見出し画像

【お薦めの一冊】 本当に儲かる株の見つけ方 / 「株式投資の未来」 ジェレミー・シーゲル

今まで多くの本を読んできました。

その中には、私の人生に良い影響を与えてくれた本が沢山あります。

そんな本の感想を書き留めておくことで、私自身の備忘のためにも、また、これを読んで下さった方の本選びにも、少しでもお役に立てればと思っています。

1.前著「株式投資」の続編

本書は、著者ジェレミー・シーゲルの前著「株式投資」の続編といえ、その内容を更に一段掘り下げたものとなっています。

そのため、本書の内容をしっかりと理解するためには、まず前著「株式投資」を読むことをお薦めします。

その前著につきましては、以下の記事を参照下さい。

前著では、

・長期保有を前提とすれば、株式は、債券よりもリターンが高く、また、インフレを考慮すれば債券よりリスクも低い。
・国際的に分散した投資を行うことが望ましい。

という結論を導いています。

上記の結論を踏まえれば、国際的な株式市場のインデックス(指数)に連動するようなETF(上場投資信託)を購入し長期保有することが望ましいと考えられ、前著でもそのような投資を薦めています。

このような株式市場のインデックスに連動するETFを購入すれば、当然、そのリターンは市場平均とほぼ同様になります。

2.過去のデータから市場平均を上回る銘柄を徹底的に調査

リスクを分散し、確実に利益を上げていく方法として、ETFを購入することは、市場平均のリターンを確実に得る手段として理に適った結論です。

何より、上記の方法は、単純にETFを買うだけで済むので、どのような個別銘柄を買えば良いのかについての情報収集・分析をする必要もありません。

そのため、銘柄選定に時間を取れない忙しい方や、投資初心者でどのように企業分析・銘柄選定をすれば良いのか分からない方にはピッタリの方法です。

しかし、私たちは、周りの人が買った企業の株式が何倍にも値上がりしたと聞くと、どうしても市場平均のリターンでは満足できず、何倍にも値上がりする企業の株式を自分も買ってみたいという衝動に駆られてしまいます。

本書では、そのような「ETFによる市場平均のリターンだけでなく、より高いリターンを得るためには、どのような個別企業の株式を買えば良いのか」といった質問に答えるために、前著から更に一歩踏み込んで、市場平均を上回るリターンをもたらす個別銘柄について徹底的に調査しています。

巷に溢れる株式投資関連の雑誌には、「これから10倍になる株はこれだ」といった特集が毎月のように掲載されています。

投資を始めたばかりの方は、どうしても、そのような株式を言われるがままに買ってしまいがちです。

しかし、そのように誰かに薦められた株式を鵜呑みにして買うだけでは、一向に自分自身で本当に高いリターンを得られる株式を見極める知識が付くことはありません。

一見遠回りのように見えますが、本当に株式投資に関する知識を身に付けたい方は、本書のような書籍で基礎的な力を身につけることをお薦めします。

雑誌の記事が薦める株式を安易に信じて株式を購入する前に、ぜひ本書を読んで欲しいと思います。

皆さんの銘柄選定に関する固定観念がひっくり返るはずです。

3.市場平均を上回るために、どんな銘柄を買えば良いのか

早速ですが、市場平均を上回るリターンを投資家に与えてくれる企業とは、どのような企業でしょうか。

以下の2つの方法のうち、どちらが、高いリターンを得るための銘柄選定の方法として望ましいでしょうか。

(A)話題性のある業界を選び、その中から、売上や利益の成長率が一番高い企業を選ぶ。
(B)これといって話題性のない業界において、世間からあまり期待されておらず、売上や利益の成長率も平均的な企業を選ぶ。

もし、あなたが何となく(A)を選んだのであれば、今すぐに本書を買って読むべきです。

まさに、目からウロコが落ちる経験ができるはずです。

4.世間の常識は本当に正しいのか

それでは、より具体的な事例で考えてみましょう。

以下の2つの銘柄や業界や国について、どちらに投資すべきでしょうか。

(1)個別企業の選定(IBM vs エクソンモービル)

