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今もう一度考える「山に救急車は来ない」ということ

長野県の緊急事態宣言が解除されました。
今までのうっぷんを晴らすかのように、一気に「開放ムード」になっているのを感じます。
「これで心置きなく山に行ける」
でも山に出かける前に、今一度大切なことを考えて直してみてください。

山に救急車は来ない

当たり前なことですが「山の中は街なかとは違う」ということです。「すぐに救急車が来てくれる、すぐに医療機関に行けるわけではない」ということです。このことをもう一度認識してください。

「もしも」に備える

登山では「もしもに備える」というのがとても大切です。
「何が起こりうるか?」をどれだけ想定できますか?

・怪我をする
・滑落する
・具合が悪くなる
・道に迷う
・落石に当たる
・天気が急変する
・悪天候で行動不能に陥る
・クマに遭う
・地震に遭う
・噴火する

色んなことが起こりえますよね?
他にはどんなことが想定できましたか?

「今だからこそ」の想定

このような「もしも」に加えて、今だからこその想定はないでしょうか?
そう、コロナです。
緊急事態宣言が解除された今だからこそ考えられるシナリオはないでしょうか?

実は自分はどこかで感染していた。まだ潜伏期間や発症前なだけ。あるいはほとんど症状が出ない無症状感染者なだけ。だから自覚症状は何もない。
自宅で過ごしていれば自然に治癒したかもしれない。しかし登山に出かけたことが引き金となって、発症・重症化してしまった。
山の上で突然息苦しくなり、熱が上がり、猛烈な倦怠感に襲われ、もうこれ以上歩くことができないほど、体調が急変してしまった。

「山で感染するかしないか?」ではなく、「もし自分がすでに感染した状態で山に行ったら・・・」という想定です。「そこまで考えなくても・・・」という人もいるかもしれません。
ただ、
・「今」というタイミング(解除直後)
・登山は激しい運動であり、心肺に負担がかかるということ
・コロナは息苦しい症状を伴い、肺へのダメージが大きいこと
といったことを考慮しての判断でしょうか?
少なくとも5月14日は「コロナが消えた日」ではないことをお間違えなく。
少なくとも2週間程度は潜伏期間があるということをお忘れなく。

「今だからこそ」の状況

今多くの山小屋が休業していることを知っておいてください。これは「日帰りならOK」という話ではありません。何かあった時の緊急避難場所としての山小屋が十分に機能していないということです。
また助けに来てくれる山小屋従業員さんが、移動制限で山に入れていない可能性があります。助けに行きたくても行けない事情があるかもしれません。
救助隊の体制が十分でない可能性もあります。少なくとも感染予防をしてから出動するため、すぐには到着しないでしょう。そもそも悪天候だったり日没になれば、二次遭難を防ぐために救助が来ないことを知っておいてください。

そして「今絶対に避けなければいけないこと」を知っておいてください。
それは「山にコロナを入れる」こと。
万が一山小屋の従業員が感染した場合、そこには医者も医薬品もありません。山奥深くではすぐに病院に行くこともできません。
救助隊が感染するわけにもいきません。もしそうなればしばらく救助活動がストップしてしまうからです。

今登山をするなら

これらのことをトータルで考慮した上で、それでは今どんな登山をしますか?
私の考えは、こうです。
①少なくとも山小屋が営業していない山に登るのは、小屋の営業が再開してからの方がいいでしょう。そもそもそういう山域は登山口に「登山自粛のお願い」の看板が立っています。良識のある行動を取りましょう。
②なにか起こったとしても自力で下山できる山を選ぶのがいいでしょう。標高、行動時間、エスケープルートなど多角的に判断しましょう。
③トラブルに対応できるように、一人で登るのは絶対にやめましょう。何かあった時に助けてくれる仲間と一緒に登りましょう。
緊急事態宣言が解除されたからと言って、今はまだ山の様々な機能が完全に回復したわけではないことを肝に銘じてください。

こんな今だからこそ、「いや~楽しかったね~。めでたしめでたし。」という“結果オーライな登山者”ではなく、リスクを想定し正しく判断し慎重に行動し「安全に下山するべくして下山する」“自立した登山者”になりませんか?
いつも考えている一般的なリスクマネジメントに加えて、ぜひ「今だからこその想定」「今だからこその状況」も考慮してください。

そして、出かける前にもう一度思い出してください。
「山には救急車は来ない」ということを。



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