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ビジョン経営のお手本!パタゴニアが提言する"環境のためのビジネス"とは

podcast「ILY, Designability cast」では、アウトドア衣料メーカー・パタゴニアを取り上げ、2回にわたって配信をしました。今回は、10月19日にお話した内容を記事にまとめました。

PRの服部が、デザイナーの三枝を招き、パタゴニアの環境への取り組み、ビジョン経営を中心に対談しています。

「環境のためにビジネスを営む」を経営ビジョンに

服部:三枝さんは「幼少期からパタゴニアには馴染みがあった」ということで、今回初めてpodcastに登場してもらいました。

三枝:子どもの頃によく登山をしていて、いつもパタゴニアのフリースを着ていた思い出があります。私にとっては、アウトドア・ブランドの代表格といえば、パタゴニアかジャックウルフスキンというぐらい、パタゴニアの存在は大きいですね。とはいえ、パタゴニアが環境保全に取り組んでいるとか、そういったことを知ったのは最近です。

服部:パタゴニアは、1973年に、登山家でありサーファーでもあったイヴォン・シュイナード氏が立ち上げた会社が原点です。最初は、クライミングのための道具を作っていましたが、それが岩を傷つける状況を見て、手を引いたそうです。その後、ウェア販売が始まり、パタゴニアが誕生しました。

パタゴニアは、1990年代初期に下記3つのミッションステートメントを掲げました。

 ①最高の製品を作ること。
 ②環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑えること。
 ③環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行すること。

ミッションに「環境」という言葉が入っていますね。これこそがビジョン経営だなと思います。

三枝:ウェアの原材料であるコットンを生産する際に枯葉剤を使うのですが、これが環境によくないことに気づいて、「環境を傷つけない製品づくりをしたい」というミッションを掲げるようなったそうです。

服部:2019年には、上記のミッションステートメントから進化させて、ビジョン自体を、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というシンプルなものに変えました。元のステートメントには、環境のために「どのように」ビジネスを営むべきかという「HOW」が入っていましたが、「なぜ」ビジネスを営むのかという、「WHY」に集約することで、ビジョンが研ぎ澄まされました。

三枝:パタゴニアは、売り上げの1%を環境保護のために寄付するポリシーを打ち出しています。ビジョンとの一貫性を感じますね。

ビジョンに即した多方面からの取り組み

服部:パタゴニアがウェアに参入した当時、登山ウェアは地味なものが一般的でした。でも、パタゴニアはカラフルな柄も多かったようですね。ある意味、派手なアウトドアウェアといえばパタゴニア、みたいな地位を確立しているのでしょうか。

三枝:そういえば、私が子どもの頃に着ていたフリースも、とてもカラフルで、ほかのブランドではあまり見かけない柄でした。実は、当時の私は「派手すぎて、いやだな」と思いながら着ていました(笑)。
でも、20年以上前に買ったパタゴニアのフリースを、今でも持っています。「20年、30年とずっと商品を使い続けて欲しい」というのが、パタゴニアのテーマでもあるそうです。私のフリースについては、使用回数がそれほど多くないので、長持ちしているのかもしれませんが。

服部:パタゴニアは「Worn Wear」という取り組みを行っていますよね。商品自体が丈夫ということ以外にも、「リペアしながら、長く使い続けてほしい。消費を減らして欲しい」という思いがベースにあるようです。リペア車が大学のキャンパスに来て、無料でリペアする取り組みもあるようです。もちろん、リペアできるかどうかは、商品によるとは思いますが、これも環境への提言ですね。 

