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マーケター視点で語る SDGsとNPOの関係性

Hello people!
社会課題の解決を目指すためには、多くの人の注目を集め、流入を作ることが必要不可欠です。しかしSDGsに取り組むNPOでは、それらに必須なマーケティングの視点が足りないことも少なくありません。

そこで実践的ビジネスコミュニティGDA(Good Days Association)では、「マーケター視点で語る SDGsとNPOの関係性」に関するウエビナーを開催。その内容をお届けします。

GDA(Good Days Association)
約30名の経営者、ビジネスマン、事業推進責任者が集まり、専門知識の共有によるオープンディスカッション、他社・団体との協業、社会投資や支援を活動の主軸とする実践的ビジネスコミュニティ。事例の紹介、活動の紹介、ディスカッション。

谷田さんの事例

<登壇者プロフィール>

谷田さん

株式会社ワンチーム
谷田脩一郎

化学、食品、人材、機械、メディア、公益財団法人と様々な業界でセールス、マーケティング、事業開発を経験。イネターネット広告業界の中小企業や、スタートアップ、NPOなど、フェーズに合った最適なサービスを受けられない標的課題を解決するため、株式会社ワンチームに参画。デジタルマーケティングのコンサルティング、企業向けの研修、大学生向けの育成事業などを行う。

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谷田 1974年から行われている内閣府、社会意識に関する世論調査「社会への貢献意識」のデータを見ると、今「世の中の役に立ちたいと考えている人」は全体の6割以上いて、そう考えていない人は4割以下です。それならもっと世の中がよくなっていてもよいと思うのですが、世の中の役に立ちたいと考えていても行動しなかったり、人に巻き込まれて行動していても、自ら意思をもって動いている人は少ない傾向にあることがわかっています。
そこで「人に巻き込まれて行動する人」「世の中の役に立ちたいと考えていても行動しない人」にまでハードルを下げた上で、「世の中の役に立つことをすることが簡単で、身近で、かっこいいもの」だと思ってもらうようなアプローチが必要です。

そのために3つの事業を展開しています。

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NPO Marketing Labo(マーケティングラボ)」はNPOや社会活動をする人に対してデジタルマーケティング支援を行い、必要とする人に必要な情報を届けるお手伝いをしています。
あるNPOの事例では、まだ見ぬ支援者に情報を届けるためにWeb広告を出したいという依頼を受けてクラウドファンディングにチャレンジし、1億円の寄付を集めることができました。

「きふる」は社会貢献を身近にするためのwebメディアで、読者の6割は寄付をしたことがある人です。ビジネスとは違い、NPO ではマーケティングをするにもトリガーがわかりづらいのですが、そこを身近に感じてもらうための記事を展開しています。

KIFU BARは、1ドリンクで数百円寄付に回る仕組みをとったスタンディングバーです。NPOの話題は深刻になりがちですが、飲みながら気軽に聞いてもらえる場を作ろうと考えました。

こうした広告、メディア、イベントなどの事業を通して、社会をよりよくするためにどうしたらエネルギーが出せるか、人が動くかなと考え、試行錯誤しています。

平尾さんの事例

<登壇者プロフィール>

平尾さん

オービタルコラボレーションズ合同会社
平尾健二

雑誌広告の代理店を経て、2005年にインターネット広告代理店へ入社。以来、デジタル領域を中心に企業のキャンペーン、コンテンツ企画、広告戦略立案、Webサイト運用のインハウス化支援、BPO領域まで幅広い分野に携わる。
2019年7月にオービタルコラボレーションズ合同会社を設立。企業の訪日インバウンド、海外マーケティングを支援する。並行しグローバル市場においての共通認識を理解するため、また次世代の将来に貢献できる事業を構築するため、SDGsについて学びを深める。
現在、自社のマーケティング支援機能を活かし「社会、環境へ貢献する取り組みをしているのに、いまいち世の中へその活動が伝わっていない」企業、行政の情報発信を支援する事業を展開している。

平尾 SDGsのゲーム体験会やワークショプを開催しています。SDGsについてはまだよくわからない企業も多いですが、座学でもわからないことを、ゲームで体験としてお伝えしています。
活用しているのは3つのゲームです。

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「Sustainable World BOADGAME」は、すごろく的にコマを進めながらカードを引き、実際に世界で生じている社会的課題に取り組むゲーム。SDGsの事例を学べ、仲間と協力する大切さやトレードオフを擬似体験できる、SDGsのエントリー用に適したゲームです。

「SDGsアクションカードゲーム Xクロス」は、トレードオフの解決に注目。手持ちのリソースカードを使いながら、課題解決方法を考えていきます。使用カードが限定されることで、発想の転換が起こったり、通常では考えつかない気づきを得られることもあり、新規ビジネスのヒントにも活用できます。

「子どもと大人のSDGs学習ゲーム Get The Point」は、小学生から大人まで楽しめ、持続可能な社会への理解を深められるものです。SDGsの中でも資源など環境の問題にフォーカスし、資源の使い方によって状況が変化することを体験。ルールをアレンジしながら2周行う中で、持続可能な社会を作るためにはどうしたらよいかを検討できます。

他にも神奈川県内の企業や行政が実践している取り組みを取材し、ボードゲームの神奈川県版をつくる動きもあり、こちらはCAMP FIREでクラウドファンディングを募っています。

