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踏み越えたあと

 2022年7月8日、元内閣総理大臣の安倍晋三氏が選挙応援演説中に自作の銃で撃たれ死亡した。銃撃した男はその場で逮捕されたが、男の父親は幼い頃に自殺し、母親は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に入信し自己破産した。カルトに傾倒した母親により自分の人生を壊され、世界平和統一家庭連合を成敗しなければならないという大義名分から犯行を起こした。
 当初は恐ろしいテロ行為として非難されたが、その後何故か妙な雰囲気になりはじめる。世界平和統一家庭連合というカルトはどうも自民党議員と接点があることが明らかになってきたのだ。
 このことにより犯人への反応はネットやSNSで少しずつ境遇への同情も含めダークヒーローのような様相を呈してきた。白と黒で切り割れなくなってきたのだ。

 さらに同年11月29日、今度は社会学者の宮台真司氏が大学キャンパス内で男に襲われた。本人に何を主張するでもなく、後ろから切り付け逃げているらしい。その場で大見えを切る気もないくせにこの犯人、自称大義名分のヘイトをぶつけることが英雄視されると勘違いしてないだろうか。大体、何かを踏み越えた奴を見るとその後亜種が大量に発生する。死刑も恐れずに自暴自棄的に好きなことをする「無敵の人」や、自称正義の代行者を公言して回る「自粛警察」など歪んだ個人主義の個人思想が漏れ出る世の中になってきた。

 亜種の出現はともかく、信徒が一定数存在するカルト教による政治への侵食は思ったより根深かかった訳なのだが、これらのニュースを見てクリストファー・ノーランによる「ダークナイト」でヒース・レジャー演じるジョーカーがバットマンに対して言ったふと言葉を思い出した。

You complete me.

joker ,The Dark knight,2008

「お前がいてはじめて俺は俺なんだ」
「お前が一線を踏み越えたから、俺が生まれた」と。

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