IUとテテの終末愛は現代を生きる私たちの物語でもあった

IUとテテというKPOPの表現者の頂点である二人の共演ということで公開前から楽しみにしていた「Love wins all」のMV、初見で気づいたら泣いていた。

久しぶりに心が震える映像に出会って、この気持ちを新鮮なまま記録しておきたいと急いでnoteを開いてる。
(あくまで個人的な感想や解釈であり、曲の歌詞に対する感想ではなくあくまでMVのみに絞った感想です。)

このMVが「終末SFもの」というのは間違いないけれど、そういう映像的なジャンルではなくこのMVが描いているテーマ自体があまりにも今の自分に刺さった。

というのも「得たいの知れない何か」に追いかけ続けられる経験がまさしく人生そのものだと思ったから。

目に見えない恐怖や不安がずっとついて回って、どうにかそれを見ないように目を逸れしたり、怯え続けたり、時には立ち向かったり。

そうやって懸命に生きていたら当然綺麗なままではいられず、気づいたら汚れてボロボロになって疲れ切っていたことに気づく。

このMVの中で象徴的に使われている「ビデオカメラ」は、ただのフィルターというよりも「過去の美しかった思い出」と解釈した方が私にはしっくりきた。

思い出はいつも美化されるものというし、思い出がそのままイコール事実とは限らない。

それでもこんなに厳しい現実を生きる時に私が思い出すのは、とても幼かった時に家族に全身で愛を受けていた温かい記憶や、パートナーと付き合い始めた時の幸福に満ちた思い出たちだったりする。
美しい思い出の中はなぜか決まって晴れていて、ずっと温かい光に包まれているのが不思議だ。
あのビデオカメラを通した二人の映像がまさにそんなイメージで。そういう装置としてビデオカメラというあえてアナログなモチーフを使った部分もあるんじゃないかと思う。

正直、私は今生きてるこの世界に対してどこかに終末感を感じ続けている。
日本という国で生まれて生きて、この国の行く末に対して不安を拭えたことがない。
全てが綺麗に整理整頓されていて何事もないかの様に進んでいるけど、静かに死んでいくような雰囲気がずっと漂っている感覚
もちろん、日本だけでなく辛く暗い世界情勢も影響しているのだけど。

そうやって見たら、ああこれって今を生きる私たちの物語だなと附に落ちた。

懸命に生きて、綺麗事だけは生きられず、打ちのめされて、疲れ切って。
たまに美しかった思い出を振り返っては、またどうにか明日を生きるしかない。
そういうちっぽけな私たちの人生の過程を美しく、けれど真摯に描いた作品だと感じることができた。

得たいの知れない不安や恐怖、権力や社会構造に立ち向かった結果、結局勝つことはできずにその広大な渦に飲み込まれて命を終えていく人がほとんどだとしても。

それが世界で人生だと言われても。

世界に負けても懸命に生きた結果、その生を全うすることによって存在した「愛」こそ人間の存在理由なのではないかと希望を持たせてくれる。

ゲームに負けても闘いで勝った人たちというか、他人の目には悲惨な人生に見えてもそれは一面的なものに過ぎないことも多くあるだろう。
綺麗事抜かすなと言われても結局人間として生きて死ぬ以上、最後は広義的な意味での愛に集結するしかないんじゃないか。

ただの平凡なラブストーリーやジャンル映像なんかではなく、これは必死に生きて傷だらけになった私たちへ向けた人生賛歌のような作品であると思う。

思い入れのある二人の共演した作品で、こういうテーマを撮ってくださった監督にありがとうを伝えたい思いで綴じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?