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#61【育爺日記Eps.7】父と娘とその夫。

父を在宅介護するに当たり、最も重要な課題は、夫の理解と協力だった。それは、結婚する時に、双方の親の理解と了承を得るのと同じ位、重要である。

しかし、「親の介護」を巡って、離婚してしまう事例も多く発生しているという。かつて、親に承認され祝福されて結婚した二人が、「親の介護」で揉めて離婚してしまうとは、なんとも皮肉な事だと私は思う。

しかし、自分の親の介護でさえ、苦痛に思うわけだから、「義父」や「義母」の介護など、それ以上の負担だろうというのは、痛感している。

他家へ嫁に行った私が、実家の父の介護を主導するのも、弟のお嫁さん達に、介護の負担と苦労は掛けたくない。「親の介護」で、弟夫婦達の間に波風を立てたくはなかったからだ。

それに、我が父は、色々と”クセが強い”。
父のクセの強さと対峙できるのは、姉弟の中でも、私だけだった。


私達夫婦は、長年「共働き&子育て」において、『共闘スタイル』を構築、維持してきた。「互いに互いの背中(弱点)を護りながら、それぞれの敵と闘う。」というアレだw

映画『アベンジャーズ』で言えば、「アイアンマン」が私、(ブラック・ウィドーでない所が味噌w)パパ(私の旦那)は「ホークアイ」かな、キャラ的にw (卓越した技術と強靱な精神力と生身の肉体で闘う的なw)

父は、「マイティ・ソー」だな。キャラ的にw

「神」という「威厳」や、高いプライド、人一倍大きな身体と強靱な力を持っている反面、実は、結構単純な思考回路で、マザコンで、メンタルは弱いw (いやぁ~我ながらピッタリだぁ~www)

個々でも、十二分に闘う力はあるのだが、困った時、強大な敵を前にしては、サッと集結し、団結して闘う。それぞれの持ち味を生かしながら ―――。

ま、そんな感じの夫婦関係があったので、「認知症の母の介護」という孤独な闘いで、精も根も尽き果てて、まさに、”このまま散ってしまうのではないか・・・。”という父の危機と、その危機に直面している私を見て、パパは何も言わず、ただ黙って、ヒラリと、そして、力強く、私達父娘の後方支援に廻ってくれた。

”連れ合い”である前に、人として『真のヒーロー』だと、私は我が夫に、深く感謝している。

本当に心から・・・

”この人”を生涯のパートナーに選んだ自分、凄いなと。(そこかーい!w)


しかしながら、そうは言っても、「父」と「娘」と「その夫」が同じ屋根の下で生活するというのは、それはそれで、「適正なパワーバランス」を構築しなければならない。

これは、例えるなら、ある日突然、職場に「パワハラ」+「モラハラ」+「老害」だけど、”元役員”みたいな、組織内では、圧倒的力を備えた”上司”が着任するようなものだ。(これって最悪・・・。)

私は中間管理職で、パパは私の下で長年一緒に部署を守ってきてくれた頼れるベテラン社員さん。だがしかし、こういった場合、新しく赴任してきたパワハラ上司は、とかく部署内での居場所と威厳を確保する為に、”弱い者”を見つけて、マウントを獲ろうとする。

パパみたいな、技術や経験があっても、出世欲がなく、温和で寡黙な人物は、パワハラ上司の標的にされやすい・・・。

「自分の保身の為に、パワハラ上司の”下僕”となるか?、部下と部署を守る為に、パワハラ上司と対決するか?」と、問われれば、

私は、迷わず、後者を取る!!w

(だから、私は、万年中間管理職! 上等だ!!w)

そして、それは、パワハラ上司が例え自分の実の父であってもだ!!


そういった私の想定に違わず、我が家に来た父は、事ある毎に、パパを威嚇し始めた。パパもパパで、そういう”圧”には慣れている人だから、父の威嚇を飄々と躱しながら、マイペースを崩さない。

”俺は、コイツの”父親だ!”という父のプライドと
”俺は、コイツの”夫”です!”というパパのプライドと・・・。

静かなる睨み合い(?!)が続いた。

そんなある日、娘なのに、パパの味方ばかりをする私に、業を煮やした父がブチ切れた。

「俺は、お前の”創造主”だからね。」

”ホラ来たっ! 「俺は神!」発言っ!!”

(だから弟達に嫌われんだよ!💢)

タイガー&ドラゴン、ガチンコバトルのゴングが鳴るっ!!☆


「確かに。この世に生を授けてくれたのは、お父さん。それは感謝している。だがしかし、私の人生に、”幸せ”を授けてくれたのは、”パパ”なんだよ。パパがいなければ、”私”という人間はいない。”貴方の娘”は、厳しい人生に失望して、とうに死んでいたかもしれない。そういうことなんだよ。」

「パパの理解と協力なしでは、お父さんの介護は出来ない。これは絶対だっ!!!」

「じゃー、俺は邪魔者だから、自分の家に帰るっ!!💢」


「あ~そうかよ。じゃー帰れっ!!💢 ”独り”でなっ!!💢そのかわり、私はもう、お父さんの介護はしないから。TやS(弟達)にしてもらうんだなっ!!」

「ふんっ!! 俺は、誰の世話にもならなくったって、独りで生きていけるっ!!💢」

「へー。じゃ、誰がメシ作るの?誰が買い物に行くの?自分じゃ何にも出来ないクセにさ。いつでも自分は”玉座”にいて、他の者を下に見て、自分の思う様に支配しようとするの、もう通用しねーぞ!! 💢」

「おま・・・父親に向かって、なんだ!!その言い草はっ!!💢」

「あっ?!💢やんのか?!ゴラっ!!💢 親父だからと言って、容赦はしねーぞ!!💢こちとら、”あんたの娘”だからなっ!!腹くくれっ!!💢」

「なんだと?! おま・・・おま・・・お前はなぁーっ!!💢」

「まぁまぁまぁ、お二人とも・・・。俺のことはいいから・・・。😅」

「よくなーいっ!!!💢」

「いや、お義父さん、心臓悪いんだから、興奮させたら、良くないよ? お義父さんだって、身体が弱っている上に、慣れない環境で大変なんだろうと思うよ。俺は。俺は臆病だけど、臆病だからこそ、お義父さんの気持ちはわかっているつもり。llsa子とお義父さんと、今、どっちが強いかって、圧倒的にllsa子だろ?そこは考えないと。お義父さん、可哀想だろ・・・。」

私も父も、ハッとした。

「Kくん・・・。あ、ありがとう・・・すまん・・・。」

普段は寡黙なパパが、「タイガー&ドラゴン」の双方から、見事にマウントを獲った。私の陰に隠れる事なく、依存する事なく、パパ自身の力で。堂々と。

パパは凄いなw 
さすがは、私が選んだ人だけの事はあるっ!!(またそこっ?!w)


それから1ヶ月が過ぎた頃、パパと二人で父の病院の付き添いをした。

待合室の長椅子で私が座って待っていると、検査室から出て来た父が、私の隣へ腰掛けた。その距離、約50cm。遠からず、近からずだ。

丁度その時、トイレに行っていたパパが戻って来て、これも私の隣へ座った。ピタッ!とw まるで恋人同士がベンチに座るようにだw

まさしく、この距離感が、「父」と「娘」と「その夫」の、絶妙なパワーバランスを示している・・・。

私は、ちょっとほくそ笑んだ。

”介護とは戦略だ・・・(小声w)”
「タイガー&ドラゴン」の戦いは続くけど、私にはパパがいるから大丈夫w


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