ストックイラストと商用イラストの差って何?
こんにちは、常盤クニオです。
今回頂いた質問箱への回答がなかなかの長文になってしまったので、noteの方にも同じテーマで内容をさらに厚くして投稿しました。
ちょっと長くなりますが、書籍などのカットイラストとストックイラストのビジネスモデル含めた比較について書いてみました。
頂いた質問はこちら!
ストックイラストと商用イラストの違いってなんだろう?
僕自身、今まさにめちゃくちゃ本気出してストックに取り組んでいるところです。なので正直あんまり偉そうなことは言えません。
僕のPIXTAのページです。登録数がまぁ酷いもんです。w
質問者さんが普段やられている仕事内容は「書籍などのイラスト」ということで、僕に近いところを感じますが、こういった商業イラストとストックイラストを比較するにあたり、収入ベースでの話を先にしてしまうと本質が見えにくくなってしまうかなと思います。
というのも、そもそもビジネスモデルが全く違うので、極端な話、「稼げることもあるし、そうでないこともある」ということ。
例えば、書籍に使用するイラストであれば、一般的にはWebサイトや持ち込みなどの営業活動を経て、クライアントのニーズに沿ったイラストを描き、買い取ってもらうなりして使ってもらう、という流れですよね。
その一方でストックイラストは、様々な素材サイトに予めストックしておいたイラスト素材の中から、使いたいテーマに沿ったカットイラストを購入して使用してもらう、という流れです。
そうは言っても正直どっちがいいのか?というのは悩みどころですね。
ストックイラストのメリットとデメリット
正直なところどちらも手間はかかりますが、「商業イラスト」と「ストックイラスト」を比較したときの「ストックイラスト」のメリットとデメリットとしては
<ストックのメリット>
・営業活動をしなくて良い
・きちんと登録さえしておけば商品として表に出る
・一度登録すれば複数回購入されることもある
・登録したイラストを見て、直接依頼が来ることもある
・イラストを登録すればするほどリーチが広がるので、裾野が広がっていく
サイトそのものがマーケットなので、自動的に営業してくれるというのは商業イラストとの大きな違いでしょう。登録した時点で商品になるというのは大きなメリットですね!
また、商業イラストであれば、基本的に一度使用されたイラストを他の会社の案件で利用する、ということはないと思いますが、ストックではそれが可能です。「汎用性の高いイラスト」が金の卵になる可能性も…!(そんなに簡単じゃないw)
登録されたイラストを見て、別途依頼が直接来ることもあります。つまり、登録したイラストが商品カタログやサンプルイラストになるということですね!
<ストックのデメリット>
・素材サイトと一蓮托生。サイトが閉鎖したらそれまで。
・どこで使われているか分からない。
・購入単価は低いので、ある程度購入されないとまとまった収入にならない(それこそ書籍の表紙イラストくらいの収入になるにはかなりの購入数が必要)
・収入を気にするのであれば、とにかくひたすら登録数を増やす必要がある
・登録作業の面倒臭さは異常(タグ付けをうまくすれば見てもらいやすくなるが、逆にそこをうまくやらないと埋もれる。)
※どれくらい売れればどれくらいの金額になるのかは上位ランカーさんたちがそれとなく発信されているので、ご自身で調べてみてくださいね。
継続の難しさ
最近ストック界隈が賑わっているのは、参入ハードルの低さゆえの流行りかなと思ってます。
実際に始めたらよく分かるんですが、これ継続するのってものすごく大変です。というのも、書籍イラストなど、実際に依頼されたクライアントさんがいる場合、どうやっても納期が明確に決まりますし、そこに向かって計画立ててやる、という感じじゃないですか。
ストックイラストは自分次第ですし、やらなくても売上が立たないだけなので誰にも迷惑かからないんですよね。そういう意味では「いつでも出来るし、いつでも辞められる」。だからこそ継続が難しく、かつまとまった収入を上げ続けるのは時間の確保の仕方と継続力かと思います。
コツコツと売れるパターンを見つけ出して、色々なタッチで描いたり、新しいタッチを開発したりする楽しさを感じられるようであれば、向いているのではないかなと思います。(他にも同一テーマで何十パターンも展開できる想像力など)
ちなみにストックイラストサイトの有名どころであるPIXTAさんはこういった記事も出してくれています。まずはこうしたお題を参考にしていくつか描いてみると描きやすいと思います。
イラストには画風の流行もありますので、以前登録したイラストでも当然ずっと同じ勢いで売れるわけでもありません。汎用的過ぎても、逆に誰でも描けてしまうので無個性とも言えます。常に新しいものを登録し続ける必要性もあります。流行を追うという意味ではどんなイラストにも必要なことですが…。笑
でも1つでも売れたときの喜びは、それはもう「えっ!こんなイラスト買って頂いて本当ありがとうございます!マジ感謝しかない」という感情でその辺にいる人と思わず肩を組みたくなるようなテンションになりますよね。
一方で、リアルで受注しようと思ったら営業するのもホント大変です。営業したからと言って希望の金額で受注できるわけでもありませんし、最初の契約時点でミスったりトラブルで支払ってもらえない、などのリスクが発生することもあります。(それはまた別のお話ですが)
でも実際に自分のイラストが使用された本や雑誌が店頭に並ぶと、目につくところにページを開いて「おいちょっとそこのお前ら見てくれよこのイラスト最高だろ?」と平積みしたくなってしまう、そんな高揚感があります!
