短編脚本『成長痛』(ペラ8枚)

 シナリオ・センターの課題『一年後』で書いた短編です。

〈あらすじ〉
 三雲空(18)は、幼馴染・芥川千秋(18)が書く小説が好きだった。
変わろうとしないように努めていた、空。
一年で変わってしまった、芥川。
私達はさ、一体どこにいくんだろうね。

〈登場人物〉
三雲空(18)(19)  ……高校生→大学生
芥川千秋(18)(19) ……空の幼馴染
大学の生徒

〇三雲家・空の部屋(夜)
   三雲空(18)、読書している。

〇芥川家・千秋の部屋(夜)
   芥川千秋(18)、パソコンで作業。
   パソコンの画面、書きかけの小説。

〇三雲家・空の部屋(夜)
   空、本を閉じる。
   側に置いてあるスマホを操作。
   芥川に『今、大丈夫?』とLINE。

〇芥川家・千秋の部屋(夜)
   芥川、パソコンを閉じて息を吐く。
   LINEの通知音。

〇三雲家・空の部屋(夜)
   空、窓を開け、空を眺めている。
   目の前の窓が開き、芥川が顔を出す。
空「あ、急にごめん。忙しくなかった?」
芥川「うん。今書き終わったところ」
空「今回の作品の出来は?」
芥川「すげえ良い」
空「相変わらず自信がすごい……。あ、これもち
 ろん良い意味ね」
芥川「分かってる。でも、僕が書く小説が面白い
 のは事実だよ」
空「……さすが芥川先生」
   と、小さく拍手。
芥川「何度も言うけど、先生呼びはやめて」
空「冗談だって。あ、これ」
   と、さっき読んでた本を渡す。
空「良かった」
   芥川、本を受け取る。
空「なんか、私と重なったっていうか、その、正
 直泣いた」
芥川「空はすぐ泣くね。昔から」
空「ずっと変わってない証拠だよ」
芥川「良いことだ」
   空、分厚い本を渡す。
空「これ、私のおすすめ」
   芥川、受け取る。
芥川「ありがとう。読むの時間かかりそう」
空「いつになってもいいから」
芥川「うん」

〇大学・外観
   T・一年後

〇同・教室・中
   十人くらいの生徒が出席。
   三雲空(19)、奥の席に座っている。
   机の下でスマホを操作している。
   小説投稿サイトの画面。
   芥川の書いた小説の一覧が載っているが、
   去年から更新されていない。

〇駅・改札前(夜)
   空、壁にもたれかかっている。
   改札前で別れる男女を眺めている。
   空の隣に人影。空の肩を叩く。
   空、驚いて肩を震わせ、相手を見る。
   芥川千秋(19)、立っている。茶髪にピア
   ス、ネックレス。おしゃれ。
空「誰、ですか……?」
芥川「俺だよ、俺。芥川」
空「は?」
芥川「空、何も変わってないな」
空「え、意味分かんないんだけど。何で髪染めて
 んの? 嘘でしょ……」
芥川「まあ色々あってさ。大学デビューみたい
 な?」
空「……小説は? 書いてるの?」
芥川「あー。やめた。そのうち作品消すし。あ、
 これ……」
   と、リュックから何かを取り出す。
空「私、千秋の小説好きだったのに。てか、芥川
 のくせに陽キャぶんな! 死ね!」
   と、その場を立ち去る。
   芥川の手には空が渡した本。

(終)

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