【問題】
今からタイムスリップして1950年に戻ったと仮定して、1950年にIBMとエクソンモービル(当時は、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー)のどちらかの株を買い、その配当で同じ銘柄を買い足していった場合、その後の50年間の投資リターンはどちらが高かったでしょうか。

この情報だけでは、なかなか判断が出来ないかと思いますので、以下に当時の時代背景や各社の成長率等のヒントを記載します。

【時代背景・成長率】
1950年代当時、IBMのようなハイテク企業はトレンドの最先端に立っており、まさにこれから急成長が始まるところでした。
一方、エクソンモービルはオールド・エコノミーと言われる古いタイプの企業であり、急成長は見込まれていませんでした。
事実、1950年以降の50年間において、IBMはエクソンモービルより高い売上高成長率や1株当たり利益を計上しました。

(1950年〜2003年における主要指数)
1株当たり売上高成長率: IBM=12.19%/年   エクソンモービル=8.04%/年
1株当たり利益: IBM=10.94%/年   エクソンモービル=7.47%/年

ここまで読んだ方の多くは、おそらくIBMを選ぶのではないかと思います。

また、1950年に株式投資関連の雑誌等があれば、おそらく高い成長率が見込まれるIBMの株式を薦めていたのではないでしょうか。

しかし、残念なことに、IBMの投資リターンは年率13.83%だったのに対し、エクソンモービルは年率14.42%であり、より高い投資リターンをもたらしたのはオールド・エコノミーと言われていた古い企業のエクソンモービルだったのです。

(2)セクター・業界の選定(金融セクター vs エネルギーセクター)

同様に、今度は、セクターや業界の選定を考えてみましょう。

今回も1950年にタイムスリップします。

【問題】
今からタイムスリップして1950年に戻ったと仮定して、1950年に米国市場において金融セクターとエネルギーセクターのどちらかに投資をする場合、その後の50年間における投資リターンはどちらが高かったでしょうか。

ここでも同様に、当時の時代背景等を紹介します。

【時代背景・市場シェア】
1950年以降、米国の金融業界は世界を牽引し、その後の50年間で、金融セクターは時価総額ベースで最大の伸び率を示した急成長セクターとなりました。
一方、エネルギーセクターは、50年間で米国の株式市場において急激にシェアを落としたセクターの一つです。

事実、金融セクターは、1950年代には株式市場の1%しか占めていなかったセクターでしたが、2003年には20%を超えるセクターと急成長しています。
一方、エネルギーセクターは、1950年代は株式市場の21%超を占めていましたが、2003年には6%弱まで縮小しています

直感的には、金融セクターに投資すべきかと思う方が多いかと思いますが、ここまで本記事を読んでくれた方は、おそらくエネルギーセクターが正解だと思うのではないでしょうか。

結果は、やはり、急成長を遂げた金融セクターより、シェアを縮小したエネルギーセクターの方が高い投資リターンをもたらしていました。

50年間の投資リターンは、金融セクターの年率10.58%に対して、エネルギーセクターは年率11.32%となっていたのです。

(3)投資国の選定(中国 vs ブラジル)

それでは、最後に、世界にも目を向けてみましょう。

今から過去に戻れるのであれば、急成長を遂げた中国に投資をしていれば大儲け出来たと思われるのではないでしょうか。

【問題】
今から1992年にタイムスリップしたと仮定して、中国とブラジルのどちらの株式市場に投資した方が、その後の10年間でより高いリターンを得られたでしょうか。

ここでも、もちろん参考情報をお伝えします。

【時代背景・経済成長率】
皆さんがご存知の通り、中国は1990年以降、非常に高い経済成長を遂げており、実質GDP成長率は平均9.3%/年となっています。その結果、2003年には、中国経済は、購買力ベースで米国に次ぐ世界第2位となっています。

一方、ブラジルは、今でこそBRICsの一つとして、高い経済成長率を誇っていますが、1990年代初頭は、政治的にも経済的にも混乱しており、1994年にはインフレ率が5000%を超え、実質GDP成長率はマイナスとなっていました。その結果、1990年以降の10年間の実質GDP成長率は平均1.8%/年にとどまっています。

