹き込むために、我々は構造化に力を入れています。

図面の構造化

これだけでも過去溜まっているデータにアクセスできるようになるのですが、価値を生み出すためにはもう一歩踏み込む必要があります。受け取った図面から解釈し、行動した結果のデータを紐付けることでそれが可能になります。受け取り先の見積結果はどうだったか、どこに発注したのか、その結果QCDはどうだったか、などなど。いわゆる図面に対する答え合わせのようなものです。これらが図面と紐づくことで、価値に直結した洞察を与えられます。

ベテランに倣い、ベテランを超える

さて、上記のような狙いでプロダクトを現在進行系で日々開発し、ローンチから1年が過ぎました。ユーザーも増え、ベテランの頭の中に少しずつ近づけていっている気がしています。とはいえ、我々はソフトウェアを作っています。その処理能力や機械学習の技術を活かして、彼らを超える価値を創出していきます。

スピードで超える

人間が出せる処理スピードを超える速度でデータを構造化したり、図面を探し出したりできるようにしていきます。DRAWERでは数万枚、数十万枚単位で画像や3Dデータが入ってきて、これらを高速に処理することが求められます。そのために、ここの非同期処理基盤に投資をしていて、素早く・安全にデータを変換して格納できるようなインフラを整えています。

精度で超える

すべての認識で人間を超えることは難しいかもしれないですが、近づくことはできます。アノテーションの高速かつ精度の高い実行、運用を通してのモニタリング、データの取得による再学習など、データの品質を高めることでモデルの質を高められるという思想で解析モデルを作成しています。実際に効果は生まれ始めていて、ますますMLを用いた価値提供は加速されていく予定です。
(こちらに関しては明日別件で話すので是非こちらも御覧ください!)

関連づけの数で超える

関連付けの多さがユースケースの多様性を生むと信じているため、多くのデータを利用可能にし、連携できるようにしていく必要があります。DRAWERはData Productの側面が強いため、データをどのように取り扱うかに関して日々議論しています。Event Stormingを用いてドメイン境界を見出し、そこからデータモデリングを進めていくなど、将来の拡張性を見据えた再設計が今まさに行われています。

こちらに関しても弊社エンジニアから技術記事が公開される予定になっているので是非ご覧ください。

体験で超える

我々は図面を探す、探した図面を活用する、という絞られたユーザー体験の中で日々戦っています。「データを保管していればいずれ活用できるはず」だと思っている世界から、検索や活用のドメインに入ってみると、まだまだやりきれていないことが数多くあると感じます。

最近の例を一つ紹介します。「図面を全部同じ向きで登録してもらえるとは限らない」という声があがっています。スキャンしている図面が、90度回転していたり逆さに向いていたりするのです。保管には良いのですが、活用にはよくありません。図面を見て正しい向きになっていなければ、判断が遅れますし体験を損ねます。これらを解決するために画像の向きを自動補正するような機能を開発しています。

このように、日々顧客の直接的な声、あるいはログからの間接的な声を聞きながら、この「活用」という領域にどっぷり浸かって考え抜くことが、プロダクトとしての根本価値を高めることにつながると思います。

個別最適と全体最適の両取りをする

最後に、もう少し将来の話をします。

日本の製造業では「現場が強い」という言葉に代表されるように、個々の能力が磨かれていて、職人技を持った人が多く存在します。彼ら一人ひとりの技術やこだわりによって支えられています。
一方で、製造業自体が非常に長いサプライチェーンで構成されていること、ITへの投資がまだまだ進んでいない側面もあり、様々なレベルで情報の断絶が起こっています。

DRAWERでは、現場の強さをMLなどの技術によって再現し、アプリケーションによる集約によってコミュニケーションの断絶を解消し、個人が培った力を損なうことなく、全体最適へ繋がっていくと考えています。そうすれば、人々がより付加価値の高い仕事について考えることができるようになり、製造業がより良くなっていく。それを信じてプロダクトを育てていきたいと思います。

それに向けての少しずつ手応えを感じている今、一緒にプロダクト開発をしてくださるメンバを募集しています。共感してくださる方、興味のある方、是非気軽にご連絡ください。待っています。

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