またゲーム以外では「KPIのマネジメントとブランディング」の考え方をSDGsのビジネスの世界に広める事業に取り組んでいます。
企業が儲けるのはよしとしつつ、その儲け方を考えようというのがSDGsの本質のひとつで、これはマーケティングと関連が深い分野。マーケティングの中の「KPIのマネジメントとブランディング」に取り組むことで、SDGsの活動がもっと促進できると考えました。

先日朝日新聞が出した調査結果では、SDGsは52.7%の認知がありますが、SDGsに仕事で関わりがある人の多くが、取り組みの課題として「活動の評価方法に課題がある」と答えていました。

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SDGsの目標は掲げていても、具体的に何をしているかわからないというケースが多いため「ただ掲げているだけ」と見られてしまうこともあり、企業にとっては逆に不利益です。SDGsの17のゴールは2030年のそれぞれの分野の理想形でもあり、宣言にも近いものです。具体的な中身が空洞化しているならば、そこを埋めるために、具体的な内容を立てて定点観測していくやり方が、大企業だけではなく中小企業にも必要です。

そこで当社では、SDGs の169のターゲットから自社が貢献できる指針を見つけ、232の指標とGRIスタンダードを参考に各社のKGI、KPIを立てて運用体制を構築します。169のターゲット、232の指標は1つの企業ではまかないきれないので、ドリルダウンするとか、ターゲットとして参考になるものを立てて吟味することが必要です。こうしてKPIマネジメントを導入すると、取り組みが具体的になり説得力が出るため、社員や関係者が貢献を実感でき、継続できるようになります。さらに数字を定点観測して共有することで、さらなる継続の原動力となりマーケティングの部分で説得できる要素にもなります。

SDGs のマーケティング全体の流れを見てみると、もの軸、情緒軸が強い傾向にあります。まず会社としての社会的意義があり、次に何を伝えるかというときに、機能のみを押して売れる時代は終わっていて、情緒が大事です。とくにSDGsは情緒の働きかけが強い。SDGs のマーケティングはブランディングが重要なのです。より体系立てて構築して、何を伝えるかを研ぎ澄ませていくことで、本当の理念となり、人に注目される世界感を作れます。それを多くの企業に広めるために活動を進めています。

マーケター視点でのSDGsとNPOの課題

辻原 NPOはマーケティングの手法を知らないという課題もあります。

谷田 そもそもの考え方がや成り立ちが、株式会社とは違う部分があります。株式会社が研ぎ澄ませてきたマーケティングの考え方と、NPOのマーケティングは一緒でなくてもいいし、双方から学び合えることもあると思います。起点として利益を上げる、顧客を獲得するためのマーケティングは株式会社と似ています。一方でNPOならではの、社会をよりよくするためにどうするかという目的はわかってもらいにくい。

辻原 平尾さんの資料をみると、NPOは情緒的な伝え方がもっとうまくなると、注目を集めやすいのかなと思いました。

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平尾 NPOはもともと情緒ベネフィットが強いのですが、寄付の限界はだいたい年1億円。団体としてよりスケールしようと思うと、代表理事のエモーショナルなトークだけで維持できなくなるので機能ベネフィットが必要になります。クラウドファンディングという機能ベネフィットで使いやすいものができたので、わかりやすく「一千万円あればどういうところにどういうことができるので、お金ください」ということが言えるようになったんですね。そもそもSDGsはCSRや慈善活動と混同されたり、ビジネスやマーケと切り離して考えられてしまいがちです。またSDGsという言葉が広がりすぎていて、形骸化している印象もあります。ホームページに宣言は書かれていても、KPIまでブレイクダウンしているかどうかは外からわかりづらい。形だけのSDGsになってしまうことは避けたいですよね。

社会課題に注目を集める・流入を作るには?

辻原 SDGs=社会課題を解決すること。みんなやりたいと思ってはいても、実際に動いている人は少ない。もっと注目を集め、行動する人を増やすにはどうしたらいいでしょう。平尾さんがカードゲームの切り口を作った理由は?

平尾 取り入れやすいのがまず1個。あとは、SDGsは知った後でどうするのかが重要なので、企業の中でも共通言語にしてもらうために、ゲームはいいフォーマットだと思いました。

辻原 谷田さんの『KIFU BAR』も、注目を集め、行動する人を増やす方法のひとつですよね。

谷田 毎回ユーザーが変わっていて、ただ飲みに来る目的の人もいます。NPOの話を、真面目に静かに聞くことが正義ではない、ということを実践したかったんです。世界的にみても、真面目では寄付は集まりません。チャリティコンサートや映画など、エンタメと社会課題解決をうまく結びつけないと。多くの人は、社会課題を解決したいというよりも、「有名人もやっているから」などの動機で動いている。世の中を動かすためには真面目に、すべてを理解しないと行動を起こしちゃいけない、という考えでは無理だと考えています。
それと活動をする上で意識しているのは、自分が楽しいか楽しくないかです。実は一度反省があって、このコンセプトで動き出したときに、いろんなNPOの広告とかマーケティングを支援すると、依存させてしまうことに気づきました。すると自分が疲弊するし、本当に自分がパフォーマンスすべき時間がとれなくなります。そこで「みんなを救う」のではなく、自分が楽しい、テンションが上がる、というテーマと人を揃えることが大事だと思ったんです。

辻原 そうでないと継続できないですもんね。社会課題解決はヘビーなことだからこそ、楽しむという視点が大切だとわかりました。まずはカジュアルな切り口を考えて、体験してもらうことを心がけたいですね。

Thank you, We love you!

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