蒐集家、久遠に出会う 第一章 二、異世界と久遠
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微睡む意識の遠くで、誰かが呼んでいる気がする。女の声だろうか、真木にしてはいくらか高い。ぼんやり瞼を開けてうつ伏せとなり、椛はベッドの中で昨夜の出来事を思い出す。何とかあの人間に似た何かを家まで運び、それを玄関に放置して寝室で眠ってしまったような――。
耳元で金属音がする。考えを打ち破ろうとするそれへ振り向いた瞬間、額と左のこめかみに強い衝撃が走った。しばらくふらふらする頭を持ち直し、泥棒かと思って椛は体を起こす。目の前にいたのは、フライパンとお玉を持った人間