見出し画像

トイレは有料だよ。おじさま、ありがとう。〜イタリアひとり旅〜

初めての一人旅。

初めての海外。


不安でいっぱいの僕は、

ひとり飛行機に乗って、

スイスのチューリヒに向かっていた。


イタリアのローマが目的地である。


ヨーロッパは、とにかく遠い。


ヨーロッパのことを文化的にどれだけ知っていたとしても、

この物理的な距離を目の前にすると、

日本との「遠さ」に気付かされる。


どこかの本で読んだ一節だ。


最初に挨拶を交わした初老のおじさま

長いフライトの時間の暇を持て余して、

お互いのことを話すようになった。


若い頃、

ドイツ語が苦手で話せもしないのに、

ドイツに飛び込んだらしい。


そんなおじさま。

今では大学のドイツ語教師だと。


そして毎年のように、

オーストリアに行って

オーケストラの演奏を聴きに行くそう。


外国に飛び込むことで、

様々な苦労をして、

言葉を超えた何かで通じ合うということ、

そして

自分がどれだけ日本のことを知らないのかということ、

それらを学べるのだ、

と言っていた。


チューリッヒに着いて、

空港でおごってもらった紅茶。


周りは

外国人さん」だらけ。


いや、

ぼくが「外国人」なんだ

って気づいた時の

あの違和感。


黒いスーツを着た

アフリカ系のピアニストが奏でる

ピアノ演奏を聴きながら、

おじさまはたくさんのことを教えてくれた。


チップとして、

お店の人が手渡してくるお釣り

「いらない」といって渡すと、

きっとニコッと喜んでくれるよ。


トイレは、

日本と違って、

お金がかかるところがあるから要注意だよ。


お店では、

テーブル会計が当たり前だよ。


またどこかで

と言って別れたけど、

もう顔も覚えてない。


名前は聞いてない。


ただ、

ドイツ語の教師だった

っていうことだけが

今わかる。


おじさまが教えてくれたことが、

このイタリア旅行でぼくを助けてくれた。















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?