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【ひ】▷病気にも意味がある「いろはにほへと」とヘンテコ凛な私

人生後半の日々を心地よく過ごすためのちょっとしたコツを「いろは」の47文字の中から拾ってみました。

【病気にも意味がある】

48歳の時に生まれて初めての人間ドッグを受けた。
「50歳になったら受けるよ」
とずっと言っていた私に、その年に限って夫が絶対受けろ!と断固として言い張った。

検査結果を聞いたのは、会社の昼休みだった。
まだ、今の仕事を始める前のこと。
運送業で、いつもは同僚がいたり、運転手さんの出入りがあったりする事務所なのに、その日に限って誰もいなかった。

「検査結果の問い合わせは電話でも良いですか?」
「お忙しいなら、電話でも構いませんよ」
確かに、こちらからお願いしたのだから、その先生が悪いワケじゃない。
でも、それは大丈夫だと思い込んでいたからだ。

まさか「悪性腫瘍」という言葉を電話ごしに聞くとは思わなかった。
「そうですか。わかりました」
としか答えられなかった。
電話を切ってから手の震えが止まらなかった。

その後、夫と二人で病院へ行き、先生から病状や手術の方法を聞いたが、先生の言葉が全く頭に入って来なかった。
頭が真っ白になるとはあぁいう事なんだろうなぁと思う。

今にして思えば、甲状腺ガンは転移も少なく、現在では手術の必要がない場合だってあると聞いた。
でも、ガンと言う二文字を聞いた時のショックは今でも忘れない。

その二年前に、たまたま会社の事務所に顔を出してくれた代理店さんからすすめられガン保険に加入したばかりだった。
「結婚したらすぐ辞めちゃうんじゃないの?」
私の嫌みな質問にも「辞めません。ずっと続けますよ」と笑顔を返してくれた。
とても感じの良い、まだ初々しい代理店のお姉さんだった。

彼女に電話で報告した時、言ってもらった言葉に、何だかホッとしたのを覚えている。
「大丈夫ですよ。一緒に頑張りましょうね」

いま、私は彼女と同じ仕事をしている。

彼女のように上手くお客様に寄り添えているかは自信がないが、この仕事を選んで良かったと思っている。

私の言葉には特効薬のような効き目なんて何にも無いだろうけど、私が「だいじょうぶ」という言葉に救われたのは確かだから、必ず同じ言葉を伝えている。

あの二文字の病気に負けないで戦い抜くために一番大切なことは、負けない気持ちだと思っている。

そのために、私に出来ることは「だいじょうぶですよ。一緒に頑張りましょうね」と、お客様にとって応援団の一人であり続けること。

転職して、ちょうど10年たった。
最近はもう1つ言葉を添えている。
「頑張らなくていいんですよ。頑張っていただくのは先生です」
世界中の先生方すみません!
でも先生の一言が、めちゃくちゃ励みになるんです。

あの電話越しのガン告知のあと、この先生には手術されたくないと私が決心した一言。
「僕にも出来る簡単な手術です」
すぐに他の病院に紹介状を書いてもらい、次の病院で良い先生に廻り会えた。

手術して頂いた先生は、こちらのいくつかの質問にも丁寧に分かりやすく答えて下さって、術後しばらく声が出なかった私に言ってくれた。
「だいじょうぶです。時間に個人差はありますが、必ず声は出ます」
先生の一言に、どれだけ安心をいただけたか。

あの時の私の病気は、いつも、のほほ~んとしている呑気な私のために、神様がくれたプレゼントだと思っている。

「今年は人間ドッグ絶対受けろ!って言葉は神様が貴方に言わせたんだね」
そう言う私に夫が言い返した。
「オレの言葉だ!」
「ハイハイ」


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