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触れて、感じるデザインを。後編 shiwa glass制作ストーリー 株式会社キューイ

「シワ」をテーマに、株式会社キューイのお二人が制作したshiwa glass。前編では、「生かされているんだ」と気付きを与えることのできる、ものづくりに至った経緯を中心に、お話をお聞きしました。その想いがshiwa glass制作へと繋がっています。

前編はこちら。

シワへの愛。

────「生かされているんだ」ということを自然と感じてもらえる、ものづくりがしたいとshiwa glassを制作されたとのことですが、なぜ「シワ」をテーマに選んだのでしょうか。

浅海:シワって、すごくいいなと思うんです。人間のシワは、ネガティブなものと捉えられがちですよね。ですが、実際の生きている人間の顔の型取りをたくさんしてきた僕からすると、「シワ」は一人一人、全然違うんですよ。すごく面白い。その人が生きていきた証、生き様が見えるというか…。そういうストーリーのあるものを通して、shiwa glassを使う人に「生きている」「生かされている」ということを伝えていきたいのです。

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「シワを掘ることが、すごく好きなんです」と浅海さん。彫っていると、頭がすっきりするそうで、お坊さんが写経をする感覚に近いかもしれない、とのこと。

「生きている」ということを、
触って、感じてほしい。


────shiwa glassを作る際に、こだわったポイントを教えてください。

浅海:剥製ではなく、今も元気に生きている象のシワを型取りして作られているということが、1番のポイントですね。

:象の型取りは、群馬サファリパークさん協力・監修の元、象にストレスができるだけかからないように行いました。型取りの素材も人間の美容パックに使われている成分のものを使い、飼育員立ち合いで細心の注意を払いました。「生きている」「生かされている」ということを伝えるための、ものづくりが生きている象に、影響を出してしまうことは本末転倒ですからね。

また、グラスの形状や大きさに関しては「シワを触ること」自体を楽しんで頂くためのこだわりが詰まっています。唇で触れる時の心地よさを追求したグラスの飲み口の薄さは、シワの溝の部分が光で透けるほどです。焼き物としての難易度がとても高くなりましたが、なんとか実現することができました。実は、シワは縮小せずにそのままの大きさで表現をしています。触っていただくと、シワから象の大きさを想像できるかと思います。

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────確かに触ると、象の大きさを感じることができますね。

浅海:最近、デジタル技術の会社さんのお仕事を扱うことが増えてきているので、その技術の可能性を肌で感じています。けれども、「触って感じる」という情報の取り方は絶対に外せないな、と思うのです。指は髪の毛よりも小さな段差を感じ取れるんですよね。その繊細な器官を使わずにいるのは、もったいないと思います。

:こうやって、やっとできたshiwa glassを見ると、二人でしかやれなかったなと本当に感じます。「シワ」を美しいと思ってもらうために、どうしたらいいのかと本気で考えて、この製品が生まれました。

浅海:自分が始めたからこそですが、思い入れが強すぎて、客観視できていなかった部分もありました。このグラスをデザイン的に見たらどうか、ということまでは気が回っていなかった。そういった観点で意見をくれる星は、なくてはならないパートナーです。

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二人の組み合わせでしか
やれないことを、形にしていきたい。


────今後、キューイとしてやっていきたいことは、ありますか。

:グラフィックデザインと特殊造形、二人だからこそできることを、どんどんと打ち出していきたい。その方法を、「デザイン」の「見える化・触る化」と位置付けています。グラフィックデザインだけで完結せずに、立体化することで、新たなコミュニケーションを生むことができる。少し前に浅海が、大手玩具メーカーの本社リニューアルの一貫で、大きなオブジェを作りました。社内の方がそれを見て、「うちの会社は面白いな。クリエイティブなことをしてくれる会社で誇らしい」とおっしゃっていたそうです。形にすることで、もう一歩踏み込んだコミュニケーションができる。そんな、デザインの先に、人の成長がある制作をしていきたいと思います。

────「触って、感じる」このとのできるデザイン…。素敵ですね。

:加えて、オフィスがある品川区中延という地域や人に、つながる仕事もしていきたいです。僕が昔からやっていた、街に根差した仕事をすることに浅海も加わり、地域のお店をデザインとものづくりで応援していきたい。そして、街が活気づいていったら嬉しいです。「デザインや、ものづくりで困ったら、キューイに相談しよう」と思ってもらえるように、取り組んでいきたいと思います。

後編04

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キューイオフィス近くにある鮮魚バル「Bubble Fish」。
ロゴデザイン、ポスター、看板等を制作。

キューイのお二方、お話ありがとうございました。

聞き手・文:大島 有貴
写真:唐 瑞鸿(MSPG Studio)



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