「バーのマスターは、優しい幽霊」説
秘密の鍵は、ここにある。
街のはずれにある
小さなバーが好きで良くいく。
そこにいけば、いつだって
「そうかもしれないね」
という決まった相槌しか打たないマスターが
延々と話しをきいてくれる。
ここだけの話、
よく家の鍵をなくすわたしは、
いざという時にそなえて、
そのバーにスペアキーをひとつ預けてある。
たくさんのお酒のボトルが並ぶ戸棚の隅、
あのスコッチウィスキーの瓶の裏に、
我が家の鍵が隠されているってわけだ。
これは、わたしとマスターだけの秘密。
そのお店に通う中で、ふと思いついたのだけど、
バーのマスターって、実はみんな「優しい幽霊」なのかもしれない。
年齢に比べて、知識や経験が豊富な人が多いのも怪しいし、
なんでも気兼ねなく話せる、あの懐の深さは、
一度や二度死んでみなきゃ身につかない。
なにより、そうじゃなかったら、
どこのお店もそろいもそろって、
マスターの足元を隠すような
カウンターを置く必要がないじゃない?
きっと、あのバーカウンターには、
マスターの秘密をあばく鍵が隠されているに違いないのだ!
なんてね。
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