収入で考えない方が良い理由
と、メリット・デメリット、それぞれあると思いますが、収入で考えない方が良い理由として、ストックイラストの特徴の一つでもありますが、「ストック登録数が増えるほど収入が伸びやすい」というのが挙げられます。
こちらのページをご覧ください。
僕もよくこのページを見るのですが、ランキングを見ているとやはり上位ランカーの方々の登録数は半端ないです。それだけ普段から努力されてらっしゃるんだなとしみじみ実感します…(´・ω・`)
例えば商業雑誌の小さなイラストカットを30個描いたとして、1点5,000円だったとしたら
30×5000 = 150000円
ですが、30個ストックを登録したからと言って、その金額が手元に入ってくるってことはありません。
試しに下記ページでPIXTAさんが出しているレートで計算してみましょう。
(間違ってたらほんとすいません)
スタート時のランク1で定額制・一般の場合、1つ売れると「0.25クレジット」が入ります。換金は10クレジットからで、1クレジットあたり108円扱いとのことです。
ということは、仮に30個登録したイラストが全部一回ずつ売れたとして
0.25×30 = 7.5クレジット
なんと換金すらできない…( ;∀;)
(あくまでも最低レートです。登録数や自分のランクで大きく変わってきます)
3/26 追記:トラノスケさんからストック販売の計算について助言をいただきました。
上記の僕の計算もトラノスケさんの計算も、「実際に自分のランクや販売回数で大きく上下するので、確実にこうなるわけではない」という意味で非現実的ですが(なのであくまでも、わかりやすく数字をキリの良いものにしている一例として捉えてくださいね)、年間、および複数サイトでの併売も視野に入れた場合、商業イラストとの差がどれくらいで埋まるかを計算していただきました。
ちなみに、上記計算での販売単価は最低での価格です。実際は継続・販売した分だけもっと単価が上がります。
なお、併売した場合の4サイトとは
とのことです。
イラストACは契約時の規約に実質的に「著作権譲渡」があるため、登録した時点で他サイトでの併売ができなくなります。
ただ当然、これがどんどん増えれば「ほとんど描かなくても収入が発生する」状態を作り出すこともできますし、それを先ほどの商業イラストの話と比較してしまうのもナンセンスかなと思います。
なので僕としてはイラストレーターとしてのキャリアを考える上でも、「やれるなら頑張って両方チャレンジ」すれば良いんじゃないかなと。
収入が書籍イラストより高くなる、なんていうのも人によりますし、いつどちらの仕事がなくなるか、なんてことも誰にもわかりません。
何より現時点で予想できるそれぞれの収入を天秤にかけるよりも、将来的により多くの価値を(収入のようなお金だけではなく、自分のイラスト技術としての資産価値も含む)産めるイラストレーターの方が長く活躍できそうじゃないですか!
書籍のイラストを仕事にしているイラストレーターさんであれば、クライアントのニーズを掴む勘所はすでに兼ね備えているはず。これも大切な技術のひとつだと思いますので、わざわざそこから乗り換えるなどして離れなくても良いんじゃないかなと思います。
ということで、めちゃくちゃ長く描いてしまいましたが、どっちもチャレンジして行く余裕があれば、やることでわかることもあると思いますし、まずはチャレンジ!!でいいんじゃないかと思います。
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