嫁 ときどき 後妻
義母が明らかに私を息子の後妻だと思っているような電話があったあと、しばらくして、前話の冒頭に書いたように義兄から留守番を頼まれたのです。
土曜日は夫は仕事のため、私一人で行くことに。
私を「嫁」として認識してもらえるかドキドキです。認識してもらえなかったら、
「息子さんに頼まれて、掃除に来ました」
とでも言おうと思っていました。
よく義母が買うお寿司屋さんのお寿司を手土産にうかがうと、ちょうど庭に出ていた義母が、2回目の「こんにちは」で私に気付き、家に招き入れてくれました。
義母はすでにお昼は食べたというので、では、とお寿司は私一人でいただくことに。義母の分は、夜にでも食べてくださいと、そのままテーブルの上に置いておきました。
2時間ほど私を「嫁」として認識したままおしゃべりした後、自室に行った義母。私自身も前日徹夜気味だったこともあり、その場でうとうとしてしまいました。
しばらくすると母が家を出ていく音が。
急に思い立って出かけていくことはよくあることなので、そのまま私は引き続きうとうとしながら留守番することに。
40分ほどするとガチャリと玄関が開く音が。義母が帰ってきたようです。
「お帰りなさい」
耳が遠く聞こえなかったのか、私の言葉に反応しないまま一点を見つめるような様子で真っ直ぐな視線のまま、私がいるリビングに入ってきた義母の手には、先ほど私が買ってきたものと同じお寿司がありました。
そして、テーブルに目を落とした義母が
「あら」
とひと言。
そして買ってきたお寿司をそのまま私に渡し、
「じゃあ、これはお土産にこのまま持って帰って」
と言ってくれたので、有り難くいただくことにしました。
それからまた2時間ほどおしゃべりした後、帰宅する時間に。
義兄が私たち夫婦に留守番を頼むほど心配しているのは、水分をとりたがらないこと。高齢者あるあるですが、トイレの回数を減らそうと水分を我慢してしまう傾向にあるそうです。義兄によると、実際にトイレに間に合わなかったことが何度かあったそうです。
なので、とにかく水分を、と思って様子を見ていましたが、話の合間に何度もお茶を入れてくれ、私以上に何倍も飲んでいたので、この日のミッションはクリア。
そして最後まで私を「嫁」として認識してくれ、ホッとした思いで帰宅することができたのでした。
つづく