結果はもう予想がつくかもしれません。

一般的な常識とは反対に、中国ではなく、ブラジルがより高い投資リターンをもたらしてくれたのです。

ブラジルは年率15%超という目覚ましい運用成績を達成した一方、中国は何と年率マイナス10%という結果となり、10年間で投資した資産は3分の1になってしまったのです。

5.高い成長率が、高い投資リターンをもたらすとは限らない

なぜ、このような結果となってしまったのでしょうか。

常識的に考えて、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している新興企業、新興業界、新興国こそ、投資家に高いリターンをもたらしてくれる、投資にふさわしい対象となるはずです。

ここに、私たちが陥ってしまう罠があります。

実は、投資の世界では、成長率が高いほど高い投資リターンをもたらすとは限らないのです。

投資の世界では、高い成長に目を奪われていると、上記の例のように、落とし穴に足を取られてしまうのです。

なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか。

6.投資リターン=「株式の値上がり益」+「配当」

その理由は、ある意味シンプルです。

株式から得られる投資リターンは、つまるところ以下の式に示すことができます。

投資リターン=「株式の値上がり益」+「配当」

そして、私たちが往々にして陥ってしまう過ちは、「企業の高成長」=「株式の値上がり」と思い込んでしまう点にあります。

これを、本書では「成長の罠」と呼んでいます。

この罠は、投資関連の情報雑誌やネット記事などが、高い成長率を謳い文句に株式を薦めているため、それを鵜呑みにした投資初心者の方は簡単におちいってしまいます。

この「成長率の罠」のカラクリについては、本書でとても分かりやすく解説していますので、「成長率の罠」に掛かって痛い目を見る前に、ぜひ本書を読んで欲しいと思います。

そして、さらに私たちは「配当」の持つ力を過小評価してしまうこともあります。

しかし、長期投資においては、実は配当の持つ力はとても大きいのです。

特に、長期投資において避けられない市場の暴落・低迷時においてこそ、この配当は将来の大きな投資リターンの起爆剤としての役割を発揮します。

上記の例において、成長率において劣る企業が、投資リターンにおいては高成長率の企業を上回る理由の一つはまさにこの「配当」にあります。

この配当の持つ力については、ぜひ本書を読んで理解を深めて頂ければと思いますが、本書を読めば、市場の暴落・低迷は恐れるものでも、ましてや投資からの撤退の合図ではなく、むしろリターンの向上を図る絶好の機会だと確信が持てるはずです。

7.本書の薦める投資戦略とは

本書を読めば、市場平均を上回るリターンを得るためには、安易に成長率の高い企業・セクター・国の株式を買ってはいけないことが分かります。

長期投資においては、むしろ、市場からあまり注目・期待されてはいなが、堅実に利益をあげ、それを配当という形で株主に着実に還元している企業の株式を買うことが望ましいのです。

そのような企業を探す際の方法として、本書では、以下のような戦略を提示しています。

【市場リターンを上回る銘柄を探す方法】
・高配当戦略
・グローバル戦略
・セクター戦略
・バリュー戦略

それぞれの具体的な内容については、本書で詳しく紹介されていますので、ご参照下さい。

そして、本書では、前著「株式投資」で提示した国際的に分散された株式投資(=国際的な株価指数に連動する上場投資信託(ETF))をベースにしつつ、上記の【市場リターンを上回る銘柄を探す方法】を組み合わせて、市場平均を上回るリターンを目指す投資戦略を薦めています。

つまり、

(1)上場投資信託(ETF)=50%
(2)個別株式(市場リターンを上回る銘柄を探す方法で選定)=50%

という割合での投資を薦めています。

ある程度の資金がある方が、これから株式投資を始めるのであれば、この投資戦略をそのまま真似しても良いかもしれません。

本書は決して安い書籍ではありませんが、本書から得られる知識の価値や、それがもたらす可能性のある将来の投資リターンを考えれば、決して読んで損をしたと思うことはないはずです。

本格的に株式投資を行ってみたいと考えている方は、ぜひ一読をお薦めします。

本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。

この記事が参加している募集

記事に関する質問など、何でもご遠慮なくコメント頂ければ幸いです。まだまだ勉強不足の身ですが、できる限り回答させて頂きます。