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『旅のラゴス』筒井康隆

『旅のラゴス』筒井康隆(新潮文庫)

何年か前に買って読み進めていたけど
途中で辞めていた。

改めて
「読み切るぞ。」
と気合を入れて読んだ。

あの頃、なかなかこの物語の世界に
入り込めなかったことを思い出す。

短編集みたいに
1話が終わるごとに
また頭から読んでるような気持ちになる。

章の前半をどうにか読んでいると
毎回、半ば、後半あたりで
物語の世界にすっぽり入ってる自分に気づく。

一度入り込むことができると
トイレに行こうが
周りのノイズで一旦世界を離れようが
すぐに戻って来れる、不思議。

SF,ファンタジー
なんだけど
当たり前に存在してる
読心術とか同化とか、
そこに対するワクワクとか好奇心は
そんなになくて。

だからハリーポッターとか
ロードオブザリングとか
スターウォーズとかそういうのとは
全く別で。

旅の中に
そういったSF,ファンタジー要素が
ちょこんと、当たり前のように
おまけのようにあるだけ
のように感じた。

もっと現実的でリアルな旅を描いた
ゲームオブスローンズみたい
って思ったのが正直なところ。

筒井康隆ファンからしたら
最低な感想?かも?

読んでる間ずっと
頭の中に
「デーデ」がいた。

ちょっとしか登場してないし
そんな魅力も描かれてないはずなのに
仕向けられた!

ハーレム系?かのように
いろんな女性に好かれるラゴスだけど
いつも頭の中には(俺の)デーデが
存在していた。

この物語の世界では
時間がサラサラと簡単に流れていく。
ああ、デーデも歳とっちゃうじゃん。
みたいに思いながら読んでた。

例えば15年間もずっと
篭って勉強していたり。

なのに、時間の経過
歳を取ることに対しての
悲観は感じ取れなかった。

むしろ当たり前のように流れていく。

だから次第に、
読んでいる側も
時間が流れることの当たり前に
納得していく。

特にドームに篭って
勉強を続ける話が
いちはんすきだった。

思想・哲学、詩学は
最終的な書物として
実用書から読み進め
歴史や伝記を読み進めていくところが
面白かった。

また小説の
中毒性というか麻薬性というか
その描き方も面白くて。

ああ、もっと俺は
いろんな物語に触れて
小説の世界に陶酔したいなと思った。

技術などが発達した先の
文学は
なかなか誰も理解できない
なんて点もおもしろかった。

この小説も
「おもしろかったよー。」
なんて簡単に人に薦めたりできないなと。

あまり本を読まない人からしたら
「薄めのファンタジー?」
なんてふうに思われるかもしれないし、
それはなんだか嫌だし。

とかいう自分も
更に深いところまで
この小説の魅力を理解してないとは思う。

またいつか
再読したい本になった。

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