三枝:なるほど、そんなサービスもあるのですね。

服部:また、パタゴニアは食品業界に参入していて、ビールを生産販売しているようです。

三枝:パタゴニアがビール!?それは知りませんでした。どうしてビールなのでしょうか。

服部:通常の小麦は、一年で枯れてしまう一年生ですが、パタゴニアは、何年も成長できる「カーンザ」という多年生の穀物を開発したそうです。「カーンザ」は、通常の小麦よりも少ない水で育ち、より多くの二酸化炭素を吸収して土壌に閉じ込めてくれるなど、環境保全の観点からも、理想的な穀物です。この穀物を原料とするビールを商品化し、「ロング・ルート・ウィット」「ロング・ルート・ペールエール」という名前で販売しています。

三枝:私もビールは大好きですが、周りにもキャンプとビールが好きな友人が多いので、勧めてみます。

消費者に問いかけ、考えてもらう

三枝:パタゴニアは、2011年に、アメリカで大規模な安売りが実施されるブラックフライデーに合わせて、「Don't Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」という広告を出して話題になりました。セール期には、どの企業も「安売り」の広告を打ち出す中、おもしろいですよね。先ほど、パタゴニアのビジョンは、「なぜ」ビジネスを営むのかという、「WHY」に集約されているという話がありましたが、この広告は、消費者にも「WHY」を考えてほしいということなのだと思います。
デザインの世界でも、見る人に「WHY」を投げかけるとことは、ありますよね。アート観賞では、「この作品は、どう作られて、何が言いたいのか」を考えさせられることがあります。消費者がパタゴニアの広告を見るときも、それと同じ感覚になるのではないでしょうか。

服部:「私たちが経営することで環境問題に貢献するのだ」という意思表示をしながら、消費者に問いかけている点で、一歩進んだ経営スタイルだといえますね。

三枝:今までは、「ブランドイメージ」といえば、企業が率先して行動して、消費者を引っ張るイメージでしたが、パタゴニアは、同時に、消費者に対して問いかけ、一緒に考えてもらうことで、企業のビジョンがブランドイメージとして認知されていくという形ですね。

服部:ブランディングとは、まさにこういうことですよね。 ビジョン経営の良いお手本になると思います。複数のブランドや商品がある中で、「環境保全のために」というビジョンへの共感こそが、「やはりパタゴニアで買おう」と、選ぶ理由になりますから。

三枝:通常、消費者は、「安い」「物が良い」といった理由で商品を選ぶわけで、環境のことはそれほど考えていないと思うのです。でも、パタゴニアのブランディングによって、「環境のため」という選択肢について、考えるきっかけになります。
環境に良いことをするだけなら、どこの企業でもできることかもしれませんが、それと同時に、消費者一人ひとりにも一緒に考えてもらう、そして動いてもらう。パタゴニアはその仕組みを作っているところが、すばらしいと思います。これからの企業に求められることかもしれませんね。



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Director / PR manager

服部麻優

WEBプロモーション会社でSEO・リスティング広告などの業務に携わった後、制作部門の立ち上げと部門 マネージャーを務める。 複数プロジェクトを同時に進行管理するだけでなく、品質管理のためのガイドライン・フォーマットを整 備し、チーム内への実施を徹底。各ステークホルダーとの情報の連携についてもツールでの一元管理の方 法を確立している。 経営PRなどディレクション領域を超えて業務に従事し、プロジェクトの範囲に留まらず、クライアントのビジネス全体への提案を実践。



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Service Designer & Strategic Planner

三枝ふみ

税理士事務所で経理&事務を経験した後、WEBデザイナーに転向。デザイナー兼コーダーとしてWEB制作会社に入社し、WEBデザイン制作、フロントコーディング、wordpress構築を約6年間経験。その後、ILY, incにjoinし、制作のできるディレクターとして活躍する。デザイン&コーディングの経験を活かし、進行管理だけでなくシステム開発のUIUX設計も担当。幼少期よりピアノとヴァイオリンを嗜む。



私たちILY,は、ロゴ制作やビジュアルデザインなどの”見た目のデザイン”にとどまらず、MVV策定や事業・サービスのコンセプト設計などの”コトのデザイン”もご提供しております。お気軽にご相談ください。


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